前監督のプランについて

しばらくサッカーの話題から離れていました(そもそも書いていません)が、今回の日本代表のワールドカップでの戦いには期待していたこともあり、数週間前、突如前監督解任のニュースが流れた時には、何の冗談?と耳を疑いました。が、なんと冗談ではありませんでした(苦笑)。


この電撃解任で、前監督の下、これまで入念に下準備されてきた全てが覆り、個人的には最も「……馬鹿じゃないの?」と思えるところに逆戻りしたのだなあと思うと、どうにもやるせない気持ちでいっぱいになります。


もしこれが、何と言いますか、目に見えるままのcoup d’Étatだったといたしますと、今の日本社会はかなりよろしくない状態と思ってしまいますが、いかがなものかしら。


まあ、社会全体が震災前のどうしようもない空気感の中に戻って久しくはありますが……。


それでも、これは一番あってはならない類の解任のように見え、もしこれがまかり通ってしまうのなら、日本のサッカーはスポーツではなくなってしまう気がします。


個人的には、そもそも純粋なスポーツとは言えない相撲の世界の、(周囲の価値観が変化したというだけで)実際には、存在するのだかしないのだかわからないような「腐敗」よりも、ずっと深刻だと思っています。


真実は神のみぞ知るわけですが、一介のファンであっても、ある程度推測ができるくらいの情報(判断材料)が今の世の中には出回っているわけですし、個人的ブログに個人的意見を書くことくらいは許されると思いますので、もう色々、個人的な解釈を書き綴ってしまうのです。


さて、男子のサッカー代表については、これまでも(2016年くらいまでは)何度か書いているのですが、今回は、


・前監督のW杯までの青写真について
・今coup d’Étatの背後と意図と経緯について


を、勝手に推測してみようと思います。あくまで個人的な想像ですが、同様に感じている人は少なくないのと察しています。
ので、興味のある方はごく気軽にご一読ください。


まず、前監督のW杯までの青写真についてですが、出場資格を獲得した後、かなり初期の段階で、W杯までの代表チームのプランについて明言していたと記憶しています。うろ覚えですが、


⑴ W杯本番では予選の時とは、戦術もチーム(メンバーも)も別ものになる予定。
⑵ 誰も代表の椅子は確約されておらず、選手間の競争を期待する。
⑶ 出場権獲得以降、5月頃までは、試行錯誤を繰り返すことになる。
⑷ 最終的なチームの形や、W杯に臨むメンバーの決定は5月末で、
本番で使う戦術のチームへの浸透(仕上げ)は、直前合宿の二週間で一気に行う。


あたりだったと思います。で、実際、一貫してそのように実行していたように見える前監督の解任までの試みを、独断と偏見で具体的に解説してみようと思います。


まず、⑵,⑶ですが、そもそも「誰々中心というチームではなく、代表チームが全員で戦うというスタンスでいく=使えそうな選手を本番ギリギリまで試す」と最初から明言していたはずですから、5月の最終メンバー発表までの代表活動の前監督の最大の目的は、選ぶ可能性のある選手たちの「身体能力」と「戦術理解能力」と「実践で実力を発揮できる能力」の有無を見極めることだったはずです。


どの選手に「言われたことをきちんと高水準で遂行できる(身体的・精神的・性質的)能力」があるのか、誰が「どのポジションに置かれても、その中で自分の枠割を理解し、勝利に貢献する形でそれを遂行できる」のかを、かなりフラットな状態で見極めようとしていたのだと思います。


つまらない縦ポンサッカーなどと揶揄されていましたけれど、この段階では戦術云々の前に、「想定された中で、勝利に直結する一番シンプルな形でプレーするよう」指示を出していただけのようにも感じます。


で、逆に言いますと、ある程度能力と質を見極め終わった選手は、呼ぶ必要性を感じていなかった、と。


さて、個人名を出しますと、やはり監督としても重要な一つの駒として考えていたのは、香川選手だったと思っています。マスメディア的な意味での「中心選手」ということではなくて、単純に、選手としての能力だけを見たときに、日本選手の中で、プレースピードも視野も切り替えの早さも突出していますので、自然そうなると思うわけですね。


