棺姫のチャイカ1

棺姫のチャイカI (富士見ファンタジア文庫)

棺姫のチャイカI (富士見ファンタジア文庫)

榊先生の新作は原点回帰なファンタジーもの。あとがきで作者自ら触れられてましたが、出世作であるスクラップド・プリンセスの香りがしてとても懐かしいです。
乱波として育てられたけれども、魔王と呼ばれた国王が連合軍により打倒された為、世界が平和になり生きる目的を見いだせなくなった兄とそんな彼の尻を叩くちょっと愛情が過剰な義妹。そんな彼らが、棺とでっかい因縁を抱えた魔法士の少女チャイカと出会う事で物語は動き出すわけですが…。
序盤ちょっと読んだだけで、その少女の正体はすぐ分かりますが彼女の姿には、捨てプリでいうなればシャノンの元にゼフィリスがやってきたようなおかしみがあります。無表情なアカリと片言のチャイカ、面倒くさがりなトールと、コミュニケーションに問題のありそうな彼らですが、ドタバタなやり取りには明るさがあり、今後の関係の深まりが楽しみになるトリオでした。
また、主人公の無気力にも理由があり、それがチャイカと出会うことで劇的に生きる力を取り戻していく展開も中々燃えるものがあります。いつかチャイカが抱えるものも浮かび上がる展開になれば、さらに盛り上がるだろうなと思います。

最終的に世界を敵に回すような背景とかそろっての逃避行的な旅立ちとか、アレとだぶらせるなってのが無理な話なんですが、それぞれのキャラクタ、抱えてる事情は全く別物なので、別作品として楽しめます。ちょっと古めの所謂榊節が出ていてファンなら特に。金髪いないし。少々血腥い世界観ですので、今は明るめの展開ですが今後白か黒かどう振れるのかが楽しみです。
また、イコノに類した要素も出ていて、榊先生の作品の系譜を辿るような楽しみ方も出来るんではないかなとも思います。