009 夢十夜(第七夜)

好きな一文
「自分は大変心細くなった。何時陸へ上がれる事か分らない。そうして何処へ行くのだか知れない。ただ黒い煙を吐いて波を切っていくことだけは確かである。(中略)自分は大変心細かった。こんな船にいるより一層身を投て死んでしまおうかと思った。」
理由
 行くあてのない船に乗って何処へ行くのか。言い知れぬ不安。でもそこから逃げ出すことはできない。思い切って飛び出したら・・・あるのは無限の恐怖と後悔のみ。
 漱石は何を思ってこの作品を書いたのでしょうか。百年前の「自分」の気持ちは、明確な羅針盤もなく今の社会に生きる閉塞感に通じるものがあるような気がします。

(ぽちゃこ/公務員 女 熊本県