が、同選手の能力は、日本代表の中では少々突出しすぎていて、周囲との落差の中で活躍することが難しいわけです。


ですので、同選手の攻撃スピードを活かすことができる「周囲」を発掘・育成できるかということも、一連の「トライアル」の具体的な目的の一つだったように思います。


故に、ここ暫く香川選手を代表に呼ばなかったのは、実力差があるとわかっている集団の中に呼んでも、今の段階ではさほど意味がない(=周囲との落差が彼のプレーを窮屈にさせていることはすでにわかっている。むしろ彼がいると、チームを脱却させたいと思っている「元の形」に戻ってしまいがち)からで、それよりも、他の選手たちのレベルをもう一段上げさせること=トライアルを優先したためだったと思っています。
国際経験のない選手に、頼れる選手がいない中で国際試合を経験させ、その中での各選手の出来を見極めたかった、ということですね。


最終的に香川選手との能力差が少ない集団を作ることができるかを試していた感じ、でしょうか。個人的には、前監督は、「香川選手という逸材と周囲の選手との落差をどうやって埋めるか」という、今の日本代表が抱える一番率直な問題と、ごく現実的に向き合っていた監督ではないかと察しています。


さらに具体的に解釈しますが、昨年、代表の試合に香川選手が最後に呼ばれた時、監督の戦術を批判するようなコメントをしたと騒がれていたのを覚えています。が、個人的にこれは戦術批判というよりも、「自分が監督の現在の指示通りに動くよりも、多少やり方を変え自分の仕事量を増やし周囲に合わせた方が、チームが上手く回るのではないか」という香川選手の肌感覚が、「それをしてしまっては他の選手の成長を見込めず、
全体の質を下げることに繋がる。あくまで言われたことをやってほしい」という監督の意見と食い違っただけなのではないかと察しています。


試合に出るからには、香川選手には(周囲に気を使うことなく)トップレベルでプレーしてもらいたい監督と、自分のレベルを落とし、負担を増やしても周囲に合わせた方がいいと感じる香川選手の違い、といったところでしょうか。


……まあ、監督の予想以上に国内選手と海外選手の能力や意識に差があったのだとは思いますけれど。


ちなみに、その試合(NZ戦だったはず)、武藤選手が出ていたと思うのですが、その時のプレーを見て、この選手はおそらくもう呼ばれないだろうなと感じたのを覚えています。実際、以降、所属チームでの活躍にも関わらず呼ばれていないので、当てずっぽうの推測という訳でもないように感じます。


個人的に、その試合で気になったのは、武藤選手の(当時の状況にはふさわしくないような)自己中心的なプレーを、本来ならば香川選手が押しのけて有無を言わさず我を通すべきところ、どこか遠慮してやりにくそうにプレーしていた感があったことでした。


監督としては、W杯仕様の新しいチーム作りを始める中で香川選手にもっと我を出し、チームを引っ張って、格下相手に大量得点で強さを見せつけてもらいたい試合だったのだろうと感じましたが、香川選手は、残念ながらそのあたりの線が細く(押しが弱く)、満を持してここで決めてほしいと送り出された試合で、周囲に気を使って思うような活躍ができずに終わってしまう、といった印象があるのですよね。


紛れもない逸材ではあるのですが、そういう不安も併せ持っていて、それを、NZ戦でもハイチ戦でも拭い去りきれなかったように思います。個人的にも見ていて、あの2試合はどこか残念に感じましたから……。


特に、NZ戦始めの頃に、武藤選手と重なるようになって外してしまったシュートがあったと思うのですが、あれは後の日本代表のチーム作りにとって大きな躓きになってしまったと、個人的には思っています。ものごとが上手くいく、いかないのきっかけなど、本当に些細なものであることが多いですから。


