ねこ的妄想劇場「KAKYO・マスト・ゴー・オン!」

こんなミュージカルを妄想してみました。

「KAKYO・マスト・ゴー・オン!」

時は20XX年、日本。大学進学を希望する受験生たちは、国が実施する一斉試験「KAKYO」を受験しなくてはならなかった。KAKYOの点数次第で、志望の大学に通えるかどうかが決まる。この国家的行事は,「お上」の定めた厳格なマニュアルに従って、全国各地の大学で実施される。
遂行上の最難関は、「英語リスニング」。各受験生には音声レコーダーが配られ、30分間の試験中、質問は筆談、くしゃみも衣擦れもご法度。機器トラブルが起きれば即座に再試験。監督者が対応を誤れば、受験生の学歴人生を左右しかねないうえ、マスコミに「大学側のミス」と叩かれること必至・・・
この国家的行事の「試験監督」として送り込まれるのは、普段「自由に」生きている大学教授等の研究者たち。当日初めて顔を合わせる、専門も職位もコミュニケーション能力もバラバラな研究者たちは、果たしてこのルールだらけ、リスクだらけの職務を無事に終えることができるのか・・・?!

【設定】
地方国立大学X大学の最大教室1203教室、20XX年1月某日KAKYO試験1日目(国語→英語筆記→英語リスニング)。1203教室を担当する試験監督は7名。専攻問わず集められるが、1日を通じて同メンバーが担当(2日目は別チームにシャッフル)。
朝の入試課による説明会からスタートしたKAKYOは、つつがなく進んでいた。しかし、リスニング試験の開始直前、頼れる主任監督者の教授がぎっくり腰に。原因は、毎年厚くなり今や電話帳級の『試験監督マニュアル』(「お上」作成)を始終持ち歩いていたためだった。急遽、控えていた別の教授が代役をつとめることに。リスニング試験直前のトラブルで、教員たちの緊張は高まるばかり。
いざ始まった緊迫のリスニング試験30分間。無事に済んでくれるかと思った開始15分後、まさかのトラブル発生。監督者の対応ミスも手伝って、受験者の一人からクレームまで出てしまう最悪の事態に!
KAKYOを舞台に、様々な背景を抱えた登場人物たちの思いが交錯しながら物語は進み、何とかトラブルを乗り切った夕暮れ。エンディングはそっけない別れ、しかし何か通じ合うものを得てそれぞれの場所へ帰っていくのだった...。


【主要ナンバー】
入試課職員「お上のルール」
「えらいせんせか知らないが、自由すぎるよ学者たち、締切すぎても出さない書類、サボリっぱなしの教授会!この日ばかりは守ってもらうぜ、お上のルール〜♪」衣装は、スラックス+ワイシャツ+ネクタイ+事務用袖カバー、手にはハンコ。内線電話のコール音をベースにポップ・チューンに乗せたアクロバティックなダンスを取り入れる。
若手〜中堅研究者による「Publish or perish」(監督者B C D)
「こんなシステム不合理だ、そもそも俺は学者だし、締切7本、出せなきゃ消えるぜ、Publish or perish!(後ろでコーラス→実験!業績!科研!論文!)」衣装は白衣が分かりやすい。ロックな感じで。
・責任感のある教員によるバラードナンバー「贅沢は言わないわ」(監督者A)
「贅沢は言わないわ、大事な仕事よ、しっかり果たしたい...だけど思ってしまうの...受験生だけじゃなく...監督者にも、ねぇささやかでいい応援の言葉が、欲しーいー♪」
受験生たちの群舞「オトナの事情は知らないけれど」
こっちは人生かかってるんだからしっかりやれよ的な歌詞。できれば制服で、机の上に乗るなどアナーキーな振り付けで、受験中の従順さ・規律正しさとのギャップを思い切り出して。ラップ調。

そのほか,女性監督者が男性中心の職場や社会を嘆く「学歴は得たけれど」、男子学生Aが女子高生Bへの想いを歌い上げる「絶望の国の幸福、それは君」、定年間近の主任監督者が教員人生を懐かしみながらもお荷物扱いされる悲哀を嘆く「あと3年」、など。


