ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん このページをアンテナに追加 RSSフィード


AMAZON『英国メイドの世界』へ  ■講談社より刊行しました! 屋敷の暮らしと使用人の仕事が分かる『英国メイドの世界』
 -屋敷で働くメイド・執事の仕事が分かる資料本『英国メイドの世界』:第一章の試し読み開始
 -出版化時にこだわった「読みやすさ」と「分かりやすさ」

 ■英国ヴィクトリア朝・屋敷や貴族関連の資料/映像をお探しの方にオススメ
 『ダウントン・アビー』を見る前に読んでおきたいカントリーハウスと職場の解説

 -SPQR[英国メイドとヴィクトリア朝研究]更新中




2018-02-03 コミティアには4年ぶり参加

[]コミティア123参加予定 サークルSPQR:ね43b

2010/02/11(日・祝)開催予定のコミティアに、サークル参加する予定です。前回11月は風邪で欠席し、それ以前の参加が4年前なので、久しぶりの参加となります。主に同人の場でお会いしてきた方達への出版報告、という位置付けになります。


コミティア公式・123開催概要


コミティア123・頒布予定物

コミティアは商業出版の持ち込み(著者の本)がOKなので、『日本のメイドカルチャー史』を持っていきます。


また冬コミ新刊のポワロ本も持ち込みます。


※『英国執事の流儀』は手元に在庫がないので、今回は持ち込めません。

※本が多いので、種類を今回は絞ります。


『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻(ドラマに登場する執事、メイドに特化した解説本)1,000円
『英国メイドがいた時代』(ポワロの時代を含むメイド衰退の歴史資料本)1,000円
『日本のメイドカルチャー史』上巻星海社から出版2,500円
『日本のメイドカルチャー史』下巻星海社から出版3,500円
『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(メイド好きが語るメイドブーム)1,000円

2018-01-01 本年もよろしくお願いいたします

[][]2017年の振り返りと2018年のロードマップ

はじめに

今年も恒例、これまでの活動を振り返ります。去年2017年には、振り返りをできていませんでした。


2年前:2015年の振り返り(2016/01/02)

3年前:2014年の振り返り(2015/01/01)

4年前:2013年の振り返り(2014/01/01)

5年前:2012年の振り返り(2013/01/01)


出来た事

1. 『日本のメイドカルチャー史』出版

ここ数年、振り返りに記していた最大級の課題が「日本のメイドブームに関する本を作る事」でした。それをようやく、2017年に『日本のメイドカルチャー史』星海社から出版する事で実現できました。


英国メイド研究から始まった私の研究活動が、様々なきっかけで「メイド研究」へと広がったここ数年の成果物として、日本のメイドブームを理解する上でもまとまった先行研究を作れたと思います。ただ、これは始まりの足場で、「メイドカルチャー全史」へ近づけるように、様々な人の言葉を集めていくのが次の課題です。


2. 『名探偵ポワロ』の同人誌を初めて作る&理想に近い同人誌

今年のほとんどの時間は出版の準備に使っていました。その出版が終わった後、ゆっくり休む予定が、コミケに申し込んでいたために、同人誌を作る必要がありました。申し込んだ時は『日本のメイドカルチャー史』を補完する内容で、裏話的なものを書こうと思っていたのですが、いざ作ろうと思った時、作りたいと思えたのは『名探偵ポワロ』の同人誌でした。


冬コミ新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻


元々、同人サークル「制服学部メイドさん学科」の同人誌で公開されていた、ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』に登場したメイドリストに刺激を受けて、2年前から資料の整備・準備を行っていたものですが、当時はリストだけのはずでした。しかし、ウメグラさんに参加いただく中で豊富な挿絵がある、ポワロの研究同人誌の企画へと生まれ変わりました。


得られた事

1. 『日本のメイドカルチャー史』出版時に武内崇さんのメイドイラストを帯に描いていただける

繰り返しとなりますが、私が大ファンの武内崇さんに、『日本のメイドカルチャー史』の帯に、「メイドのイラスト」を描いていただけました。オリジナルのメイドと、代表作となる『月姫』から「翡翠と琥珀」です。



2017年はTYPE-MOONの公式サイトで、お正月に武内様の絵によるメイドセイバーの年賀状が公開されたり、8月にはメイド・オルタがFGOで実装されたり、明確に「武内さんとメイド」に関するトレンドが間近に感じられました。


