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眠りながら歩きたい2  

2018-11-19

フローズン・ライター ★

監督 ジャスティン・トーマス・オステンセン/2011/カナダ/NETFLIX/

スランプの作家ジャックは、映画の脚本を仕上げるために、寒々しい田舎の冷凍庫に籠るはめになった。期限は5日、書きあがらなければクビという状況で、無理矢理にアイディアを絞り出し書き始めるのだが…。

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ジャックが書く脚本は、劇中劇として描かれて、精肉工場のセットも撮影も、何よりもマイケル・ベリーマンもホラー映画らしい雰囲気を纏っていい感じ。その肝心の脚本の内容がさして面白くないところが致命的で盛り上がらないが、逆説的というかメタ的というか、退屈な脚本というところからジャックのスランプぶりが浮かび上がるのは、映画の企みというよりも、偶々そう見える、というだけのことだろう。が、現実と虚構の境界が曖昧になっていき、内容を変更すると分岐して違う展開になるのをちゃんと見せるのは面白く、最終的に劇中劇の中で、次の展開を考え始める辺りは完全にコメディになっていて、色々とネタを繰り出す脚本はあれこれと手が込んでいる。が、ジャックがどの時点で「人の脚本を盗む」と決めたのかは判らないが、それが結論なら、ここまで描かれたことは何だったのか。観客は、一体何を見せられていたのか?この映画の脚本家の戯言に付き合わされただけか?という徒労感が凄まじい。

2018-11-14

最強ミステリ映画決定戦

洋泉社/2016年刊行/

映画秘宝関係者100人のアンケートを集計してベストテンを選出。1位が「サスペリアPART2」というのは、既存のアンケートでは決して1位にはならなそうで面白い。というのはいいのだが、果たしてミステリ映画かと言われると首を傾げたくなる。あの瞬間は確かに、映像マジックとしては最強にして最凶と言えるかもしれないが、その冗談のような狂気を評価するのなら、同監督の「トラウマ」なども、犯人が使った初歩的な(唖然とする)トリックも含め、ミステリ映画として評価してもらいたいところだ。いや、ミステリ映画というのなら同監督で言えば「シャドー」の方がずっとミステリ趣味は濃かった。が、誰も相手にしていないようだ。

そもそもミステリ映画とは」という定義があいまいで、いわゆる広義のミステリを対象としているために(「激突!」も「ブルー・ベルベット」も「ガス人間第1号」も好きな映画だが)、こんなことになる。選出者各人のミステリ観に別に文句はなく、いずれも面白く読んだが、ここで扱われている映画の大半は、ミステリ趣味のあるサスペンス(やホラー)映画ではなかろうか。しかしよくよく考えてみれば、厳密な意味でのミステリ映画というものは、それほど数は多くないのではないか…という気もする。

アンケート回答者が選んでいるもものうち、NETFLIXで見られる(わたしが未見の)ものを探してみると→「フローズン・ライター」「不吉な招待状」「黒い罠」「パーカー」「灼熱の魂」「砂の器」「紀子の食卓」「凶悪」「ナインス・ゲート」「最後まで行く」「私が、生きる肌」「ダ・ヴィンチ・コード」「シャッター・アイランド」「ネオン・デーモン」「シュタインズ・ゲート」「共犯」「タロットカード殺人事件」…といったところ。ないようであるようでない、という感じ。ちょっとづつ観て行こうと思います。

2018-11-12

キューブ■RED ★★★

監督 ルイス・ピエドロイータ ロドリゴ・ソペーニャ/2007/スペイン/NETFLIX/

謎の招待状を受けた4人の男女。数学上の難問を出すというパーティーへの招待であり、穀物倉庫の奥に改装された一室が用意されていた。4人の他に招待主のフェルマーと合わせて5人。いよいよ問題が出されようとしたとき、急用でフェルマーが退席。そして、携帯電話に問題が送られてくる…。

