最新作「白の記述」(予告編)

白紙の街の歌

白紙の街の歌

随分と、時間が経ちましたがおかげさまで詩集『白紙の街の歌』(思潮社)を無事刊行することが出来ました。概ね好評いただいております。詩をふだん読まない方々に楽しんで読んでいただいている状況で、作者としては嬉しい限りです。

今日は、最新作「白の記述」の一部を公開いたします。これは、冊子などにまとめたいと考えていますが、少し先になるかもしれません。

「白の記述」(予告編)

ただ
白い夢を見ていた

白と白が手をつないで
世界を横切ってゆく

白いベンチで
声を失った歌手のカナリア
見えないものたちの歌に
耳をすましている

白い影が揺れる部屋
一本の骨がある

部屋と部屋の間にある
白い壁

白い図書館で
白い犬が
百科事典を枕にして
居眠りしている

ソーダーを飲みたいわ」
「そうかい」
「ねえ、私が死んじゃったらどうする」
「分からないよ」

女とは乳白色の奇蹟である

白い犬が
白い書物を抱いて
石庭を
まるで宇宙を旅するように
歩いている

10

紋白蝶が舞っている
それを白い花々が見ている