NYLON100℃「神様とその他の変種」

原作・脚本


ケラリーノ・サンドロヴィッチ


演出
ケラリーノ・サンドロヴィッチ


出演
犬山イヌコ みのすけ 峯村リエ 大倉孝二
廣川三憲 長田奈麻 藤田秀世 植木夏十
水野美紀 山内圭哉 山崎 一

    1. +

神様にお願い もしもちゃんといるなら
世の中に平和を もうちょっとください

神様よいるなら
星も土地も命もあんたの血をひいた雑種と変種だ

流れゆくもの 滞るもの
海の中にはクラゲがポツリ
でも超えられぬ 神の気まぐれなこの世界のバカななにもかも

神様に呆れた動物たちの声が夜空にこだまする 流れ星落ちる

泣き叫ぶ者 高笑う者
君の目からは涙がポロリ
じゃあ僕達は神が片手落ちごまかす間に先回りしよう

過剰なるもの 不足なるもの
できそこないが神を出しぬく
ほら届かない神様の華奢な短い腕じゃ僕らの場所には

長すぎるもの 太すぎるもの
鼻をのばして象がつぶやく
「今さらだけど神よ気まぐれを 謝るなら許してやるぜ」と


ケラ&ザ・シンセサイザーズ/
「神様とその他の変種」【アルバム「15エレファンツ」収録】より一部抜粋

    1. +

友人誘って観てきました.休憩はさんで3時間ぐらい?率直にいって,イマイチな出来でしたね.後半はずいぶん長く感じました.

もちろん,退屈きわまりなかったというわけではありません.空間の使い方,映像の使い方はいつもどおり素敵でセンスがあり,特にオープニングはいつもどおりしびれさせていただきました.映像と音楽と照明,かっこよすぎ.出演者全員が歌ってるシーンだけでちょっと泣きそうになったぐらい.あと,ラストシーン,家の中で雨が降ってる絵はシュールできれいだったな.

しかし全体としては散漫で冗長な印象.前半でいろんな伏線をはってくれるのはいいんだけど,後半はその回収でいっぱいいっぱいなのと,最も大きな謎はわりと早い段階で説明されるので,後半,集中力を維持するのが大変.

ケラリーノ・サンドロヴィッチのセンチメンタルな泣きのシーン,個人的には嫌いじゃないんだけど,今回はちょっとくどい感じがしましたね.

それと,「神様」や「子供」や「動物」って,芝居で扱うのにすごく難しい素材だなと.子供や動物は「無垢」イメージ強いから,何しゃべらせても「いい話」っぽくなっちゃうし.

あと,神様の存在は必要だったんだろうか.冒頭でちょっと演劇を脱構築するような感じで斜めに始まるんだけど,作品全体としては別に脱構築されてないから中途半端な印象.さらに,神様登場から水野美紀との絡みがチグハグすぎて,むしろそこに「やっちゃったー」って感じを受けました.しかも神様,最初のセリフ噛んじゃったし.

しかも「イジメ」っていうテーマも入ってて,これまたどう語らせても陳腐になりがちなテーマ.「母親(大人)の気持ち悪さ」は十分に表現されてたけど,そのために「イジメを受けている子供」って要素は必要不可欠だったんだろうか?疑問が残ります.

それと,やっぱり死んだ人を舞台上に出しちゃうのは,一気に作品を退屈にさせる条件といえるんじゃないだろうか.もちろんその辺のお約束は知ったうえであえてやってるんでしょうけど.私はちょっと受け入れがたかったなぁ.

そんな感じで,今まで生で観たNYLON100℃の作品の中では,個人的に一番残念な作品でした.批判ばかりですみませんが,ハズレのない劇団としていつも楽しみにしているんです.前回観たシャープさんフラットさんブラックチームがすごくよかっただけに残念.ただ,役者陣はさすがにみんなうまくて,特に大倉孝二は素晴らしいと思います.
彼が出てくるとほっとする,というのは友人の談.ま,今回は役どころも彼の得意なキャラだったけどね.

いろいろ書きましたが,ブレ幅の小さい劇団・劇作家さんなので,まだこれからも観に行きます.なんでもマンセーなファンではないけれど,応援してるんです.

6月には,ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・蜷川幸雄演出の舞台が上演予定だとか.このタッグはかなり観てみたいかも.