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2008-09-28

『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆


 では、OA(オフィス・オートメーション)が定着し、事務が効率化したことは、素晴らしいことだったのかというと、話はそう単純ではない。

 なぜって、OAによって事務が効率化したにもかかわらず、ジャパニーズビジネスマンの超過勤務がたった半時間でも減ったわけではないからだ。

 そうだとも、考えてみようではないか。

 たとえばの話、これまで社員一人分の人事管理ファイルを更新するのに4時間かかっていたものが、データベースの導入によって2時間に短縮されたとする。

 と、人事部長は、

「さあて、今日からわが部は3時退社ということにしよう」

 と言うだろうか。

 言わないね。絶対に言わない。

 部長はきっと、

「よーし、今期から人事管理ファイルの項目数を倍にしよう」

 と言うか、でなければベテランの部員を子会社に出向させることを検討しはじめることだろう。

 おわかりになるだろうか。「事務の効率化」とは、つまり「単位時間内に一人の社員がこなせる仕事量の増加」にほかならないのであり、要するに「ノルマの増加」つまりは「労働強化」なのである。

 さらに地の悪い言い方をすれば、「事務の効率化」および「生産の向上」とは、単に「単位時間内にこなす仕事量の増加」のみならず、「一定の報酬を得るために必要な仕事量の増加」でもあるわけだから、これは給与生活者にとっては、相対的な貧窮化でさえあり得るのだ。


 12になると、街にユーミンの歌が溢れかえる。これは、もう10年も前から進行しているこの国の病気のようなものだ。

 なかでも「恋人がサンタクロース」というあの不穏な主張を含んだ歌は、最も高い頻度で、まるでシュプレヒコールみたいに脅迫的な調子でスピーカーから連呼される。

「ふざけるな、女に尽くすだけが男の甲斐だってのか?」

 まだ20代だったころ、私はこの歌に出てくるサンタ野郎に大いに反発して、「恋人が編んだズロース」という替歌を作ったことがある。恋人のために毛糸のズロースを編む男の哀れな姿を描写した歌だ。

 いい歌だった。

 が、だれもほめてくれなかった。

 何人かが片頬で笑っただけだった。


 本当のことを言えば、私は、盗人は、いつでも三分の理を持っているものだとっている。しかも、その盗人の掲げる三分の理は、われわれ常識人がなんということもなく信奉しているいかにも微温的な「七分の理」よりも、ずっと切実な基盤を持っているともっている。

 しかし、それでもなお、盗人は盗人で、三分の理は全面否定されなければならない。

 なぜなら、それが「正義」だからだ。

 正義のにおいて何かが語られるとき、「七割方は正義っぽい」だとか「ちょっぴり不正義だわな」といった調子の議論は成立しない。正義は、いつでも、100パーセントの白黒決着を要求する。

 別の言い方をすれば、正義というのは、これは一種の独善なのです。

 だから、正義は、常に徹底して不寛容であり、いつでも一方的にして排他的な形で貫徹されることになっている。どう間違っても、不正義の側の唱える「三分の理」を容認したりはしない。

 とくに、「国際社会」みたいな仮定的枠組のなかで語られる正義は、水戸黄門の正義と何ら変わるところのない、一刀両断の、馬鹿みたいに単純な正義だ。しかも、悪いことに、ここでは、水戸黄門的正義(「正義は勝つ」)が、みごとにでんぐり返った形(「勝った者が正義だ」)で適用される。


 さて、政府およびマスコミ関係の人びとがしきりに繰り返した「国際貢献」というのもまた、妙な言葉だった。「国際貢献」と彼らが言うときの「国際」とは、具体的にどこの国のことだったのだろう。

 しい問題だ。

 が、少なくとも、「全世界のすべての国」ではないことだけは確かだ。

 考えてみようではないか。

 平時ならいざ知らず、国と国が戦争をしている状況において、一方に対する「貢献」は、他方に対する「攻撃」にほかならない。とすると、この場合「全世界のすべての国」に「貢献」することは事実上不可能なのであるから、当然、「国際貢献」という言葉も味を失う。

 では、もう一度、「国際」とは、いったい誰のことだろう。

 単に「友好国」ということだろうか。あるいは軍事的経済的に優位を占めている国々、もっと露骨に言えば「戦勝国」のことだろうか。

 その通り。

「戦勝国」こそが、つまり「国際」なのだ。誰だって勝ちそうな馬の馬券を買いたがる。

 それだけの話だ。

仏の顔もサンドバッグ

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