【キャスト】
○監督者(7人)
主任監督者(男性 59歳 教授 歴史学:定年退職まであと3年をつつがなく楽しく過ごしたい。古き良き時代の大学教授。昔は優秀だったが今は天然ボケの好々爺。予定されていた主任監督者のぎっくり腰により、リスニング試験のみ突如主任に。もちろん進行の予習はしていない。茶のツイードのスーツ、丸顔、メガネ、ちょび髭。額はずいぶん広くなったが、襟足の短い毛を結っているのがささやかな反骨心。口癖は、「アレ?まずかった?」。
タイムキーパー(女性 50歳 教授 財政学):簡素な身なりでリジッドな性格。男性中心の大学組織に不満とあきらめを募らせている一方で権威に弱く、「上には従順に、下には厳しく」がモットー。チャコールグレーのロングスカートとジャケットのツーピース、痩せ型、ショートヘア、丸メガネ。
監督者A(女性 42歳 准教授 生物学)ハキハキしたしっかり者の美人。天然ボケの主任監督者にかわり、1203教室の実質的なリーダー。白デニムパンツ、ぴったりした赤のハイネックニット、ターコイズのネックレス、メガネなし、セミロングorショートのパーマヘア。背筋をぴんと伸ばして常に口角をあげている。バラードナンバー「贅沢は言わないわ」のソロあり。
監督者B(男性 36歳 講師 政治学知的なルックスと穏やかな語り口で女生徒から大人気だが、本人は困惑気味。リスニング中の筆談で,受験生から「先生の携帯番号教えて」と書かれ動揺→「質問には答えません」で難を逃れるも、報告書に何と記載するか思い悩む。後に思わぬ事件に。細面の長身、メガネ、TOMORROWLANDとかで売ってそうなアースカラーのおしゃれカジュアル。
監督者C(男性 44歳 准教授 物理工学):KAKYOのような不合理かつ官僚的なシステムに反発しているが、現場では典型的な「われ関せず」。試験中に受験者が挙手しても対応できないので見て見ぬふり。真ん中わけの髪型、紺のスーツか紺のブレザー(アイビールック風でもOK)、メガネはあってもなくてもよい。無表情。
監督者D(男性 33歳 任期付き助教 無機化学:忙しすぎるうえに任期付きのため大学への忠誠心もあまりない。これ以上時間をとられることに怒りを感じている。短髪、ジーンズにとっくりセーター、紺かグレーのフリース(雪柄)、メガネなし。生気がない。
監督者E(女性 31歳 任期付き助教 心理学)着任したてで右も左も分からない。職場に慣れようとやる気をアピールしているが、だいたい空回り。作品のなかではナレーター的な役割も果たす。ベージュのフレアスカートテーラードジャケット

○入試課職員(3人)
入試課長(男性 46歳):お上の指示を守ることが至上命題。融通はきかないが抜けているところも。官僚的な説明が超絶わかりにくいことで有名。
入試課職員A(男性 35歳):仕事の早い器用者。愛想は良いが裏表がある。教員の悪口を陰で言いながらも、偉い先生にはお上手を欠かさない
入試課職員B(男性 28歳):口下手で生真面目。3年前に民間企業から転職してきた。昨年には娘が生まれ、日々を平和に過ごしたいと思っているが、上司や教員の尻ぬぐいで残業続き。入試シーズンにはいつも円形脱毛症を発症。

○受験生(4人)
女子高生A(18歳)神経質な優等生。「格差シャカイ」がどんなものなのかはよく分からないが、自分は東京の大学へ行って勝ち残りたいと思っている。リスニング試験終了後、受験環境に苦情を言う。
女子高生B(18歳):親や学校に言われしぶしぶKAKYOを受けにきたが、勉強は苦手だし女が学歴をつけても幸せになれないと思っている。母(45歳)がフルタイムで仕事を続けてきたものの、愚痴ばかりで嫌気がさしている。将来はエリートと結婚して専業主婦になりたい。KAKYOの試験監督を大学の先生(エリート)がやっていることを知っており、監督者Bにアプローチする。
男子学生A(18歳):女子高生Bに恋心を抱いているが、勉強はやる気が起きず上昇志向も皆無。日本の将来は暗いとか若者に気概がないとか「ゆとり」「さとり」とか言われるが、地元や実家を出たくないし、将来に期待もない。好きな人と一緒に地元で「平凡な暮らし」がしたいだけなのに、どうしてわかってくれないんだろうと不思議に思っている。
浪人生A(19歳):挙動不審または虚弱体質で騒音を発生。

○その他(特別出演)
当初予定されていた主任監督者(男性 62歳 教授 法学):若い頃に留学していたイギリス仕立てのスーツを着こなすロマンスグレー。学内の要職を歴任し、学会でも重要人物。人柄は堅実かつ温厚、多方面から信頼が厚い。定年を迎えるため、監督業務を担うのは今年が最後。張り切ったものの、ぎっくり腰の不幸に見舞われ主任監督者を交代。


以上。うーむ、やはり受験生の年代が何を考えているのかわからないから、頭でっかちな設定になってしまいましたが・・・;


単純な「常識知らずの大学教員批判」でもなく「官僚的なKAKYOシステムに巻き込まれる研究者たちの愚痴」でもなく、大学という職場の内部と外部(=世間)の関係であったり、そんな大人の事情はともかく学歴社会の入り口に立つ必死な受験生たちであったり、それに直面してエゴ丸出しでもいられない研究者たちであったり、そういう多様な立場の人々の思いが交錯する場としてKAKYOを描きたかったのでした。


「袖カバーつけて歌い踊る事務職員が観たい」というビジュアルから入ったこの妄想をこんなに膨らませてしまうとは、バカですね。こんなことしてたら週末も終了。決して暇なわけではないのですが・・・。でも、こんなアイデアどう?などのご意見もまだまだ募集中。


※この妄想劇場は、完全なフィクションです。現実のセンター試験とは何の関係もありません。
※監督者Bを除きモデルはおりません。