0444 転職のスキル、準備編41 自分を知ることのメリット

最近ではあまり聞かなくなりましたが、偶に「自分探しの旅」なんてものがあります。
旅に出ても、未知なる気分転換を体験する程度でしょう。キャリアを磨きに目的を持って海外にでるなら、期待する成果を手に入れることができるかも知れません。しかし、普通に旅に出ても、帰ってきて再就職の準備をするのがオチです。

多くの人は、あなたと同様に自分自身のことをよく知りません。また、よく知ろうともしません。なぜでしょう?答えは単純です。「面倒臭い」から。そして、たいした不自由を感じないから、知ったところでどうする?こんなところでしょう。

自分の能力や性格を、自分自身で知ることは骨の折れる作業です。まだ能力は学習や経験から自己認識がし易いものですが、性格という価値観や感情の集合体は、ちょっとした環境の変化、時間経過によって刻一刻と変容してゆきます。このことを、そのつど言語化して認識し、追いかけて整理しゆくことは、考えただけで気が重たくなります。
では、自分を知ることによって起こるメリットは何でしょう?

普段の私たちの生活は好きな物に囲まれています。好きな食物を食べ、好きな音楽を聞き、スポーツを楽しみ、趣味を楽しみ、笑える番組を観て、靴やバッグ等のファションも、好きな形、好きな色、好きな道具、お喋りをする相手も、飲みにゆく相手も、遊びにゆく相手も、一緒に暮らす相手も、全ては自分の好みで選択し、気分次第の行動をしています。こんなにたくさんの「好き」に囲まれていても、不機嫌になったり、孤独を感じたり、飽きてきたり、何かを不安に感じたり、移りゆく心の動きは複雑です。

しかし、このままの環境で放っておいても能力や心の成長は見込めません。それどころか、同じ生活パターン、同じ人しか会わない、等を繰り返していると、価値観や心の反応が固定化され、様々な対応が困難、あるいは対処しなければならない問題を受けつけることができなくなります。

私たちの脳は、特別に意識しなくとも、必要に応じて自己の能力を評価したり、何かに気づいたり、混乱するようなことがあると気持ちを整理、分析したり、またストレスを感じて気分転換等を行います。このような機能をコントロールし、その機能は自由になることを知り、できるだけ活用しておかないと、その感情調整機能は停滞、欠落し、不具合のまま連続もしくは継続性を持つと、「心の病」へと進行する可能性を否定できません。

よく報道番組で赤ちゃん育児や子どもの養育放棄(ネグレクト)が事件となって問題化します。セルフネグレクトは、自分自身の生活活動を放棄する病気と言えます。食事も取らなくなるので、心身ともに危険な状態となり、悪いと餓死してしまいます。また、自己感情の認識が極めて鈍感であったり、感情説明ができないなど(アレキシサイミア=失感情症)も、心の病気です。うつ病も、人間関係が起因とされるものが多く、自分の心の状態を感知して、思考することはとても大切なことです。

前述した「心の病」にはならないにしても、私たちは、自分の中に「能力と心」という人格を持っていると認識しなくてはなりません。自分の心の育成を放置して、成長することに無関心であると、感情のコントロールできないまま、物事の対応が次第に困難になります。何よりも、自己の感情を認識し考えることは、自分自身に興味を持つことです。好きな人ができた時、その相手のことが気になります。表情に行動、何が好きで、どういう事に興味があるのか等など。それと同様に自分の感情や能力についても興味を持って、接することが健全な状態ではないでしょうか。

日常生活の半分以上は「仕事」に費やされることが多いでしょう。言わば人生の大半の時間は仕事に割くことになります。プライベートで自由に嗜好優先の判断で行動をしても、仕事ばかりは勝手気ままな判断や、自由な行動は許されません。イヤな業務内容であっても、イヤな上司であっても、イヤなお客様であっても、うまく対応しなければなりません。