人生で最大級の出来事でした。


2. NHKのラジオに呼ばれて壇蜜さんにお会いする

「メイドを知りたい」ということで、お声がけいただきました。詳細はNHKラジオ第1『DJ壇蜜のSM( Selected Music)』vol.2 8/17放送 21:05-21:55にメイド解説で出演予定に記載しました。


渋谷のNHKのスタジオに初めて入り、壇蜜さんのお隣に座り、反対側に番組ディレクターの方、そして壇蜜さんの向かいにNHKの高市アナウンサーがいらっしゃいました。壇蜜さんがアンミラでのバイト経験があること、かなり「デ・ジ・キャラット」に詳しかったことなど、メイドブームへと繋がる接点に驚きました。


メイド研究をしていたら、2011年には水樹奈々さんに、2017年には壇蜜さんにお会いできました。メイド研究の可能性を感じ入る次第です。


2018年の抱負

冬コミ配布のペーパーに書きましたことを、少し膨らませつつ。時間はかかるものの、だいたい有言実行なので、きちんと形にしていく準備をしていきます。

執事本の出版 from 星海社(進捗:10%)

3冊目の本の出版が決まりました。『日本のメイドカルチャー史』を書いていた時に、同時期の執事ブームについても調べていました。ただ、メイドがメインだったのでバランスが崩れることと、調査不足の観点から掲載を見合わせました。その切り離したテーマが面白いということにて、星海社から出版の提案を受け、新書で作ることになりました。


『日本のメイドカルチャー史』と似たコンテクストを持ちつつ、異なる切り口で書きます。


メイドアワードの創設(進捗:まだ見えていない)

メイド作品を追いかけるのが物理的に無理な段階になったので、作品を表彰するアワードを創設して、メイド作品が集まる仕組みを作る。アワード自体は読者投票も取り入れる。


・主演メイド作品賞:メイドが主役の作品

・助演メイド作品賞:主役ではないメイドがいる作品

・ピンポイントメイド作品賞:単発でのメイド出演

・メイド喫茶賞:作品内で出てくるメイド喫茶の描写からの表彰

・殿堂入り作品賞:『エマ』『シャーリー』『まほろまてぃっく』など

・新作品賞:その年に連載を開始、発売した作品のみ限定(続刊がその年に出ても対象外)

・審査員各賞


賞金は、私の自腹です。


メイドライブラリー公開(進捗:交渉中)

メイドブーム研究の時に集めた資料(漫画やラノベが大半。秋葉原系や、ゴスロリ関係の所有雑誌も含む)を公開できる場所を探しています。自分では読んでいない本が多くなっているので、死蔵させないためです。現在、興味を持ってくれている店舗があるので、話を詰めています。


※汚れてしまうことや紛失する可能性があることを前提に、超希少品は出せません。


インタビュー・対談(進捗:実施中)

当事者としてメイドブームを駆け抜けた方達に、話を伺う。話を聞いてみたいのはメイド喫茶の創業者、店員、表現者など様々にうかがいます。年明けに星海社の方で、1回目の対談が公開される予定です。


メイドコラムの寄稿の依頼(進捗:交渉中)

自分以外の詳しい人に、メイドブームの周辺領域を語っていただく計画を進めています。メイド喫茶全体、エロ漫画やニコニコ動画、pixiv、小説家になろうなどのCGMにおけるメイドの出現傾向など。既に周囲にお願いできそうな方が多いので、進行中で、3-4月に幾つか形をお見せできればと思っています。


同人誌即売会(進捗:交渉中)

メイドオンリーイベントを代表する「帝國メイド倶楽部」的なるものを考えています。以前、ちらっとつぶやいた時に、企画に興味を持った経験者の方からお声がけいただいたので、今、実現可能か相談しています。


メイド同人誌が読みたければ、メイド同人誌が集まる場を作れば良いのでは?との思いにて。


あと、個人的には、過去にメイドコスプレをされていた方に、その当時の衣装を着ていただきたいのです。日本のメイド服(コスプレ衣装)アーカイブということで、記念に残せないかと。100人ぐらい集まると素敵ですね(どんなお屋敷だろう……)


メイド喫茶とボコラボイベント(進捗:交渉中)

