ドイツで見た2006ワールドカップドイツ大会の思ひ出 ①


前回のワールドカップ2006年ドイツ大会は、何と現地ドイツに住んでいた。
人も羨むこの状況は、しかし我が家にとっては、
猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏、状態
で、何故って我が家は私も夫も息子も、サッカーよりも野球、それも大リーグでも爽やかな高校野球でもなく
ぐだぐだな日本プロ野球が好き!
というくち。娘に至っては、
「ワールドカップ、なにそれ食べられるの?」
というレベルでしたからね。

ちなみに、私はサッカーには殆どミーハーな興味しかありません。大体サッカーのルールだってよくわからないし、例えば
オフサイドとは何か?」
は理解していますが、
「何故オフサイドが反則になるのか?」
は皆目理解できません、私にとって「オフサイド」とは、
「もう少しでシュートしそうないいところで審判が笛を吹いて台無しにされるもの」
ですね、はっきり言って。
サッカーよりも「日本人は野球ぜよ!」(何故かいきなり坂本龍馬風)。それもあくまでも「日本のぐだぐだプロ野球ぜよ!」という人なので、悪しからず。




ということで、我が家は輝かしい2006FIFAワールドカップの時、ドイツに住んでいながら、最初からチケット申し込んだりしませんでしたが、周囲ではPCに張りついてインターネットで正規チケットを必死で申し込んでいる人が沢山いました。
「一次リーグの日本戦の全部の試合のチケット家族4人分、もし決勝リーグに進んだ場合の日本戦の全部の試合のチケット家族4人分、ネットで申し込んだ。もし抽選に全てあたったと仮定したら、クレジットカードから引かれる金額はスゴい額になるけれどもそれでもいい!」という人が多かったのですが、私の周りでは誰一人「正規チケットの抽選に当たってチケット買えた」という人は聞きませんでしたね。日本企業が接待のためにチケットを多数押さえていましたけど、それはあくまでも「日本から来たクライアントのための接待」でそれの恩恵に預かるのは接待する社員の夫のみ、で、家族は家でテレビ観戦、が殆どでした。あっ、前言撤回。スポンサーである、社員思いの某日本メーカーが、或る試合に「家族全員ご招待」だったと聞いたことを思い出しました。いい会社です。

サッカー音痴の我が家ですが、唯一ナマで観戦したのが、
世界ランキング125位マルタ代表との親善試合
でした。流石にこのチケットは簡単に取れました。これは大人が25オイロ(ドイツでは、『ユーロ』を『オイロ』と、東北弁みたいに発音)でした、子供は割引があったと思います。
当日は、どこから湧いてきたのか?ここは本当にドイツなのか?と思うほど、スタジアムには日本人が溢れていました。ヨーロッパ在住でやはり本戦のチケットが手に入らなかった人が押しかけたみたいでした。
その数日前から、現地の日本人学校やインターに、一人一人の応援メッセージがかかれた、インターのジム(体育館)の床を埋め尽くすくらい巨大な青い旗が持ち込まれ、日本人の子供たちが書き込みをしたそうです。娘によると、「私がサインした近くに明石家さんま荒川静香のサインがあった」とのことですが。私はサッカーの「興行」」というものの仕組みがよくわからないのですが、これは全て電通さんがやっていたのだそう。
観客数は10800人程と発表されましたが、それの99%は日本人だったと思います、ドイツ人見に来ませんよね。
なのに、何の因果かよりによって私たちの前の席には残りの1%の「日本人以外」の明らかにドイツ人のおじさん二人が(それもデカイ)座っていて、おまけに何故か彼らは日本チームの青いユニフォームを着て(一番大きなサイズであることはわかる)、電通が無料で配っている青いフラッグを振ってるんです。
彼らが試合の途中に興奮して立ち上がると、後ろに座っている私たちの視界はゼロ。
幸いなことに(?)、彼らが頻繁に立ち上がらなければならないほど緊迫した試合でも点が入る試合でもなかったですが。
そうなんです、ド素人の私が肉眼で見ても、日本代表とマルタ代表の実力の差がわからないのです。「ワールドカップ本戦出場国」と「世界ランキング125位」といったら、はっきり言って実力差がもの凄くあって然るべきだと思うのですが、殆ど実力は拮抗(スコアだって1-0の辛勝)、否、ちまちまとしたパス回しに終始する日本代表に比べて、伸び伸びとプレーするマルタの選手の方がよほど上手く見えちゃうほど。おまけにマルタにとっては、思いっきり「アウェー」の環境だったと思いますけど、それでも彼らの方が上手く見えるのです。
本当に「開始直後」と言える時間帯に日本チームが点を入れたとき(それが最初で最後でしたが)、巨大な青い旗、というか、青いシートが応援席の下から上にさ〜っと広げられました。旗が自力で広がったわけではなく、それは一番下の座席横で折り畳まれた旗の両側に控えていた電通社員が旗の両端を持って、ダッシュでスタジアムの通路を駆け上がったのです。「広告代理店に就職するには体育会系が強い」というのが納得された一瞬でもありました。ところが、実はあのシートが掛かっている間、私たち観客は何にも見えないんです、シートの下だから!!!ゴールした後の選手の表情もも電光掲示板も何も見えない!
観客に断りもなくああいうことをしないで欲しい、電通社員の皆さん!スタジアムにいるサポーターよりも、日本で放映される画面の作り(きっと巨大な応援フラッグがスタジアムにかかってキレイだったことでしょう)をスポンサーにアピールすることしか考えていないのですね、お仕事ご苦労様です。
試合後、我が家はさっさと帰宅しましたが、日本人の中には「アルトシュタット(旧市街)あたりを歩いていたら日本代表に会えるかもしれない」(「マルタ戦の夜は選手は自由行動」という噂が流れていた)と街に繰り出した人も多かったらしいです。実際、「◯◯で誰々を見かけた」という噂が日本人社会でその後飛び交いました。