そういった意味でも、そこのあたりの監督の意図が汲み取れていないようだった武藤選手は、もう呼ばれないかなと思ったのですね。集団にとって大事な「核となる何か」の芽を、気づかずに潰してしまうような感覚の持ち主と判断されたと考えています。うまく言葉になりませんけれども……。そういう人物を内包してしまうと、集団というものは、中々うまく一つの目標に向かってまとまっていけないものですから。


話は少しそれましたが、もし、ネット上で散見する「監督と香川選手の間に試合後の言い争いがあった」というゴシップが本当なのだとすれば、監督にとっては、もっと力強くリーダーシップを発揮して欲しかった人が、いっそもっと自分が犠牲になってチームを上手く回らせた方が、とも聞こえるような、見当違いのことを言ってきた、という感じだったのかもしれません。まあ、お互いに、お互いとチームのために良かれと思ったが故の意見交換だったと察しますけれど……。


ですから、監督としては、呼ぶ必要がなかったと同時に、もっとハングリー精神を出して、むしろ俺が引っ張るくらいの精神力で実力を発揮して欲しいと発破をかける意味合いもあっての代表落選だったと解釈しています。


さらに、監督の観点から想像すると、香川選手が代表落ちした試合は、相手がブラジルやベルギーであろうが、テストマッチであることに変わりはなく、そこで「フルメンバー」で力試しをする気などおそらくサラサラなかったと察しますので、なおさらです。それを、香川選手が、今更俺を外すの? という受け止め方をしたとすれば残念な気もします。もちろん、選手としては力試しをしたい場だったとは思いますけれど、大きな目で見ればごく小さなことですし、所詮、本番ではないのですから。


何にせよ、香川外し・冷遇と騒がれていましたが、個人的には、彼は前監督の頭の中で当落線上にいたのかどうかも疑わしいところで、怪我の状態さえ戻ればですが、前監督のままであっても代表に選ばれていたと思います。


もちろん、「香川選手を使わず、かつ試合に勝ちきれる戦術を遂行できるメンバー」が揃えられるかどうかということも、トライアルの目的の一つとしてはあったと思います。で、揃えられると前監督が判断した場合、戦術上の理由で選考外ということはあったのかもしれませんが、単純に日本はそんな贅沢を言えるほど人材に恵まれているわけではありませんから、香川選手を外すという選択肢は現実的ではなかったと思います。


個人的に、監督が人材不足で最も頭を悩ませていたところは、色々な意味でのつなぎ役となる選手だったと察しています。個人的には、不動と言われ、前監督の信頼も厚かった(はずの)長谷部選手も、評価と現実があまり釣り合っていない選手と感じているものですから。


言い方は悪いですが、彼は「冷静で人望あるキャプテンで、かつ信頼の置けるチームの土台となる選手」というよりも、「自己中心的で面倒見も良いわけではないものの、小器用さがあり立ち回りがうまい選手」という印象が、8年間ずっとあります。キャプテンという立ち位置にさえいなければ、ごく普通の良い代表の一員だっただろうとは思うのですが、チームのまとめ役としても、試合の中でのプレーそのものも、無難なだけで、あまり「頼りになる」タイプではないと思うのですね。


前監督がそのあたりをどう認識していたのかには、個人的にとても興味があります。選手としての能力に妥協しても、チームの精神的な主柱となる存在と見ていたのか、単純に他に人がいなかったのか。もし、色々な面に目をつぶっても、うまくチームをまとめてくれる存在として同選手を頼りにしていたとするなら、そこの読み間違いは痛かっただろうな、とも感じます。


ちなみに、今の代表はつまらないと耳にしますが、その原因は、この人が不動のキャプテンであったからだと思っています。本質的に、打算的で保身に走る傾向があるように見えて、真の意味でのリーダーシップがあるようには見えないものですから。


余計なトラブルに自身が巻き込まれることは避け、他人事は他人事として割り切ることができるタイプといいますか。個人的には、彼を最初にキャプテンに抜擢した(はず)日本人監督にとても良く似ていると思っており、かつあの監督の人の本質を見る目をあまり信用していないのですよね……。
この辺り、賛同する人がいるのかわからないですけれど。