企画中です。公開できる段階になったら公開します(実施できるかは未定)。


ニュースサイトの創設(進捗:やる気が全て)

メイドアワードをやる前に、まずは企業が公開するメイドウェブ漫画作品などを集めてみたり、数万RTされるメイドイラストをアーカイブしたりと、メイドイメージにまつわる記録の散逸を防ぎつつ、メイドイメージへアクセスしやすい環境の整備を計画中です。


メイドメディアの創設(進捗:やる気が全て)

ここのみ、実現可能性やまだ何も見えていない「夢」です。ヴィクトリア朝をテーマとした創作メディアを作りたいです。創作プラットフォームを作り、メイド作品制作を大好きな作家の方たちに依頼してみたいです。


終わりに

これまでは基本的に「個人で完結する」ことがほとんどでした。今年は、「一緒に楽しんでいただける方」「私の活動と関連しそうな方」を巻き込みつつ、お力を借りながら、世界を広げていきます。


メイドブームを把握するには一人ではとても無理で、人の数だけ形もあります。できるだけ、後の人が研究しやすいように、何かを残していこうと思います。


それでは本年も宜しくお願いいたします。


お会いできる方はお会いできる時に。


2017-12-25 1930年代メイド・ウェイトレス制服図鑑?

[][]冬コミ新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻


26冊目の本です。冬コミ(コミケ93)の新刊はNHKで放送された、デビッド・スーシェ主演のドラマ『名探偵ポワロ』の同人誌になります。内容はドラマ全70話から、各話に登場する働く人たちとして、「家事使用人」(メイド、執事、庭師など)をリスト化して、個々の立ち位置や着用する制服を、イラストを交えて紹介する本です。


紹介数は「153人」以上です。


今回は「上巻」として35話分までを扱います。本来は第35話「夢」が最後の話数となりますが、代わりに第65話「オリエント急行の殺人」を盛り込みました。また、思ったよりも大きなボリュームゾーンとして、近接する領域の「喫茶店・レストラン」、「ホテル」の制服を着たスタッフも紹介しています。登場機会が多すぎたためです。


単一の作品を扱う同人誌は、サークルSPQRとしての同人活動では初めてです。


タイトル:『『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド〜執事・メイドから、ホテルスタッフ、ウェイトレスまで〜上巻』

著作:久我真樹、装画/デザイン:梅野隆児(umegrafix)様

仕様:A5サイズ、132ページ

内容:解説+イラスト

サークル:SPQRコミックマーケット3日目東6ホールト16bで頒布開始

価格:1000円

Webコミケカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/11919725

委託:未定


ポワロの時代は1930年代のため、メイド服は日本で見慣れている「クラシックなメイド服」ではありません。そのイメージを物語る動画があるので、ご紹介しておきます。


Ideal Home Exhibition (1920-1929)



同人誌の概要を示すために、以下、同人誌本文から「はじめに」など冒頭部分を、抜粋します。

【はじめに】

 本書は2017年の冬コミの新刊です。


 日本のメイドブームを解説する『日本のメイドカルチャー史』(星海社、2017年)を刊行してから、次に作る本として選んだのはドラマ『名探偵ポワロ』(ITV、1989-2013年)です。私がメイドという職業に強い関心を持つに至ったドラマで、主演デビッド・スーシェ(吹き替えは熊倉一雄氏)は24年の長期間、ポワロを演じ続けました。私の中の「ポワロ」イメージは、デビッド・スーシェのイメージで固定しています。


 私が初めてNHKでこのドラマを見たのは、初放送となる1990年、中学生の頃でした。殺人事件を扱うミステリというジャンルに興味を持ったのも、この作品がきっかけとなりました。高校に進むと、図書館にあった早川書房のアガサ・クリスティー作品を読みふけりました。


 そんな私が、ドラマで見た英国の屋敷と家事使用人の研究を行うことになったものの、実際に『名探偵ポワロ』にどれほどの使用人がいたのかを、正確に記憶していませんでした。そこで、数年前に家事使用人のリストを作ろうと思いました。


