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2009-03-27

ピュタゴラスの定理


 ここで重要なことを一つだけ述べておこう。この定理は今後ともピュタゴラスにちなむものとして語られるだろうが、実はピュタゴラスより1000年も前に、中国人やバビロニア人はこれを利用していたのである。しかし、この定理がすべての直角三角形で成り立つことは知られていなかった。具体的などれかの直角三角形ではたしかに成り立つのだが、すべての直角三角形で成り立つことを示す手段がなかったのだ。この定理を発見したのはピュタゴラスだと言われるのは、この定理が普遍的に成り立つことを初めて示したのが彼だったからである。


【『フェルマーの最終定理 ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』サイモン・シン/青木薫訳(新潮社、2000年/新潮文庫、2006年)以下同】


 ピュタゴラスの証明には反駁(はんばく)の余地がない。彼の定理はこの世のすべての直角三角形において成り立つのである。この発見の重大にかんがみ、神々への謝のしるしとして100頭の牡牛が犠牲に供されたといわれている。この発見は数学における一つの里程標であり、文明史的に見ても最大級の快挙といえるだろう。それは二重の味で重要だった。第一に、これによって証明という概が生み出されたこと。証明された数学的結論は、論理を一歩一歩積み上げることで得られるという味において、ほかのいいかなる真理よりも真である。哲学者タレスはすでに素朴な幾何学的証明をいくつか作り出していたが、ピュタゴラスは証明という概をさらに推し進めることによって、はるかに独創的な命題を証明してみせたのだった。ピュタゴラスの定理がもつ第二の重要は、抽象的な数学の方法を具体的なものと結びつけたことにある。ピュタゴラスは、数学的真理が科学の世界にも応用できることを示し、科学に論理的な基礎を与えたのである。数学は、厳密な出発点を科学に与えてくれ、科学者はこの堅固な基礎の上に、厳密にはなりえない測定と、完璧ではありえない観察とを付け加えてゆくのである。

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

(※左が単行本、右が文庫本)

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