ともかく、前監督が最終的に長谷部選手を選んだかどうかは、個人的にはわかりません。代わりになるような大発見は、3月末の段階ではどうやらありませんでしたし、可もなく不可もない感じが、結局のところ彼を不動の存在にしていたかもしれません。ただ、前監督の「博打」の方向性によっては、もしかしたら最終的には外されていた可能性もあったのではないかと想像しています。


と、上記のように、指針が明確に示され、それに則って、前監督は作業を続けていたと思うわけですね。性格上、負けるのは嫌いと言っていますし、試合はすべて勝ちたいと思ってはいたはずですが、選手たちがそこで期待はずれの試合をしても、ごく冷徹に選手の見極め作業を行っていた印象があります。


かつ、「親善試合での勝利」という収穫はなかったものの、


・精神的にも肉体的にも戦える(当たり負けしない・物怖じしない・理解力がある)
・スピード(攻守の切り替えが早い)のある
・数少ないチャンスを決めきることができる


可能性のある選手たちが誰であるのか、かなり明確に見え始めていたと思うのですね。で、上記のような基準で選ばれた選手たちは、当然、二週間で本番仕様の戦う集団に「仕上げる」ことができる選手と前監督が見極めた人々なはずですから、⑷で、かなりハイピッチで、戦う集団に生まれ変われる可能性があり、⑴のように、
これまでとは全く違う日本代表チームとなって、本番はかなり面白い戦いを期待できた、と個人的には考えています。


もちろん、たらればの話ですので、本番も上手くいかず、全戦全敗の可能性もあったと思いますが、それは、「少しでも勝つ可能性にかけて」大幅に方針を変えた今も同じです。ただし、前監督のままの方が、今後のために得ただろうものは大きく、これまでのしがらみを断ち切った、まったく違う日本代表チームで新しいスタートを、今ロシア大会から切ることができたというメリットがあったはずですが。


と、監督サイドからすると、思ったように人材発掘こそできていないものの、ほぼ計画通りにW杯に向けてのプランが進んでいたと認識していたはずですから、ここで突然解任と言われて驚愕し、困惑しているだろうことは、察して余りあります。



さて、次にですね、このcoup d’Étatの背後と意図と経緯について、利害関係と其々の言葉、それに人の表情などから勝手に想像してみたいと思います。


まずは、背景ですね。前監督の意図に賛同せず、そのスタイルがあまり好きではなかったファンにでも、協会の説明した「選手と監督との信頼関係が薄れた」という説明が建前にすぎないことは一目瞭然ではないでしょうか。少なくとも「一部選手と監督の軋轢」と言われた方が、すっきりするかもしれません。


今回の解任の背後にあるものが利害関係だということは誰にでも容易に想像がつきます。一般に思いつくのはスポンサーとの軋轢でしょうか。これまでの看板選手、香川選手、本田選手、岡崎選手を、前監督が選考から外すかもしれないことがスポンサーの利益に直結するから、という判断だったということは実しやかに言われています。
もしかすると、そこに対する忖度が協会側からあったのかもしれませんが、個人的には少し異なる解釈をしています。


まずは、上記3選手の選手としての利害関係に絞って解釈してみますね。


前述のように、香川選手に関しては、個人的には当落線上にいたとすら思っていませんし、そもそも外れるとすると怪我ですので、どうしようもありません。また、代表に思い入れがあり、自らが選考から漏れるという危機感を持っていたとしても、怪我からの復帰という現在の状況で、監督の解任を望んでまで自分が代表に返り咲きたいと考えるタイプの選手のようにも見えません(もちろん真実はわかりませんけれど)。


元々一つの駒としての「自分のチーム内での活かし方」をある程度自在に変えることができる、能力的に余裕のある選手と思いますから、これまでに出ているコメントも、
監督の戦術の中での自分の役割のあり方についての意見が主であって、監督の戦術そのものに対する真っ向からの否定ではないように思います。


