人間性という不確かなものを認識 森博嗣『人形式モナリザ』

森博嗣ものは、何度も読み返したくなる作品が多いのだけど、これもその一つ。
トリックをもう一度なぞりたいから、というわけではない。
著者である森氏自身のものの考え方がかいま見えるようで、自分の知能指数が格段に上がったような錯覚を味わえるからだ。


この人形式モナリザでは、彼の「人形」の定義を推し量れる。
それは神との対話か、自身の拡張か。
単純に人の形をした玩具としてみるならば、この作品もトリックも成り立たないくらいに「考え」がこもっていることがおもしろい。


私は、人形というものは、結局は神の容れものとして存在している(と思っている)人間が、自身と同じ形をしながらも、自分よりの劣っているものを操りたかった、その具現ではないかと思った。


2010年現在、コンピュータには判断ができない、人間的な仕事が残っていると、勘違いしているように、過去の人間は、自分と同じ機能を持ちながら、それでも自分よりも劣っているものを欲したのだろう。


さて、人間性という機能は存在するのだろうか。
それは、我々人間だけに残っているのだろうか。


★★★★☆