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数学上の難問という話だったが、出題される問題はどこかで見たこと聞いたことのあるクイズみたいなもので、数学に強い者を集めたパーティーが聞いて呆れる。しかし1分以内に正答しないと壁が徐々に迫ってきて最終的には圧し潰されるという大掛かりなギミックが用意されているのが愉しい。その間に、全く無関係だったと思われた4人には、実は繋がりがあったり隠している秘密があったりと、次第に真相が表面化していく過程がスリリング。前半でさりげなく語られたことが、緊迫化していく状況の中で意味を成したり繋がったりという工夫もされていたり、フェルマー(とされた人物)が外に出たあともフォローされ続ける辺りも意味ありげに撮られていて、無駄にサスペンスを呼ぶのも面白い。犯人の正体と犯行の動機が判明すると「なあんだ」となるのはこの手の映画の宿命のようなもの。

2018-11-08

バトル・ロワイアル 特別篇 ★★★★

監督 深作欣二/2001/ブルーレイ/

強く立派な大人を作るための一環として制定されたBR法。修学旅行で愉しく和気藹々な中、七原たちのクラスが今年の殺し合いに選ばれる。仲の良かったはずのクラスメートたちは、突然の理不尽な暴力の中で過酷な戦いに身を投じて行く。

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無謀な設定と物語を、有無を言わさず引っ張っていく深作欣二の圧倒的な技量に、久しぶりにみても感嘆。若い俳優たちは演技がさして出来るわけでもなく、特に声を荒げてわめく場面など、ただただうるさいだけで何を言っているのかよく判らない状態、もうちょっと落ち着いた場面でも、型にはまったような演技になっているが、作り手もそれは百も承知でのことだろう。それよりも、がむしゃらなエネルギーとひたむきさを重視し、瞬間的な起爆力を命の限界を生きるギリギリの若者たちにダブらせて、短くも儚い青春の一瞬をそこに刻み付ける。アクションシーンが見どころになる映画だが、銃で撃たれた少女たちが、くるくると体をひねり、舞うように絶命していくさまは、さながら死のバレエ、血のダンス。殺陣をつけるというよりも、振り付けと言った方が良いような、華麗なまでの死の舞が素晴らしい。死の際にまで、はじけるような生への渇望が見えるようだった。

2018-11-07

ザ・ウォーク ★★★★

監督 ロバート・ゼメキス/2015/アメリカ/NETFLIX/

フィリップ・プティは、WTCビルに魅せられる。あのビルにワイヤーを渡して歩けたら、世にも素晴らしいアートとなるだろう。彼は仲間を集め、あの手この手でビルに忍び込む。果たしてその挑戦は見事に実を結ぶのか。

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実在の人物の冒険に基づく映画なので、どうなるのかは判っているとはいえ、中空に浮かぶそのときまで飽きさせないのは、事実の面白さよりも、映画的脚色と寓意性、そして童話的な見せ方によるものが大きい。パリの街並み、恋人となるアニーとの出会い、サーカス団で勝手に学ぶ綱渡り、師匠の教え、ニューヨークに聳えるWTCビル…。ロケーションもあるのに、どの場面も加工されたかのよう。そこには、箱庭のような独自の世界が構築されていく。CGや3Dを駆使した結果の世界観とも言えるが、リアリズムに徹したドラマにすることも可能なはずで、だがそうはしていないのだ。フィリップが口にする「美しい」と思うものや事、いわば個人的で極めて抽象的なものを、如何に具体的に映画的に表現するかというゼメキスの決断であり、志向。彼の信じる美しさはそこにある。美しさ(=アート)に対する奉仕、その行為を支えてくれる者への感謝、形がないが存在しているものへの畏敬の念が描かれる、そのことの美しさ。フランス人の物語を何故アメリカ人が描くのか、今はもう無いWTCへの想いが、そこに重ねられていることも感動的である。ビル潜入のプロセスが犯罪映画のようなのは意外な面白さで、嬉しい驚き。