それに、彼が代表に選ばれなかったところで、困るのはスポンサーであって、彼自身ではありません。もちろん、選手である限り悔しさはあるはずですが、そこは選手がどうこうできることではありませんし、仕方がありません。


これまでも、何人もの能力のある選手たちが代表で涙を呑んでいるのですから。


しかも、彼は欧州一部リーグのチームで自らの立場を保っていますし、そこでの今後の活躍を期待されている選手でもあります。代表から外れたことが、今後の彼のサッカー選手としての未来にそれほどの影響を与えるとは考え難いです。むしろ、クラブチームでの活動に専念してほしいと思っている人々がいるくらいではないでしょうか。


次に岡崎選手ですが、前監督としては、見極めの済んだ選手の一人だったと個人的には考えています。立ち位置の質としては、比重が若干異なるものの、香川選手と似ていて、計算できる選手として、他の選考メンバーとのバランス、本人の直前の調子如何で、メンバー入りもメンバー外もあったという印象です。これを、当落線上と呼ぶべきがどうかはわかりませんが、そもそも本人が、呼ぶ呼ばれないは水ものと飄々と捉えている節があり、呼ばれれば代表で全力を尽くし、呼ばれなければクラブで全力を尽くすと割り切っている印象があります。


香川選手同様、欧州一部リーグのチームでの立場がある選手ですから、代表入り云々が彼の選手としての今後の日常に大きな影響を与えるとは考えにくいです。もちろん、現役選手である限り、誰でも代表を目指していて、可能性があって落選すれば、誰でも悔しいということは大前提ですけれど。本人としては、なんで俺がここで引き合いに出されるの? という感じではないかと想像すらしてしまいます。


さて、最後の本田選手ですが、このブログでは、一貫して、彼の特殊な才能は基本的に意思の力であって、選手としての能力はかなり限られていると述べてきています。
もちろん、現在もその観点は変わっていません。……ので、今回もがっかりしているわけです。


前監督の中での彼の評価は、一般に上記の二人と同列に捉えられているようですが、全く異なるものだったと、個人的には考えています。以前も、ここで何度か書いているのですが、前監督は、かなり早い段階で、彼の能力の質を見極め、かなり早い段階から、よほどのことがない限り、アジア予選限定要員と位置付けていたと察しています。


しかも、冷遇されるどころか、かなりの厚遇をうけ、前監督には、同選手はこれまでの功績に最大の敬意を払われる形で、代表最後の試合のお膳立てまでしてもらっていると考えています。


ゆえに、彼が、最終予選以降呼ばれていなかったのは、上記の2選手とは異なり、すでに戦力とみなされていなかったからと考えています。先の親善試合に呼ばれたのは、他の若手や新人選手同様、純粋にトライアルの対象だからであり、前監督がまだトライアルの必要性がある選手とみなしていたことを示していると思っています。


いや、所属チームで活躍して調子を上げてきているから、呼ばれたんだろ? という声が聞こえてきそうですが、彼がメキシコリーグでは活躍できる能力の持ち主ということはわかりきったことであって、問題は、その上のレベルを目指そうとした時に仕事ができる選手ではない、ということなのですね。ですから、個人的には、彼がメキシコリーグに行くという決断をした段階で、前監督の頭の中では、ほぼ確実に戦力外になっていたと考えています。


せめて他の元海外組のように、日本に戻ってきていれば、Jリーグで他の国内選手の底上げを図ることに貢献したり、周囲の選手とそのまま代表で使えるような信頼関係を樹立したり、などの功績が認められていたかもしれませんが、彼は、自分だけが活躍できる+選手個人として必要とされている成長は見込めないレベルのリーグを選んだのですから、戦力外とみなされて然るべきと思うわけです。


おそらくは、どうしても本田選手を呼びたい日本側のスタッフに押し切られる形で(何回目になるかわからない)最後のチャンスを与えられ、3月の代表入りに繋がったと察しています。そう解釈すると、前監督の「チャンスを掴んでほしい(=自分の査定を覆してほしい)」という発言との辻褄も合うのではないでしょうか。


ですが、その召集の結果として、彼の能力はこれまでと変わらず、かつ伸び代も見込めないことだけがわかったのですから、この時点で、彼の落選は、前監督の中では決定的になったと察していますし、それを周囲にも明言したかもしれません。


適正ポジションで使っていないという外野の意見のほか、本人にも「戦術がおかしい、こんなやり方じゃ自分だけでなく誰も実力など発揮できない」というような発言があったと記憶していますが、一体、他の誰が、「自分にあった戦術で自分にできることをやらせろ、そうすれば自分は実力を発揮できる」という論理で代表に来ているというのでしょうか? 