最初に書いたように、「サッカー」という点に関しては、私の場合ドイツに住んでいたことは何のメリットもありませんでしたが、元々サッカー狂の奥様方の場合、ドイツ滞在中にワールドカップが開かれる、ということはこの上ないラッキーで、夫も家族も二の次三の次で、追っかけに興じている方々もいらっしゃいました。ワールドカップに先立つ事4ヶ月前に、厳寒のドルトムント(行った人によると、昼間の最高気温が零度だったとか)まではるばる日本代表対ボスニア・ヘルツェゴビナ親善試合を観戦に行った方もいましたし、日本代表がボン(デュッセルドルフからは車で30分?)で練習をしている期間は、「朝と夕方の練習を見るため、一日二回ボンまで通った」方もいましたし、これはワールドカップ後のことだったか、マドリッドの某ホテルのロビーに或る曜日の或る時間帯に行くと、ミーティングに来ているレアル・マドリッドの選手の姿が見られるとあって、わざわざスペインまで飛行機に乗って出かける奥様方あり。実際に綺羅星のようなレアル・マドリッドの銀河系軍団が目の前を通っていき、ベッカムロナウドにサインが貰えたそうです、ついでにベッカムの肉声も聞いたとか。まあ、そんなことを聞いても全く動じない私でしたね、だってサッカーには興味ないのですから。本当に、猫に小判とはこのことです。



さて、前述のマルタ戦が行われた「LTUアリーナ」。ここは、ワールドカップの会場を誘致するために頑張って古い「Rhein Stadion ラインスタジアム」を建て替えたのに誘致合戦で負けた、という代物。どこの国でもこういうことはあるのですね。

