2009-01-03
池田信夫の金融政策は読んではいけない!その1
池田信夫氏は金融政策になると途端にもうろく爺さんになる。12月30日のかたはらいたいエントリーで相変わらず飛ばしていたので、突っ込みを入れておく。*1赤字が筆者追記部分。
彼を含めた一部のダメ金融論者への批判は私だけではなくいたるところでされている。(下記の関連エントリーを参照されたし。)
話を単純化すると、池田氏は不況の原因を供給側に原因を求めている。10年を超えるような長期的なトレンドでみれば、供給側の能力改善が経済を成長させるという考え方には誰も反対しない。しかし、直面する短期間での急速な経済不況の原因を供給側のみに求めるということは無理があることも誰にでもわかる話だ。*2池田氏はしきりに1930年代の不況と今回の不況の違いを強調しているが、違いがあるのは当たり前のことで、1930年代に限らず過去に起こった数々の不況の共通点は何かということの方が重要ではないか。おそらくその共通点は不況の原因が需要側にあるということだ。
だから不況対策として重要なことは需要不足を政府がどう補うかであることは古今東西変わらないことだろう。しかし、供給側しかみえていない(みようとしていない)池田氏にはそれが理解できない。まるで需要不足を補うための不況対策をすると、供給側の能力改善が遅れると言わんばかりだが、それは問題の混同である。池田氏が主張する供給側の能力改善は中長期の課題としては重要だ。それに反対するものはいないだろう。しかし、それは不況であろうがなかろうが取り組むべき課題であって、不況対策にはならない。*3それに、供給側の能力改善は基本的には民間の仕事であって、政府に出来ることは環境整備をすることだけであるし、政府がそれ以上のことが出来ると考えるのは社会主義的な発想だろう。*4
金融危機についての入門的まとめ 2008-12-30 池田信夫ブログ
3.
大量失業の原因は「需要不足」ではない:ケインズの「有効需要の不足が非自発的失業の原因だ」という説明は、今日ほぼ否定されている。アメリカの急激な経済収縮が1933年に終息したあとも、20%近い高い失業率が続いた最大の原因は、Kehoe-Prescottなどの世界規模の実証研究によれば、ワグナー法による労組の結成で製造業の実質賃金が上昇した(名目賃金が下がらなかった)ことだ。
→断定はできないだろう。当時の政府はレッセフェールで民間の経済活動に政府が介入すべきではないと考えて放置プレーを決め込んでたから不況が酷くなったのではないか。
6.
伝統的な金融政策はきかない:大恐慌と現在が似ているのは、30年代には商業銀行で取り付けが起こったのに対して、今回は影の銀行システムで取り付けが起こり、金融システムが崩壊したことだ。したがって欧米の最優先の問題は、金融システムの再建であり、利下げや流動性の供給などの金融政策はその補助でしかない。日本でもゼロ金利に近い状態になった段階で伝統的な金融政策は終わりで、それ以上の緩和は意図せざるバブルをもたらすリスクがある。
→「全ての経済はバブルに通じる」に読んだんじゃなかったっけ?金融政策のいかんに関わらずバブルは起きる。またしても問題を混同しているノビー。リフレ派が主張している非伝統的な金融政策はデフレを回避してマイルドインフレを目指すためのもの。
10.
非伝統的な金融政策の効果は疑問だ:自然利子率が負になった段階で、金融政策の効果はなくなる。FRBがリスク資産の購入などの非伝統的な金融政策に踏み込んだのは「背に腹は代えられない」ためで、成算があってのことではないだろう。このような政策は2000年代の初めに日銀が一通り実行したが、白川総裁の総括によれば、その金融政策としての効果は限定的で、主要な効果は銀行の不良債権処理を促進したことだった。
→「このような政策は2000年代の初めに日銀が一通り実行した」は嘘。
リスク資産の購入は行ってないし、インフレ目標へのコミットメントがないなど画龍点晴を欠いていた。「改革が足りないから日本はダメだ」という話を理解出来て、「金融政策が足りていないから日銀はダメだ」がなぜわからないのか。
11.
人為的インフレ政策はきかない:デフレの状態で中央銀行がインフレ目標を掲げて「インフレにするぞ」と宣言し、通貨を無限に供給すればデフレを脱却できるというクルーグマンの提案は、日銀が「時間軸政策」として実施したが、大した効果がなかった。クルーグマンも明示的に撤回し、バーナンキも実施しない。かつて人為的インフレを「世界標準だ」と称して日銀を罵倒した岩田規久男氏の一派は、過去の言説に責任をとれ。
→どう読めば撤回したことになるんだ?それは読み間違いだよ。night_in_tunisia氏の関連エントリーが非常にわかりやすいから読むのをすすめる。「クルーグマンの提案は、日銀が「時間軸政策」として実施した」も嘘。日銀はクルーグマンの提案ではない日銀独自の政策を実施しただけ。通貨の供給を無制限にしていたわけではないし、「時間軸政策」も物価上昇率を安定的にゼロ以上にするという弱い目標だった。日銀は効果がないから時間軸政策をやめたのではなく、物価上昇率が安定的にゼロ以上になったと早とちりして政策を転換したのだから、政策の効果がなかったことにはならない。
ついでに、4月19日の白川日銀総裁が著書に関するエントリーにも突っ込みを入れておこう。
最大の論点はデフレ対策、特に量的緩和の効果とインフレ目標の是非だろう。この点でも、著者の見解は日銀の主流だ:デフレといっても大恐慌のときのような10%を超えるものではなく、1%以内のマイルドなもので、「デフレ・スパイラル」も起きなかった。デフレは一部の経済学者が主張したような不況の原因ではなく、結果である。
→「1%だからよい」とか、「スパイラルになっていないからよい」というのは単なる日銀の受け売り。デフレは不況の結果だが、同時に紛れもなく不況の原因である。賃金の下方硬直性を是正する政策を提案しないで、このような無責任なことを言うべきではない。
量的緩和については「時間軸効果」を通じて一定の効果はあったとみているが、インフレ目標については「インフレ予想を高める効果を有したものではない」。中央銀行がインフレを起す手段をもたないのに、その「言葉」だけで人々がインフレを期待するという呪術のような議論にもとづいて中央銀行が行動するわけには行かない。
→前例がないからというのは官僚主義の悪いところ。戦後唯一主要先進国でデフレという未曾有の事態に遭遇した日銀が果敢な政策をとれなかったことが失敗の本質。
著者も指摘するように、中央銀行の目標は物価上昇率だけではなく、資産価格や金融システムの健全性など広範囲にわたるので、物価上昇率だけを基準にしてあらゆる資産を無限に買うといった無責任な行動は取れない。事実、それを提案したバーナンキ自身が、今に至るもインフレ目標を設定していない。
→確かにFRBも平成21年1月時点でインフレ目標は設定していないが、その必要性がまだないという判断だろう。今後はどうなるだろう。
ほんとにつっこみがいのあって大変だ。
*指摘を受けて表現などをちょこちょこ修正しました。09/1/6
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