実際に分譲マンションに賃貸で住んでみて

引っ越し貧乏は理想の住まいを手に入れるための代償、と強がってみる」という2年前に書いた日記において、私は、ビル、テラスハウス、分譲マンション(購入)、アパート、庭付き一戸建てと、ほぼあらゆるタイプの不動産物件に住んだ経験を踏まえた結論、というか仮説として、分譲マンションに「賃貸」で住むのがベストではないかと書いた。

実は、その翌年(2011年)の4月、私たち家族は実際に、世田谷区の分譲マンションを賃貸で契約し、引越した。

その引越しのときも、上記の日記を書いたことなどすっかり忘れて、一軒家やアーケード内のビルなども含め相変わらず手広く物件探しをしてしまい、あやうくあの日記を書いた甲斐がなくなるところであったが、幸いにしてそれらの一軒家やらアーケード内のビルやらに決めてしまう前に、上記の分譲マンションが賃貸に出ているのをネットで見つけ、そういえば! となったのである。

ものすごく結果的にではあるが、有言実行で決めたその分譲マンションに賃貸で約1年半ほど住んでみた感想を、今回まとめてみることにした。

まずマンションの概要からいこう。

【立地】:世田谷区の比較的大きなターミナル駅から徒歩10分余りの住宅街に立地
【築年】:約25年
【規模】:約200戸
【専有面積】:約75平米
【間取り】:3LDK、
【LD】約12畳
【階数】:10階建の最上階(角部屋ではない)
【バルコニーの方角】:ほぼ真南
【セキュリティ】:オートロック、管理人常駐
【契約形態】:3年間の定期借家契約

次に内見のときの印象。

敷地外から見えるマンションの外観はいたって地味であったが、マンションのエントランスに入ると、ガラス越しに広い中庭が開けており、これが好印象だった。
もっとも、今はすっかり慣れ、しかもエントランスから入らずに駐車場への通用口からマンションに出入りすることが多いため、日々「良いなあ」と思うほどのことではない。

前に分譲マンションを購入して住んだことがあったので、またグレードもそのマンションの方が高かったので、今度のマンションを内見した際の感動はほとんどなく、私と夫は淡々と3LDKの各スペースを見てまわった。

ただ、「引越し貧乏〜」の記事でも書いたように、長く住む上で大切なのはプラス材料が多いことではなくて、マイナス材料が少ないことだと思っている。
そういう意味からすると、今度のマンションにはこれといったマイナス材料が見当たらなかった。

内見する前は、間取り図上キッチンが2畳となっていたため、ちょっと狭過ぎるかも知れないと思ったが、内見してみると2畳というのは床部分の正味面責で(こういう表記は珍しいように思う)、シンクや台、棚の部分を含めれば3.5畳以上はあるだろう。料理作業スペースとしての天板の広さは十分過ぎるほどで、収納が豊富にあるため、むしろ使いやすそうという印象だったし、実際使ってみると、ダイニングテーブルを置けるような広過ぎるキッチン(引っ越す前の一戸建てがそうだった)よりもむしろ使いやすいように思う。

私の夫は高所恐怖症で、10階と聞いただけで「やめようよ」と言っていたのだが、内見が終わるとすっかりどこかに飛んでいってしまったようで、「ここにしようか」と言ってきた。彼いわく、建物全体のかたちが(えんぴつのように)上下に細長くなければよいのだと。

さて、1年半住んでみた上での感想であるが、まず感じるのは夏涼しく冬暖かいということ。特に夏の涼しさに驚いた。
その要因はおそらく、日光を受けるリビングがほぼ真南向きであるということと、バルコニーの屋根というか庇?が結構出っ張っている点にあると思う。