職場で認められるには、要求されている能力を察知し、その能力を発揮して期待に沿う成果を上げ、それを日々くり返してゆきます。上司や部下、周囲の者たちとの良好な人間関係を築くことも同じことで、要求に応える多くは感情のコントロールが伴います。
人格を構成する殆どが「様々な能力」と「心の在り方」であるなら、感情コントロールをする能力と、その適した感情を相手や周囲の人に伝える、表現する能力はそれ以上に重要な能力であると言えます。


この章の趣旨は、自分の能力を知ること、自分の感情の動きを知ること、そしてその二つを組合せた自分という「人格」を知ることです。その後、この「人格」は履歴書や職務経歴書に表現することが目的の1つです。逆に言えば、職務経歴書に表現するための手引書です。このテキストを参考に能力、感情の育成トレーニングに目覚めれば、それは狙い以上の効果があったことで、幸福です。
人格は確かに自分で形成しゆくもので、自分自身だけが有するものです。しかし、自分の人格がどこにあるのか?と、問うと「相手の頭の中」にしか存在しません。なので、自分の能力を知り、また移りゆく感情のプロセスを知り、それをどうのように表現し相手や周囲の者に伝えるのか、という技術が問題となり重要な能力と判断せざるを得ない根拠なのです。


<自分を知ることのメリット>

・自分の能力を知ろうとする、自分の感情を確かめる、ということは自分自身に興味を持つことなので、全ての基本でとても大切なことです。

・不足している能力、充分に備わっている能力、自分にはないが興味や魅力を感じる能力、改善の必要を感じる能力、様々な能力を知ることで、種類や分類の幅が広がり、課題の発見、自己改革へと繋がり、前向きな気持ちが芽生えます。

・心が前向きになると、いろんなことに感心を持ち、何かにチャレンジしたくなったり、目標、目的をもって行動する可能性が高くなります。

・自分が簡単にできること、困難に感じること、余裕があること、助けを必要とすること、様々な自分の状態をよく知ることで、相手や周囲の人に関わる視点が「好き」「嫌い」以外の、より細かい部分に気付き、他者への理解が深まり、これまでの応対に少しずつ変化が生じます。

・自分の感情のプロセス、パターンを知ると、出来事や対処時の自己感情を予見することができ、トラブルやストレスの回避につながります。

・人間関係の幅を広げる、より良好な関係を築く、苦手な相手にも適切な対応ができる、これらは全て「自己の能力、感情」を知ることが基礎となります。

・能力の育成、心の成長を高めることを拓き、充実した生活、明るい将来へと導きます。

さて、これまでの(1)〜(92)は、様々な能力、あるいは自己感情を知るためのヒント、そして自分の性格を知るためのキーワードを提供しています。
最近の再就職の就活では、そのほとんどが面接へ行く前に書類選考があります。履歴書は学歴、や前職等の箇条ですが、職務経歴書、その後の面接では「自己アピール」が採用への鍵となります。そのアピールを上手に構成し、相手に伝わるように工夫をする第一歩は、やはり自分の性格や能力をよく知ることです。

この章が提供する、様々な能力、キーワードは重複している単語もありますが、趣旨や内容のレベルによっては番号を振り分けています。完全網羅とは到底いきませんが、参考に値する種類と内容は提供できていると自負しています。これらを参考に「自己」を再確認して、これからの活動に生かして下さい。
興味があれば、次に紹介する書籍を読んでみてはどうでしょうか?

能力分類でも紹介したEQは、「EQこころの知能指数」のタイトルで講談社+α文庫か
ら発売しています。
もう1つは、自分の性格を知る手引書として「エニアグラムで分かる9つの性格」、マガジンハウスから発刊されています。
この2冊は、自分の現在の性格、将来の人格形成に必ず役立ち、繰り返し読むことができる実用書といえます。

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)

エニアグラムで分かる 9つの性格 (magazinehouse pocket)

エニアグラムで分かる 9つの性格 (magazinehouse pocket)


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