眠りながら歩きたい ver.3

映画、ドラマ、小説、漫画などの感想や、心に移りゆくよしなしごとについて書きます。

『ローン・サバイバー』をみる


監督はピーター・バーグ。2013年のアメリカ映画。

ピーター・バーグが『キングダム/見えざる敵』を撮った監督であることを思い出させる、実話ベースの戦争アクション映画

山岳地アクション映画も色々あるとは思うが、これほど執拗に、ゴツゴツとした岩場で展開するものは珍しいのではないか。しかも、主人公たちは、ただひたすら反撃しつつ逃げることを強いられるのみ。追い詰められて落下。転がるところをみると多少は傾斜があるが、上から覗くとほとんど垂直同然である。これに突っ込んでいかざるをえない恐怖感、加えて止まるまでひたすら転がるしかないのも、よくぞこれでこの程度ですむな、とあきれるやら感心するやら。映画の冒頭は、シールズ入隊のための訓練の、実際の映像が流れるが、これを踏まえたうえでは、なるほどこういうことのための、命がけの訓練なのだなあと、これまたひたすら圧倒される。落下、そして落下、という転落の構図は、更にヘリコプターの場面で最悪の惨状を招く。頂上から始まった死のゲームは、落下することで、死にかけながら、生に近づくという無残で皮肉な現実を切り取っていく。下まで降り切ったところに川があり、まさに生死の狭間のようにもみえ、ここを越えることで流れが変化する。この先の展開は、非常にドラマティックであり、戦争アクション映画の忘れられない一本『レッド・アフガン』を彷彿とさせるものがあった。あの映画の「ナナワテ」と同じものが『ローン・サバイバー』にもある。

痛みを伴ったスタント・アクションを徹底してみせる。アクション演出も飽和状態なんじゃないかな、と思うこともしばしばながら、みせるべきものはあるのだな、と痛烈に感じさせられる。映画の奥はまだまだ深い。