例えばバルコニーが西に向いておりかつバルコニーの庇が短い場合、正午以降、より正面から、より長時間、日光をリビングの中に受けることになる。
前に購入した分譲マンションがまさにそうであった。リビングが西南西、つまりかなり西に向いており、かつ、最上階だからかバルコニーの庇が50cm程度しかなかったため、夏の午後は、かなり長時間にわたって暑さに悩まされた。
部屋の向きと庇の長さでこうも違うものかと驚かされた。
ただ、庇が長すぎると、夏はよいが、冬に日光が部屋の中まで入って来れなくなるので寒いのだろうと思う。とはいっても、冬の太陽の軌道はかなり低いことを考えると、バルコニーの庇がかなり長くても日光は部屋の中まで入ってくるので、極端でなければ庇の長さは長いほうがよいと思う。バルコニーに出ても広々として気持ちがよいし。
ただ、庇が長過ぎると、つまりバルコニーが外に出っ張りすぎていると、今度は部屋の中が暗くなると思う。

いずれにしても、内見のときは、夏であればできるだけお日様が低くなってから(午後の場合)、もしくは低いうち(午前の場合)に行き、そのときどれだけ部屋の中に日光が浴びせられているかを確かめてみるとよい。入ってすぐにクーラーを切ってもらうとなお良いと思う。冬であれば、正午近くのお日様が一番高い時間帯に内見し、それでも日光が部屋の中まで届いているかを確かめればよい。
部屋の明るさを知るには、その部屋のリビングの向きに応じて、一番暗くなりそうな時間帯に内見に行けばよい。

以上は、日光を遮る他の建物がないことが前提となる。日当たりも明るさも、物件の周りにどんな建物があるかによって、同じ向き、同じ庇の長さでも全然違うので。

例えば、真夏は、お日様が真上に近いところを通るので、南側に建物があっても日は当たりやすいが、冬は完全に日陰になってしまう可能性がある。知っている人には当然のことであるが、知らなかった人は注意して欲しい。

バルコニーの向きだとか庇の長さだとかは「分譲」マンションに限った話ではないのに、こんなに長々と書いてしまって心苦しいが、どうしても書きたかったのでお許し願いたい。

さて、分譲マンションだからこそのメリットは、なんといっても管理の良さだ。

築25年なのでピカピカというのとは違うが、エントランス、廊下、エレベータ、階段といった共用部分が非常によく手入れされていて、清潔感がすばらしいのである。それもそのはず多数のスタッフが毎日のように一所懸命掃除をしてくださる。
庭付き一戸建てに住んでいたときに、道路に落ちた桜の葉を毎朝掃除しなければならなかったことを思い出すと、日々感謝の気持ちを抱かずにはいられない。

新築どうしで比べたら、分譲だろうが賃貸専用だろうが、ぴかぴかである。
私達は、どうしても新築のぴかぴかさが好きになれず、逆に築20年超でも全然気にならない、どころか落ち着きすら覚える。そういう好みというか趣味もあって、築年がけっこういっている物件を選ぶことが多いのであるが、そうすると、管理の良し悪しというのが非常に重要になってくる。管理の良くない古い物件に魅力を感じる趣味はさすがにないので。
そして、管理のよさという点では、やはり分譲マンションの右に出るものはない。

壁や床の厚さ、材料、工法など、建物の構造面から考えても、分譲マンションが、賃貸専用マンションやアパート、大多数の建売の戸建に比べて、より頑丈に、より精密に、より快適・便利につくられていることは間違いがなく、それはお金のかけ方が違うから当たり前である。

もうひとつ、分譲マンションに住むと分かるのが、ゴキブリがほとんど出ないことだ。
前に分譲マンションに住んだときは3年住んで1匹も見なかったが、今回は1年半で1匹である。この1匹も外から連れてきたのではないかと思っている。今年はゼロだった。もちろん、いくら分譲マンションでも管理がよくなければ普通に出ると思うが。

いずれにしても、分譲マンションは、快適で安心であることは間違いがなく、快適で安心であるがゆえに、長く住むことができる、と一般にいえそうだ。


分譲マンションは快適で安心だということは確信できたが、「賃貸」で住むことについてはどうか。

私達が以前購入した分譲マンションを売却して引っ越したのは、管理組合(理事会)の活動がわずらわしかったからであった。それさえなければ引っ越したくはなかった。
ただ、マンションを購入した場合、自動的に管理組合に入ることになるし、理事も何年かに1回は回ってくる。したがって理事会のわずらわしさから永久に逃げ続けることはできない。