 この発想は「先行研究」の影響を受けています。同人におけるメイド研究の先駆者、サークル「制服学部メイドさん学科」の同人誌にはNHKで放映した、ジェレミー・ブレット主演のドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』(グラナダテレビジョン、1984-1994年)のメイド登場リスト「グラナダメイドに関する小報告」(めりあだす氏)が掲載されていたからです。この報告は、作品タイトルごとに、「エプロン」「髪飾り」「関与」「備考」として出現するメイドを細かく記載した密度の濃いものでした。


 私がそのリストを初めて見たのは2002年で、「『名探偵ポワロ』でも作りたい」と思ったものの、ドラマが完結したのは2013年となり、だいぶ待つこととなりました。


 とはいえ、全70話の壁は分厚く、どうしようかと思っていた時に、服飾を大学で専攻されていた樹さん(@chez_toi)と知り合い、手伝っていただくことで情報を抽出できました。


■本書の内容:解説+イラスト

 本作品は、「数多くの家事使用人を徹底的に解説しよう」との意気込みで始まっています。しかし、これだけ数多くの人物が登場していながら、「背景としての登場=セリフがわずか」であるため、深い解説をできる登場人物が限られました。その結果、基本的には各話に登場する制服描写がメインになりました。


 この「描写」を分かりやすくするため、本書の表紙デザインとレイアウト、編集を担当してくださる梅さん(@umegrafix)のご協力で、作品に登場する制服を着た人々のイラストを掲載することと相成りました。これにより、ドラマに登場する1930年代の「メイド服」や職業服を、把握する「図鑑」のような本となっています。


■対象となる「働く人たち」

 本書では家事使用人と、彼らと同様に制服を着た人々が働く近接領域のホテルスタッフやレストラン・喫茶店の従業員を話数ごとに取り上げ、その在り方や制服の解説を行います。


 「制服を着て働く人」は、警察官や鉄道職員などにも広げられます。しかし、今回は家事使用人が私の関心領域であるため、近しいサービスを提供する職場で働く職種に限定しました。


 具体的には、家事使用人が働く「屋敷」と類似するサービスを提供する職場は「ホテル」とみなしました。屋敷で人をもてなす紅茶の時間やディナーの給仕を提供する職場としては、「喫茶店・カフェ」や「レストラン」「パブ」「バー」などを対象としました。


 加えて、メイド服とウェイトレスの制服との区別は難しく、ホテルスタッフの制服も家事使用人を想起されるものを含むため、デザイン的な親和性も加味しています。


 なお、仕える形を想起させる「秘書」と、育児を担う「ナース(乳母)」や「ナースメイド」と遠くない「看護婦」の制服も対象としました。


■「働く人リスト」の情報

 基本的には各話で区切り、登場する「腹たく人」を職種、キャラクター名、備考(主に外見年齢)から、登場順で紹介します。名称がない場合は名称を省きました。これに物語上の立場を加え、制服の構成要素を詳述しました。


 外見年齢の識別は難しいため、印象で判断しています。


■対象とする話数と作品

 時間的制約のため、今回は上巻のみを刊行します。この上巻では全70話中の半分となる35話分の解説を行います。対象は、ドラマ版の英国での放送順を参考に第1話「コックを捜せ」から第34話「エジプト墳墓のなぞ」までに加えて、本来は後半で扱う第65話「オリエント急行の殺人」をピックアップしました。


 世界的名作「オリエント急行の殺人」を加えたのは、理由があります。


 第一に本書を作ろうと思ったのは「オリエント急行の殺人」がきっかけだったからです。同作品は家事使用人が大勢出てきます。しかし、彼らが家事使用人だと語ることは作品のネタバレとなるために、今までネットでの発表の機会を持ちませんでした。同人誌ならば許されるだろうと、この機会にしっかりと言葉にしたいと考えました。


 第二に、冬コミ直前の12月にはケネス・ブラナー監督・主演の映画『オリエント急行殺人事件』の公開もあり、比較をしたいと思いました。付け加えれば、2015年1月には三谷幸喜氏による『オリエント急行殺人事件』の地上波放送もありましたので、作品に接している方も多いことで、ネタバレ対象としました。


■留意事項

・原作小説との比較がある場合、早川書房のクリスティー文庫(2003年創刊)に準拠しています。また、文中の「初めて」は、原作小説ではなく、ドラマとして初めてを意味します。原作小説とドラマの発表順は、揃っていません。


