梅太郎と梅干し三部作




18歳の時、一人で英国に渡った。
20世紀西洋絵画の巨匠たちに憧れて油絵をはじめた私は、西洋礼讃一辺倒の、生意気な子どもであった。
ところがロンドンのテートギャラリーで、ダミアンハースト氏の作品に横っ面を張り飛ばされ、それから5年間、
何もつくれない日々が続いたのである。
強固な「コンセプト」ありきの欧米現代美術を目の前で見ると、西洋絵画を模倣しただけの私の絵は、ゴミ同然に思えて、何も描けなくなったからだ。

そんな私が今、梅干しを描いている。神戸の親戚が毎年漬けてくれる梅干しを、小さい頃から食べていた。梅干しは心の友だ。二人の息子にも食べさせている。
・・・だから何なんだ、と言われればそれまでの話だけど、自分のルーツを見直した、とかなんとか言って無理やりコンセプト付けしてごまかして、今日も私は絵を描いている。

未帆