そもそも、監督の意図は、伸び代のある選手の発掘と、「使える」選手の見極めにあったと個人的には考えていますので、戦術云々ではなく、それが監督の求める基準に達しているかいないかだけが問われていたわけです。この決定権は監督にあって当然ですし、外野はもちろん、選手本人が文句をいうべきところではありません。


かつ、彼が気持ち良く活躍できていた戦術・レベルで、世界の強豪と戦えないことは、4年前に証明済で、以降の彼にそれを忘れさせるくらいの成長があったでしょうか? 


確か、大迫選手が、「チーム不振の原因を外に見るのではなく、自分自身に見るべきだ」といったコメントをしていた記憶がありますが、そこにすべてが集約されている気もします。


というわけで、スポンサー絡みと取りざたされる上記の3選手の中で、前監督の代表に入らないことが、3月の時点で確定していたのは、実は本田選手だけだったと考えています。


そして、代表に入るか入らないかで、サッカー選手としての今後が大きく左右されてしまう立場だった、唯一の選手でもあります。(個人的には、そこがまずおかしいと思うのですが)彼だけが、所属先が決まっていなかったはずです。


また、選手として以外のところで、代表入りという事実が、直接利害関係に関わってしまいそうな唯一の人物です。彼の経営する会社は、もしかすると、W杯を見込んで、2018年から事業の拡大などを図ってはいないでしょうか。彼は、自己ブランドの経営者であり、その最大の広告塔でもあるようです。しかもビジネスにはおそらく下準備が必要ですから、彼は有言実行と称してこれまでやってきたように、自分がロシアW杯で代表入りをすることを「前提」に、様々なビジネスプランを練ってはいなかったでしょうか。


そして、協会の推進する競技普及方針と、彼のサッカースクールの事業展開というものは、奇妙なほど合致してはいないでしょうか。仮に偶然だとしても、協会が彼の事業を利用しない手はなく、彼も協会の後押しが欲しいでしょうから、双方は利害関係が一致していると言えそうです。


ですから、彼がどんな形であれ代表入りすることは、確約されなければならず、前監督は、それをきっぱりと断ったのではないでしょうか。


なぜこの時期に解任するか、とタイミングの不可解さが取りざたされますが、逆に、この時期に何が起こったのかを考えてみると見えてくるものがあるのではないでしょうか。


もちろん、3月の試合の出来は良くありませんでしたが、直後の時点では、前監督続投を現監督が明言していたはずです。


むしろ、あのタイミングで起こったことというのは、「前監督が、3月のトライアルの結果を受けて、本田選手を召集しないと決めたこと」と、それを「協会が知った、もしくは本田選手自身が知った・感じ取ったこと」ではないでしょうか。


すでに解釈した通り、代表当落は、彼にとって死活問題なのだと思います。ですから、戦術不和信頼関係と色々な理由をくっつけて、監督解任につながるようなアクションを実際に起こしたのではないかと推測しています。おそらくは、会長に、メキシコリーグで活躍をしてみせる、そこで自分が宣言したような活躍が出来たら、俺を信用してくれ、俺が中心になってチームをまとめ、ワールドカップを盛り上げる、くらいのことを直談判でもしたのでしょうか。


