013 硝子戸の中
好きな一文
私がHさんからヘクトーを貰った時の事を考えると、もう何時の間にか三、四年の昔になっている。
理由
この章に限らず、この短編集は各章の、第1文のことばが、はっきりしていて、テンポもよく、心にポンッと入ってきます。次をつい読み進めてしまいました。ヘクトーは夏目家にもらわれてきた犬の名前。この章が一番好きだったので。
(デザイン関係 女 東京都)
010 草枕
好きな一文
「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。 とかくに人の世は住みにくい。」
理由
色々いっぱいいっぱいになってくるとこの文章が頭をよぎります。なんて言い得ているんだろう、さすがうまいこと言うな〜、と。
( Ra/ 会社員 女 神奈川県)
008 行人
好きな一文
「そうして私をそこへ取残したまま、一人でどんどん山道を馳け下りて行きました。その時私も兄さんの口を迸しる"Einsamkeit, du meine Heimat Einsamkeit !(孤独なるものよ、汝はわが住居なり!)"という独逸語を聞きました。」
理由
このシーンを想像すると、とても滑稽です。「俺は孤独だー!」と叫びながら、すごい勢いで駆け降りていく一郎(兄さん)。
人生の本質に気付き苦悩する一郎ですが、僕が彼に会うチャンスがあればコブクロ(歌手)のこの歌詞を教えるでしょう。"愛されることを望むばかりで 信じることを忘れないで"と。彼はわかってくれるでしょうか。
(JUN OSON/イラストレーター 男 東京都)
007 夢十夜(第八夜)
好きな一文
「豆腐屋がラッパを吹いて通った。ラッパを口へ宛がっているんで、頬ぺたが蜂にさされた様に膨れていた。膨れたまんまで通り越したものだから、気掛りで堪らない。生涯蜂にさされている様に思う。」
理由
『夢』ならではの妙な不安感がたまらなくワクワクします
(アイ/映像制作 女 東京都)