Thee Rang 跡地

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内部告発礼賛

 部告発という制度がある。企業や組織の関係者、構成員がその組織の不正や犯罪について行政や司法機関に通報し、広く知らしめる事で外部からの浄化能力を期待する、もしくは企業や組織に対してしかるべき処置をとらせる事を目的とするものだ。
 先日話題になった尖閣諸島沖の中国漁船と日本の海上保安庁の巡視船と衝突した事故は、衝撃的な内部告発によって幕引きとなった。この件は、海上保安庁の巡視船に対して中国側の漁船がどのような形で接触してきたのかが長らく謎とされてきた。中国側の一部では日本側の巡視船から体当たりをしたという様な報道もあり、一部の反日活動家の批判の的となっていたからだ。
 ところが、この衝突の様子をつぶさに収めたビデオがsengoku38と名乗る人物によって次々とYoutubeに投稿され、すぐにミラーサイトが複数作られて誰でも閲覧可能になってしまった。その中には、巡視船を挑発し、容赦なく体当たりをしかけてきた中国巡視船の様子がつぶさに記録されていて、漁船の危険な航行がこの事故を引き起こしたことが判明した。
 このsengoku38と名乗る海上保安官はすぐに自首し、「広く国民に告知されるべき情報が秘匿されていたので、自分が公開した」というような事を言っていた。政府見解はもちろん許されないというものだったが、大多数の国民にとっては、おおよそ国益に適う妥当な情報開示だったのではと捕らえているように思う。

 流れない水が腐るのと同じように、動かない組織も必ず腐っていく。正義信念を持たない人間が権力を持っていれば、より早く腐っていく。大学のサークルや体育会などは、その活動理念が技術の習得であったり試合に勝つことだったりするので明確に共有できるのだが、こと企業や政府組織ともなるとそうもいかない。利潤が絡むと人の目は曇る。みずほや富士通、SEIKO、朝日新聞NHKなど、最近だけでもTOPの人事絡みで一悶着あった企業は枚挙に暇がない。
 どんなに立派な社訓を説く会社でも、従業員一人一人がその社訓を心に刻んで仕事をしているかといえばそうではない。企業が掲げる高邁な理念、信念などもうまく継承されなければただの金追い集団となり、モラルハザードを引き起こす事例が世間を騒がせたこともある。だからこそ、孫正義スティーブ・ジョブズのような確固たる信念をもつ経営者はそれを貫くことの必要性を知っているし、それをあらゆる手段で内外にアピールする事に躍起になる。綺麗事だけで経営はできないが、綺麗事がないと経営が続かない。
 組織が腐ったとき、それを元も早く感じ取る事ができるのは内部の人間だ。その内部の人間がモラルハザードに耐えかねた時、もしくは組織活動によって耐えがたい被害が発生するときに、内部告発という手段を取る事が考えられる。社会的な観点からこれは推奨するべきものであるし、通常、機密情報の取材先や情報源は報道機関にとっては第一に保護する対象である
 ミートホープの件では世間はずさんで悪質な会社社長の経営に唖然としたが、あれなど氷山の一角だろうと誰もが予測がつく。きちんとやっている同業他社からは傍迷惑な話だろうが、食の問題は限りなく100%に近い数値で安心安全でないとダメなのだ。
 僕のような企業人は、内部告発はとても難しいという事を知っている。自分の生活の土台である会社を自ら壊す事につながりかねないので、自分だけでなく、同僚、先輩、上司、部下など会社で関わるたくさんの人達の生活を脅かす行為といえる。しかしそれでも、日本でも内部告発者を保護する法律である「公益通報者保護法」が存在する。腐った組織で腐った人に囲まれて仕事をしている人は、勇気をだして告発をして欲しいと思う。高いモラルと自浄作用が日本企業の価値でもあるし、日本経済の信頼性を支えている。海外の色々な企業をみていると、つくづくそう思う。
 GDPでどこに抜かれようが、電機産業でシェアを圧倒されようが、その綺麗事さえ保っていると日本企業はかならずまた日の目をみる事があると信じている。それを無くしてしまったら、そのときに日本は破綻への道を進むことになるような気がしている。まあ国民性なのでそう簡単に変わる部分ではないと思うのだけども。