・ドラマは「ポワロ」表記ですが、クリスティー文庫では「ポアロ」表記となっています。本テキストでは、クリスティー文庫のタイトル記載を表記する場合を除き、ドラマの「ポワロ」表記に準拠します。


・ドラマの映像確認はAmazonビデオの『名探偵ポワロ』第1〜4シーズン+第6シーズンを用いています。人物表記は字幕の表記を用いています。ドラマで人物名やホテル名など固有名詞が不明だった場合は、原作小説を確認して当てはめています。


・登場するキャラクターの全リストは印刷に適さないサイズのため、ネットで公開します。

2017-12-07 日本のメイドイメージを旅して

[]「新書」企画のはずが上下巻の分厚い本に 『日本のメイドカルチャー史』刊行までの経緯

発売から1ヶ月が経過し、つい先日2017/12/03の朝日新聞の読書欄でも取り上げていただけました。


タイトルにあるように、本書が新書ではなく、上下巻で出せたのは運と縁のなせることなので、ブログにて経緯などを書いてみます。

元々、本書は太田様との話の中で、2010年冒頭ぐらいに「世界のメイド」を扱う企画として始まりました。当時、私は世界中のメイドを調べられる範囲から調査していたからです。「日本のメイド」についても[特集]近代日本の女中(メイド)事情に関する資料一覧という形で公開するぐらいには、基礎調査をしていました。


「英国メイドのような歴史的メイド」(『英国メイドの世界』で詳述)と、「現代の家事労働者としてのメイド」(研究中)と、「日本で発展したメイドイメージ」(未調査)の「3つのメイドを比較することが面白かったので、太田様にその提案を行いました。


その後、『英国メイドの世界』の出版前に、私も参加したことがあるメイドオンリーの同人イベントの『帝國メイド倶楽部十一』の参加サークル数が18に激減したことを知人の方のつぶやきで知り、 メイドブームの終焉は「衰退」か、「定着」か(2010/08/28)とのテキストを書きました。ここで、私は初めて「メイドブーム」に踏み込みました。確かに、コミケのいわゆる「メイド島」(創作少年エリア)も、かつては100を越えたサークルが激減していました。


その時に思ったのが、「メイドブームは終わったように見えるけれども、それは衰退ではなく、定着ではないのか」と。それぐらい、メイドイメージが普遍化しているように思えました。同人サークルから見ると、以前は「メイド」を表現するには、「メイド」がいても不思議ではない世界観を必要として、結果的に「メイド島」が形成されていたのではないか。しかし、「メイド」が普及することで、どの作品にも自由にメイドが出現する環境が整い、あえて「メイドのための世界」を必要としなくなったのではないか、と。


体感としても、様々なジャンルの作品に「メイドコスプレ」が溶け込んで、絶対数はむしろ増えているように思えました。


先の一文の最後は、"まとめ:メイドは21世紀の「吸血鬼」たるか」"と、結びました。「吸血鬼」が様々な作品に出るように、メイドも同じレベルの存在になったのではないか、と。そして9月には補足・メイドブームの断続性と連続性を考える(2010/09/11)を書き、日本のメイドイメージの変遷をいろいろと深める中で、「情報を発信すると、教えてくれる人がいる」ことを学びました。特に、森瀬繚様からの示唆が際立っており、深く調べるきっかけをいただきました。森瀬様からいただいた情報は貴重で、それを私に留めるのはもったいなく、また、託された心持ちにもなりました。


同日のメイドブーム関係の言及をしている理由(2010/09/11)を読み直すと、もうひとつ、「私が知っているメイドイメージと違うメイドイメージが、公の場で語られている」ことへの違和感がきっかけのひとつにもなっていました。


元々、私はなるべくメイドを巡る言説から距離を置いてきましたし、自分の研究内容に関連しないことは黙っていたつもりです。とにかく、自分の研究する領域だけを見ようとしてきたからです。今でも読み終わっていない英国メイド・屋敷関連の資料が数多く存在しており、そうした研究成果で何かを示すことが、自分には向いていると思っていました。


ところが、昨年の2009年11月に日本ヴィクトリア朝文化研究学会にて、サブカルチャーとしてのメイドを語る方が登壇した際に、違和感を感じました。その方の語るメイド像と、私が知っているメイド像(あるいはオタク界隈におけるメイドブーム)は、あまりにかけ離れていたからです。