もしくは、利害関係が一致するビジネス的な知人たちの後押しも受けたかもしれません。そういったことは、彼のこれまでの行動から容易に想像できます。


これに短慮から同調したのが、長友選手ではないかと推測しています。
彼は、おそらく香川選手も本田選手も不当に(監督の好き嫌いで)冷遇されていると信じきっていて、しかも、現在の代表の選手の中では、唯一、本田選手が必要な人材だと心から信じきっている選手のように見受けられます。あまり、頭脳明晰というタイプには見えませんので、本田選手の代表の不振や監督の「戦術」に対する持論を真に受け、浅慮から、香川選手を「救いたい」意図もあり、何らかの形で前監督の解任に一役買うことになったとしても、個人的には全く驚きません。


もう一人が、長谷部選手です。彼は、基本的には「何もしていない」のだと思います。協会からの「Aという答えを期待した問い合わせ」に対し、Aという答えをし、さらには、前監督解任の動きに対してずっと長い間、認識はしていた、今回の解任についても知っていたけれども何もしなかった、辺りなのではないかと想像しています。


そして、現監督ですね。表情というものはわかりやすいもので、彼は、ごくわかりやすく、どこか後ろめたい表情をしています。想像するに、結果云々に関わらず、W杯後の協会内での地位の確約などを餌に、本田選手を中枢に戻すことを条件に監督を引き受けるよう打診され、それを自らの欲に逆らうことなく引き受け、前監督の解任劇を黙認したのではないでしょうか。


会長も非常にわかりやすく、締まりのない表情をしています。ポリシーや計画性のない者の表情で、強いて言えば、おべっか使いによくある表情でしょうか。


そもそも、前監督に呼ばれていた選手たちの中で、前監督に不満を抱いていた選手の割合は、それほど高かったとは考えていません。前監督と一緒にW杯に行きたかったと思っている選手は、実は少なくなかったと考えています。「不満分子」は、ごく単純に本田選手と長友選手、それに監督の言っていることの意味がよく理解できていない、かつ上記2名に簡単に洗脳されがちな数名の国内選手あたりだけだったのではないかと察します。


また、チームがうまくいっていなかった理由ですが、それも集団内に、監督の「戦術」が上手くいかないことを証明するために、あえて監督に「言われたことのみ」を行い、真剣に自分の役割を全うするということを、やろうとしなかった「不満分子」的な選手たちを内包していたことにあると個人的には思っています。


だって、端から「こんなの上手くいくわけないだろう?」と考えている人々が集団内にいて、結果など伴う訳がありませんから。


ですから、本田選手が、自分が自分の力を証明できなかった事の理由を外(監督の能力)に求め、選手としてあるまじき行為で自らの代表入りを画策した、というのが今回の「解任劇」の根本の構造だったのではないかと想像しています。ただし、同選手はあくまで「自分は日本代表のために行動している」と心底信じきっていると思いますけれども。


もちろん本当のところはわかりませんし、真実は全く異なるのかもしれません。もっと多くの選手が解任劇に関わっていたとすると、そういう後ろめたさは表情に表れるはずですから、個人的には自国の代表の戦いをW杯で見る楽しみは無くなるなとも感じ残念です。


オールジャパンで一枚岩になどという後付けの理由で、今更チームがまとまるとも思えませんが、個人的に、今回の代表チームが本当の意味でまとまることができるとするならば、前監督の意図をきちんとくみ取っていた選手たちが、前監督の無念を慮って、前監督のために戦うというような結束の仕方をした場合しかないのではないかとも思います。


ただ、そういう選手たちが代表に選ばれ、集団の大多数になりうるのかはわかりませんけれども。ひとつだけ言えることは、本田選手中心のチームに逆行するのであれば、W杯で、望めるのは彼一人が目立つことのように思います。それが勝利につながるのかもしれませんし、そうではないかもしれません。いずれにしても、サッカー好きの身としては、こういう、サッカーとは直接関係のない訳のわからない理由で、たった一人の人間の利害の為に、この国の代表が左右されてしまうことに、強い憤りを覚えます。もちろん、単なる想像ではあるのですけれど……。


明日、でしたでしょうか。前監督がどんな会見をするのかも、とても興味があります。
協会やマスコミが大人として、礼節と常識ある態度をすることを願うばかりです。



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