母性効果

Maternal Effects As Adaptations

Maternal Effects As Adaptations

 母性効果が生態にどう影響するか、という本。近くの図書館に無いし自分の仕事に関係するので思い切って発注。それにしても、なんでペーパーバックがないのだろう?(泣)
 分子の世界では「母性効果」というと細胞質因子やgenomic imprintingのような特定の効果を指すと思うのだが、生態学や量的遺伝学の世界ではもう少し広い意味で用いられているようだ。すなわち、母親の形質を通じて次世代に伝わる表現型効果のうち、遺伝的な部分を除いた親の効果全てを指す。なんのこっちゃ。たとえば乳牛の乳の生産量は、母親の乳の出の量を通じて子に伝わる。母親の乳の出はおばあさんの乳の出によるから・・・と延々と続いていく。この効果は核や細胞質の遺伝的な効果が全く無くても子に伝わる(少なくとも理論的には)。母親の乳の出が遺伝以外の部分によるもの、たとえば牧草の質によるなら、それは母親の効果として子に伝わっていく。すなわち表現型分散のうち、量的遺伝学で言う母性効果で説明できる部分となる。
 この理屈は分子をやっている人にはなかなか理解できないらしい。僕も初めて聞いた時はトリッキーな説明だと思った。しかし、理論的にはある話だし、実際にそれらの効果は育種分野や進化生態学で無視できない効果があることは既に実証されている。ただ、自分でもよく説明しきれない部分があり、この本には疑問の答えが書いているだろうか、と少々期待しているのであるが、はてさて。著者のMousseauはD.A.Roffの共同研究者(弟子かな?)なので割と理論家肌だという印象がある。この本があまりに理論よりだとちょっと困るかもしれない。

 こういう話をする場合あまりいいかげんなことは書けないので署名入りにすることも考えているのです。ただ将来は個人ページも作る気にはなっているので、こういう「やや専門的な」話はそちらに書くことになるでしょう。しばらくは日記と混在させておきます。

 僕はもう少し真面目になったほうがいいのかしらということを、この数日ちょっと考え込んでしまっているのです。しかし、年をとってよかったと少し思うことは、こういう悩みを悩む力があまり無くなったことです。高校の時は延々と引きずっていましたがね。