「奇跡の一本松」後継ぎ育つ写真

東日本大震災津波に耐えた岩手県陸前高田市の名勝・高田松原の「奇跡の一本松」が「枯死に至った」との報告書を12日に受け取った戸羽太市長は、13日に記者会見し「残念で忍びない」と語った。枝から4本の接ぎ木に成功していることを説明し、市民に「次のステップに入るのだと頭を切り替えてほしい」と呼びかける一方、樹木ではなくともモニュメントとして残す方法を検討する考えも示した。

陸前高田の松をめぐっての騒動】京の送り火

 戸羽市長は会見で「7万本の中で1本だけ残ったというのは本当に奇跡。海水につかりながら、9カ月間みんなの支えになってくれた」と、「希望の一本松」とも呼ばれた木への感謝を口にした。「枯死」と発表した財団法人「日本緑化センター」などからは樹脂注入などの保存方法を示されたといい、海沿いに整備予定の防災メモリアル公園への移設なども含め、市民や専門家と協議するという。

 ◇新井満さん「生き抜いてほしかった」

 11月に写真詩集「希望の木」を発表した作家の新井満氏は「生き残ってくれたこと、生き続けるという役割を果たしてくれたことに、感謝したい。何としても生き抜いてほしかった」と言葉を詰まらせた。保護活動をしてきた高田松原を守る会の鈴木善久会長(66)は「泣いても泣ききれない。潮干狩りやキャンプで慣れ親しんだ白砂青松の高田松原を、また復活させたい」と誓った。【市川明代、金寿英】

 ◇「ツギキ4兄弟」やなせたかしさん命名

 「奇跡の一本松」は枯死したが、その命を継ぐ「ツギキ4兄弟」は、独立行政法人森林総合研究所林木育種センター東北育種場(岩手県滝沢村)で順調に育っている。一本松から採取した枝から接ぎ木に成功した4本で、同法人側から依頼を受けた漫画家のやなせたかしさんが、長男「ノビル」、次男「タエル」、三男「イノチ」、四男「ツナグ」と命名した。