ここで感じたことは、「当事者として語っておかないと、声が大きい人に上書きされてしまう」「自分のことを語られてしまう」という危機感と、「語られていた言葉に一理あるけど、それだけでは全然ない」との想いによるものです。


こうした経緯もあって、学会の会報誌に「メイドブーム」についての寄稿依頼が来た際はお引き受けしました。しかし、これまで述べてきたように私はブームそのものの主体ではなかったので、「ブームを誰が受け入れたのか」というのを、私が見た範囲で描こうとしました。


そして、「はじめに」に書いたように、『英国メイドの世界』出版後に「日本のメイドについてどう思うか」を聞かれる機会が多かったこともあり、「日本のメイドに関する仮説や疑問を全て、この機会に解消しよう」と思いました。当時の自分は真面目だったので、言葉に残していました。ありがとう、昔の自分。


メイドブームの可視化を星座にたとえていますが、光を強く放つ星(=手に入った情報)だけで星座を作っているかもしれません。でも自分の目に見えないだけで、もっと多くの星があるはずです。それに、立っている場所が北半球か南半球かで見える景色も違います。その上、天気にもよっては見えないものもあるでしょう。

つまり、私に描けること、できることはわずかです。

ただ、少なくとも私の手元には多くの星の情報が運良く集まっていて、気が付けば見晴らしのいい場所にいて、それを星座として伝わりやすくする状況が整っていました。私は「完全ではない」にせよ、「分かっていること・分かっていないことを明示して書く」ことにそれほど抵抗がありません。仮説を含むものですが、「今、出来ているもの・見えているもの」を公開することで、他の方による視点から学べたらと思いますし、それがウェブらしく思えました。

本来、『英国メイド』の研究に専念したいのですが、いろいろと視点を相対化する上でも、自分が本を出せた環境や先人の作った環境を理解し直す上でも、というところで言葉にしました。

仮に、1993年をメイドブームの起点とすれば、もう18年です。今から10年後よりも、今時点で振り返った方が、後の時代に生きる人に見えるのものが多いのではないかと思いますし、10年後もまだ関心を持つ人がいるよう、今できることをしておこうというところです。

10年後に読んでくれる人がいることを願って(2011/01/29)

元々、私が『英国メイドの世界』という本を作れたのも、同人活動の際に、メイドブームのおかげで「メイドが大好きな読者の方たち」と出会えればこそです。また、その同人時代に出会った方の中には、「少女漫画で大勢のメイドを見たことがある」と、おおやちきさんの少女漫画を上げられた方がいて、そうした「どこでメイドに出会ったのか」のルーツにも興味を持ち、ブームと共に、そもそもなぜブームに至ったのかを調べようとも思いました。当時、ブームを個別に記したテキストはあっても、ブーム全体を俯瞰したテキストはありませんでした。


そこで、まず調査をしようと、テキストをウェブ公開したり、同人誌を書いたりと、いろいろと幅を広げました。以下がウェブと同人誌で記した、『日本のメイドカルチャー史』の骨格を作る調査となります。もちろん、数年前のものなので、より調査を重ねた出版時の内容よりも粗いものですが、道筋はできていました。


[特集]第1期メイドブーム「日本のメイドさん」確立へ(1990年代)

[特集]第2期メイドブーム〜制服ブームから派生したメイド服リアル化・「コスプレ」喫茶成立まで(1990年代)

同人誌『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』

同人誌『メイドイメージの大国ニッポン 漫画・ラノベ編』

同人誌『メイドイメージの大国ニッポン 新聞メディア編』


「日本のメイド」に言及するため、それまであまり接点がなかった「メイド喫茶」についても踏み込みました。幸いにも、縁には恵まれていました。池袋の「ワンダーパーラーカフェ」創業前には同人誌を送ったこともありましたし、 クラシックな制服の「シャッツキステ」に興味を持ったり、『英国メイドの世界』が意外とメイド喫茶クラスタに響いて、twitterでフォローされる中でフォローを返すことでその世界を知り、「シャッツキステ」での出版イベントや、「月夜のサァカス」での書棚展示・勉強会企画を通じて、多くの人に出会えたからです。


様々な人がメイド喫茶に関する情報を出している中で、自分の立ち位置は、「メイド喫茶が世の中にはどう伝わっているのか」「世の中にイメージを伝えるマスメディア(雑誌・新聞)はどう伝えていたのか」でした。


