【海難記】 Wrecked on the Sea

(2005/9/5からのアクセス数)
mobile用はこちら | twitterはこちら
text by 仲 俣 暁 生 Nakamata Akio (sora tobu kikai webpage)
▼[books]『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』『〈ことば〉の仕事』 | 『極西文学論 Westway to the World』『ポスト・ムラカミの日本文学』|▼[reviews]現代日本文学 書評INDEX 1997-2005[作家別][テーマ別] | 極西堂書店 Books Westway | [links]▼下北沢再開発を考えるページ | 路字 | マガジン航[kɔː]

2006-10-19 Thursday

solar2006-10-19

[]下北沢再開発地区計画に事業認可

18日に行われた世田谷区の都市計画審議会(東郷尚武氏が会長)で、区が示していた地区計画が賛成多数で了承された。区は2013年までの事業完成を目標としている。東京新聞の今日の朝刊が、一面、22面、社会面などで大きく報じている。*1

さきにhttp://d.hatena.ne.jp/solar/20061013/p1で報告した、区の課長による賛成意見への一方的な誘導工作も審議会で話題となったが、東郷会長が「公務員の中立性を疑われる行為」との苦言を呈したのみで*2、最終的な採決の結果には反映されなかった。29日までに寄せられた、都市計画法に定められた手続きにもとづく住民からの意見は、約千通。うち、この地区計画に反対がおよそ6割で、賛成は4割だった。*3

賛成意見の大半は区が作成した「ひな型」によるものだったと報じられており、そこまでの事前工作をしても、結果的に市民の声は「反対」が大幅に「賛成」を上回ったことは重要だろう。反対運動の予想外の高まりに対して、区があらかじめ、相当の危機感を抱いていたことを思わせる。

また、この日の審議会の採決に先立ち、東京都が「補助54号線」の事業認可を行っていたことを、別のルートで知った(新聞では報じられていない)*4。審議会の結果が出る前に、地区計画の大前提である「補助54号線」の認可を都がしていたとすれば、審議会の議論や市民からの反対の声がどうあれ、筋道はあらかじめ決まっていた、ということになる。下北沢再開発は世田谷区だけの問題ではなく、東京都、さらには中央政府のすすめる都市再生政策から降りてきていることは間違いない(首相官邸サイトの「都市再生本部」http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tosisaisei/などを参照)。

ここまでは要するに、シナリオがあらかじめできていた部分である。なにがなんでもシナリオ通りに進める、と頑なに決めている相手に対して、手続き論で相手をしていた段階が終わって、これから現実的にものごとが動き始める。そのときに何ができるかを、それぞれが考えなくてはならない。

ちなみに、世田谷区は区域全体の地区計画をPDFで公開している。下北沢周辺(図)の地区計画が、周辺とどのようにかかわっているかは、確認しておく必要があるだろう。補助54号線がどのくらい無茶な計画であるかは、既存路線である井之頭通りの路幅拡充でさえどのくらい大変だったか(まだ終わらない)を考えれば想像がつく。

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/toshiseibibu/01_tosikei/tosikeikakuzu/tosikeikakuzu12/main2.html

北沢地区の地区計画を示すPDFのダイレクトのURLは下記のとおり。いつサイトから消されるか油断も隙もならないので、各自ダウンロードされたし。

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/toshiseibibu/01_tosikei/tosikeikakuzu/tosikeikakuzu12/kakudai/1kitasawa.pdf

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/toshiseibibu/01_tosikei/tosikeikakuzu/tosikeikakuzu12/kakudai/2kitasawa.pdf

このうち1kitazawa.pdfのほうを見ると、下北沢駅周辺は真っ赤で、容積率500%とされている。また2kitazawa.pdfのほうでは、補助54号線が東西にどのように伸びてどこに接続しようとしているかが分かる。

今後の焦点は、事業認可後、実際にどのような工事がいつからどこで行われるのか(道路の予定地にあたる家屋や教会、商店などの立ち退きと取り壊し)、また地区計画と補助54号線の事業認可(「連続立体交差」の実現)によって緩和された建築基準によって、60メートルの高さまで可能になった高層ビルの建設が実際に行われるのか、その予定地はどこであり、その事業主体は誰か、という問題に移っていく。

大規模再開発の場合、そのプロセスはなるべく見せず、ガードやフェンスなどでとりかこまれたかたちで秘密裏にすすみ、ある日突然、新しい街ができました、という見せ方をする。でも、下北沢でその方法は不可能だろう。再開発のプロセスを逐一注目し、気づいたことがあれば、ネットなどで公開し、情報を共有していく作業が必要になると思う。とくに私が心配しているのが、キャンドルライト・デモンストレーションに協力してくれた、カトリック世田谷教会の今後である。

もう一つ。世田谷区では来春、区長選挙がある。再開発計画が大きく動き出したのは、現在の熊本区政に変わってからの目立った現象だそうで、区長が変わることで、再開発へのとりくみも変えられる可能性がある。事業認可されただけで、絶望するのはまだ早い。これからどのような「下北沢」をつくっていくのか、地域コミュニティ(商店や住民)と都市計画の関係はどうあるべきかなど、きちんとした理念を示せる対立候補が出てくることを期待する。

2004年の春にこの問題を知ってつくった「下北沢再開発を考えるページ」 http://www.big.or.jp/~solar/shimokitazawa.html も、今回の事業認可を受けて、少しかたちを変えてみようと思う。地区計画の進め方に対する「手続き」論ではなく、文化論の角度で、自分なりにこの問題をもう少し掘り下げて行けたらと思う。

*1:同紙のウェブサイトの記事はここ。http://www.tokyo-np.co.jp/00/tko/20061019/lcl_____tko_____000.shtml 朝日新聞のサイトでも詳しく報じられている。http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000610190001

*2:[「東郷 さきほどから色々ご議論があったなかで、基本的に、わたしは、世田谷はほかの都市にくらべれば先進的にやってきたという自負があります。しかし、今回の下北沢の案件については、率直に申し上げて、手続きの面で、区側の運営が適切なものであったかどうかについては疑問がある。意見書用紙を見たときに、これはしまったというのが率直な意見。これは公務員の公平とか公正という行政の中立から言って疑問を呈するところです」との発言があったことが下北沢フォーラムのサイトで報告されている。http://shimokitazawa-forum.net/

*3:下北沢フォーラムが情報開示請求で得たところでは、賛成意見129通のうち、印刷物への署名ではない意見書はわずか5通にすぎなかったという。

*4:最初の書き方では、このことも東京新聞が報じているように読めたので、文章を少し改めた。



go to sora tobu kikai webpage


2003年4月から2005年8月までの《陸這記》Crawling on the Ground のログはすべてPDFでアーカイヴしてあります。
このPDFは自由に再配布・印刷・製本など、どのように利用してもかまいません。
▼《陸這記》をPDFでダウンロードする 一括ダウンロード(5.5MB) | 2005年1月〜8月 | ・2004年6月〜12月 | 2004年1月〜5月 | 2003年4月〜12月

最近言及した本、CDなど