実は、我が家はこのアリーナから歩いて10分かからないところに住んでいました。このアリーナは地元サッカーチーム(Bundesliga 2部)「Fortuna Dusseldorf」の本拠地で、シーズン中は結構試合が行われてました。試合の日は大変です。遠くから観戦に来たサポーターが、住宅街にびっしり車を止めるのです。つまりアリーナに付属した巨大な駐車場はあるけれども、流石ケチなドイツ人駐車料金を惜しんで、我が家がある閑静な住宅街に車を止め、そこから歩いてアリーナに行くのです、歩いても10分くらいですしね。ドイツ人の整然たること、お互い見ず知らずのサポーターたちでしょうに、車は必ず通りの端から順番にびっしり、高度な縦列駐車技術でもって殆ど無駄な空間なく駐車。雪や雨が降っていても傘もささず(ドイツ人は一般的に傘をさしません)彼らは上着の襟を立てポケットに両手を突っ込み黙々とアリーナを目指すのです。そういう彼らをずっと見ていてわかるのですが、ドイツにおけるサッカーファンって下層の人々です。駐車してある車は、町中のショッピングセンターに駐車してあるピカピカのドイツ車とは違って、多分エアコンもついていない車、車種でいうと、OpelとかVolkswagen(私の車もこれでしたが)、それも古いタイプ。間違っても、BMWやMercedezなんて一台もとまっていません。そういうことなんだろうと思います。サッカー観戦こそが彼らの娯楽なのです。電車で来るファンもたくさんいましたが、こちらこそ更に要注意です。彼らは、アリーナから数駅手前の我が家の最寄り駅でわざわざ降ります、何故なら、そこには「アリーナに行くまでにビールを売っている最後の店」であるガソリンスタンドがあるからです。ガソリンスタンドにビールが売っている、というのも最初は馴染めませんでしたが、ドイツでは日曜日はお店は完全休業。唯一開いているのが、さすが車大国ドイツでガソリンスタンド。というわけで、ガソリンスタンドが日本でいうコンビニにみたいになっているのです。で、電車でやってきたサポーターはガソリンスタンドで、自らの身体にガソリンならぬビールをしこたま流し入れてから、サッカーの試合を観に行くようです。試合会場でアルコールは販売されていないそうで。ということは、サッカーの試合に行く前から「出来上がって」いるわけで、皆お揃いのようにFortinaのロゴ入りの赤いマフラー

(↑実はウチにも1本これがある)
を首からぶら下げ高歌放吟。はっきり言って、危なくて近寄れません。試合がある日は電車にも乗らないようにしていました。

(電車の中でも、ビール瓶片手に盛り上がるサッカーファン)
子供たちがでかけている場合は、必ず車で迎えに行きました、あのサッカーファンの中を東洋人の子供が帰ってくる、というのは想像できません。この種の恐怖感は、日本に住んでいたらないものでしょうね。



というわけで、ワールドカップ開催中のドイツに滞在するも、全て試合はテレビで見ていた私です。ドイツの放送局が放映しているわけですから、あの日本対ブラジル戦で試合が終わった後、そのまま中継も終わってしまって、中田が芝生に倒れて暫く動かなかったところを見られなかったんですよね。後からネットで知った、という次第。イタリア対フランスの決勝戦は、ばっちり見ました、ジダンの頭突き事件で終わったあの決勝戦です。
それに関しては後日談があります。
2006年ワールドカップが終わってまだ2週間経つか経たないか、という時期に、私は友人とイタリアはミラノにいました。息子はケンブリッジにサマースクール、娘は一人で日本に一時帰国、夫は出張だったので、友人と観光に行ったわけです。ミラノのスピーガ通りの一本裏通りを歩いていたら、大型のレンジローバーの周りに人だかり。「人だかり」といっても、カワイいもんで、7,8人が車を囲んでいる、といった感じ。誰か有名人がいるの?と野次馬日本人である私も首を突っ込んだところ、車の助手席には、いかにも!のイタリア男が座っていて窓を開けて携帯で電話しているところ。後部座席には、小さい子供と赤ちゃんが乗っている様子。あれ、あのいかにものイタリア男、どこかで見た事があるような・・・と私と友人の口を同時に突いてでたのは、
「あっ、あのジダンが頭突きしたイタリア選手!」
名前が出てこないほど「頭突き」の印象が強かったのですが、彼(マテラッツィ)でした。確か数日前に行われた、ローマでの優勝凱旋パレードにいたような???

彼は、ACミランの選手だったのでした。見た感じは、
「妻がブランド通りでお買い物している間、子供の面倒見ながら裏通りに車停めて待っている恐妻家」
の風情でしたけどね。


4年前のワールドカップドイツ大会の主に個人的思い出を書いてみました。
別の観点から見たことは、別稿で。