鬼柳京介という決闘者

満足なんて言葉を忘れちまった鬼柳京介。その奇天烈な清々しいまでの格好よさに幾人かは彼等を想い浮かべたことだろう。「もうパーフェクトもハーモニーもない男」こと路上のカリスマ・矢車想。あるいは「勝利のためにリスペクトを捨てた男」サイバー流道場異次元支部師範代・ヘルカイザー亮。だが待って欲しい。かつての矢車さんは天道総司という類稀な二ートに出会わなければ嫉妬に狂わず真っ当なリーダーとして社会生活を送っていけたという事実を忘れてはならない。かつてのカイザー亮はスランプに陥るまでアカデミア始まって以来の優等生だったという事実を忘れてはならない。そうなのだ。我らが鬼柳京介は元々からして致命的にアレな人物だった。言葉をぼかさず正確にいうと原作版《青眼の白龍》並のレア度を誇る中二病患者だった。それがダークシグナー化というメッサ―ウィング並の加速で中二を加速させ、ハンドレスデッキを愛用する末期患者へと順当な進化を遂げ我々の腹筋を破壊し続けた。

このように、生まれた時点でもう底辺。そこからさらに阻止限界点を突き破り暗黒流れ星を見舞ったような人物が「放棄」という形で更なる中二化を遂げるとどうなるのか。答えを私達はもう知っている。鬼柳のそれはさしずめスーパーサイヤ人3のようなもの。一世を風靡した中二病患者セフィロスを彷彿とさせるファンタジックないでたちに西部劇銃、とどめはハーモニカによる自己BGMという、満足という道を捨てた割にはあらゆる意味で極めにかかっている鬼柳京介。最早中二ということすら憚られる決闘者。そうなのだ。我々は既に知っていたのだ。彼はとっくの昔に中二などという既に死んだ言葉で形容できる男ではない。中二を極めるということは最早中二ではないということなのだ。中二とは、その気になった方々が後を追える程度のものだからこそ中二。しかし誰が鬼柳京介の足跡を追えるだろうか。中二の中心で満足を叫び続ける鬼柳はさながら台風の目。無風。無中二。我々を夢中にさせてやまない男。

それが鬼柳京介という決闘者。