そこで、先ほどの言葉が再び、頭をよぎります。


ここで感じたことは、「当事者として語っておかないと、声が大きい人に上書きされてしまう」「自分のことを語られてしまう」という危機感と、「語られていた言葉に一理あるけど、それだけでは全然ない」との想いによるものです。


この言葉は難しく、私にも返ってきます。『日本のメイドカルチャー史』を書いた私も、ある人にとっては「上書きする側」に仲間入りを果たしたからです。その「上書きされる」「言及されていない」ことから出てくる声を聞きたいとの思いも出版の目的とはなりますが、メイド喫茶についてのレポートは多くあっても、メディアがどのように伝え続けていたのか、体系的な情報がありませんでした。


一般的に、自分が関心がないことは、基本、判断材料・情報がないので、メディアの情報を受け入れやすくなるでしょう。私が「はじめに」で書いたように、メイドに詳しくないはずの「元同僚」たちが「メイド」と聞いて「メイド喫茶」を連想できるぐらいには、情報が流布しているのです。その「メディア」によるイメージ形成に、興味を持ちました。


ある時、たまたま「ライトノベル」という言葉が世の中にどう広まったのかを調査した本『ライトノベルよ、どこへいく―一九八〇年代からゼロ年代まで』を読みました。その調査で使われていた「大宅壮一文庫」の雑誌アーカイブを知り、「どうせならば、すべてのメイドに関する雑誌記事を調べよう」「新聞記事もデータベースを友人が教えてくれたので利用しよう」と、それぞれ数百の記事を読み込みました。


その結果の一つが、同人誌『メイドイメージの大国ニッポン 新聞メディア編』であり、雑誌によるイメージ形成は、メイド喫茶データを収集していた、たかとらさんによる同人誌『メイドカフェ批評』への寄稿でした(メイドイメージを映し出す雑誌・新聞記事の調査


最初の話に戻りますが、このように自分自身が調べる理由を持ち、マイペースで好き勝手に調査を続ける私を、太田様は忘れず、気長に待ってくださっていました。当時の担当編集・今井様も粘り強く、私に原稿を促し、書く方向に支えてくれました。


そして、日本のメイドを解説する「新書」として作ることになりました。


ここが大切です。


新書、です。


そこから、相当に集中して、これまでの研究成果の詰めと図版の収集を行いました。ただ、上記に記したエリアと、本書で発表されているエリアのギャップを埋める必要もあり、研究は続きました。そして、まずは自分が好きな形で全てを書き尽くし、そこから新書にブラッシュアップしようと考えました。


ようやく研究が終わったのが、2017年4月でした。新書になっていない、研究成果の「原酒」とでも呼ぶべき、非常に濃いものでした。それでもまず提出して欲しいとの話を受けて、その先、どうやって新書に落とし込むのかを考えながら、星海社・太田様にお会いしました。


太田様の第一声は、

「久我さん、この原稿は、僕が頼んだものじゃない、頼んだものじゃないけど!」

でした。






太田様の英断で「そのままの形」で出版が決定しました。当時、51万字有りました。私の狂気に、太田様が付き合ってくれた瞬間でした。


太田様からは『英国メイドの世界』でブックデザインを行った原田恵都子様にお願いしましょうとの提案もあり、スケジュールが合致したこともあって、お引き受け頂けることになりました。


その後、出版に向けた大幅な書き直しと追加調査、校正を進めました。この時点ではまだ、最終章も書き終わっていませんでした。前回『英国メイドの世界』の時は会社を辞めて出版に専念しましたが、今回は働きながらの作業だったため、3ヶ月以上は校正と膨大な図版と資料の整理となり、担当編集の櫻井様に多大な迷惑をおかけしつつ、ようやく出版にこぎつけました。前回は締め切りがない中で時間も豊富で趣味としての最大限の追求でしたが、今回は締切内で仕上げるために、有給も可能な範囲で使い、休みのない時間が続きました。


表紙の帯は、武内崇様に描き下ろしていただけました。同人サークル「竹箒」にて活動された武内様は私にとっては同人活動における偉大な先輩です。また私自身、「TYPE-MOON」作品のファンであり、2009年12月に刊行された武内様のイラスト集の感想をルビコンハーツ・『京都、春。』との出会いと構造の面白さに書いたように、武内様の描くキャラクターと世界が好きでした(詳細はあとがきに)。