賃貸はそういう意味でのわずらわしさから解放されるので、気持ちがすごーく楽である。マンション住人との付き合いもがんばらなくてよい。懇親会のお誘いの紙が郵便受けに入っていても、躊躇することなく「不参加」に○できる。

理事会の活動だとか懇親会だとか、そういった活動を何の苦もなくこなすことができる人はほんとうにうらやましいと思う。
そして、そういう人にとっては、賃貸であることのメリットは、引越しが気楽にできること、住宅ローンの重荷から解放されることくらいしかなく、こういったメリットすら、もともとローンが終わるまではそこに住もうと考える人にとっては気にしなくてよいことかもしれない。

私たちも、次の引越しに備えて(呆)、分譲マンションを中心に物件を常時多数見ているが、昨今の低金利を目の当たりにすると、賃貸よりも所有(購入)の方に魅力を感じずにはいられない。月々の支払い金額をシミュレーションしてみると、管理費や修繕積立金を含めても購入した方がはるかに負担が少ない場合が多いのだ。

また、マンションを住宅ローンで買うと、必然的に保険(団体信用生命保険)に入らされることが多く、その場合は、ローンの契約者が死亡したときに、残ったローンをこの保険で完済できる。
これは、(普通の)生命保険代わり以上の効果があり、マンションを所有する大きなメリットの1つといえる。

このように、マンションを所有することは、特に史上最低の金利で住宅ローンを組める今のタイミングにおいて、非常に魅力がある。
どうにかして、マンションを購入しつつも、わずらわしさから逃れられないか。永遠のテーマだ。

次に、賃貸の契約形態について。
今賃貸で住んでいる分譲マンションは3年間の定期借家契約で借りている。
分譲マンションを賃貸で借りる場合、定期借家契約が多くなる。これはなぜかというと、貸す方としては、後に自分や親族が住む予定があり(だからこそ売らない)、そのためいつまでも借主に住み続けられるとそれはそれで困るからである。

いずれにしても、定期借家契約は、原則として更新ができないという建前である。が、実際は更新できる場合の方が多い。(正確には更新ではなく再契約という)
契約するときに更新できるかどうかが分かれば一番よいが、定期借家契約とうたっている以上、不動産屋さんも「更新できますよ」とは言えない。ただ、更新できる「可能性」があるかどうかについては、不動産屋さんに聞けば教えてくれるので、ぜひ聞いたほうがよい。前に借りていた人がいるか、いるとして何年住んだのかなども聞ければなおよい。

定期借家契約であることのメリットは、そうでない普通の賃貸借契約の場合に比べて賃料が安くなることである。借りる方としては、同じ条件であれば更新できる方を選ぶからだ。
中には、定期借家だからというだけの理由で、明らかに安すぎるだろうという家賃で借りられることがある。そうでなくても、はじめからX年後に引っ越さなければならないことが分かっているケースなどでは、割安で借りられる定期借家はねらい目である。

また、定期借家契約でかつ更新(再契約)が結果としてできた場合、更新(再契約)までの期間が、3年とか5年とか、普通の賃貸借(通常2年)よりも長いことが多いので、更新料が結果的に節約される。例えば3年の定期借家契約で1回再契約をして合計6年住んだ場合、再契約手数料は家賃1か月分となるが、普通賃貸借契約の場合、契約期間は普通2年なので、同じく6年住むと2回分の更新料=2か月分の家賃を取られる。この差は小さくないだろう。

以上、分譲マンションに賃貸で住んでみた感想である。
要約すると、快適で安心で、かつ気楽な生活が期待できるということだ。

賃貸を基本線とする限り、引越し貧乏からは抜けられそうにないが、趣味なのだから仕方がない。

次の引越しはおそらく、子供が小学校にあがる2014年になると思うが、そのとき果たしてどんな物件にどういうかたち(購入or賃貸)で引越しすることになるのか、、、引越し後にまた報告します。