私がこのような運と縁とに恵まれたのは、この『日本のメイドカルチャー史』を書くようにと、「メイド神」か何かに指名された結果に思えます。たまたま調べることが好きな人間として「私」がいて、調査研究のリソースもありました。日々、調査の過程でメイド要素を見つける日々も、考古学的な発見をするような、知的快感が絶大でした。


同人も支えでした。研究を続けるためのモチベーションも経験も、同人の場で多くの方に出会って学び励まされて培うことができました。そして、出版を後押ししてくれる方にも恵まれました。


こうして、上下巻の形でお届けできるのも、奇跡なのです。


私のメインテーマは「英国メイド」と「家事使用人」で、そのうちそちらの研究に戻るつもりですが、まずは本書が基礎研究のひとつとして足場となれれば、幸いです。


今はまだ書けない『日本のメイドカルチャー全史』に向けて、いろいろな人に出会いながら。


そして次回作は2018年初夏ぐらいに「新書で執事」

太田様から発表がありましたが、再び星海社から本を出します。


「メイドブーム」を調べていた余波で、実は執事ブームについての情報も集まっていました。また、元々、私は英国メイド研究者でありつつ、本来は「英国の家事使用人研究者」なので、英国執事研究者でもあります。前作、『英国メイドの世界』も、実は半分ぐらいは執事を筆頭として男性使用人の情報で構成されています。そうした蓄積をベースに、執事についての本を書きます。


こちらも、ご期待ください。


2017-11-04 出版のご報告(2作目だけど3冊目)

[]『日本のメイドカルチャー史』上下巻・発売開始

6年間の準備期間を経て、10/26に『日本のメイドカルチャー史』の上巻が、11/02に下巻が発売しました。同時発売でないのは、校正に時間がかかり、予定を超えてしまったためです。



本書の内容は、日本のメイドカルチャー史(著者による紹介)にてすべての目次を公開し、内容を判断できるようにしています。また、参考文献や読書に役立つウェブサイトの紹介や、誤字・脱字・誤認なども補完していきます。


本書の概要については上記、著者による紹介に加えて、『日本のメイドカルチャー史』から「はじめに」全文を公開しました。


日本のメイドカルチャー史(上)

日本のメイドカルチャー史(上)



本書を読む方に向けて、ひとつ伝えたいことがあるとすれば、可能な限り、章通りに読んだ方がより楽しめる、ということです。


メイドブームの本が通史として今までほとんど出ていなかったのは、そのコンテクストが多様すぎて、個々のブームの関連性を説明するのが、非常に難しいからです。本書はそのコンテクストを丁寧に解きほぐし、読むことによって情報を整え、それ以降の章で層を積み重ねるように伏線を回収していきます。それは、読むことで知っていることが増えて、その知っていることが次の章を読む時に繋がっていく「知の連鎖」の気持ち良さを引き起こします。


メイド喫茶を扱った第5章も、その後、漫画や小説にどう影響を与えたのか第6章で補完していきますし、最終章でも、日本が生み出した「メイド喫茶のメイドさん」がどのような文脈を得て行ったのかを解説しています。さらには、「メイドブームは終わって、日常となった」という意味を、多種多様な参考資料のトレンドの推移から論証していきます。


なので、お時間がある方には、『日本のメイドカルチャー史』は歴史小説を読むように、最初の章から順番に読んでいただくことをオススメしています。そして読み終わると、目の前にある景色の見え方が変わっているかもしれません。


本書が「愛と狂気」のタイトルを冠するのは、これだけ異なる文脈のブームを、「ひとりで書いている」ことにあると思います。しかし、ひとりでなければ書けません。膨大な情報を俯瞰して、本来は見えない繋がりを見ることができる視座を得られなければ、見えないことが多くありすぎたためです。


勿論、先行研究の恩恵もあります。ただ、エリアによってはその情報を「メイド」と結びつけてみようと思うことがないがゆえに、ほとんど見えていなかったところもあります。


今回の本は「私が見たメイドブーム」で、「これがメイドブームのすべて」と言うつもりは全くありません。タイトルが「全史」でないのは、無理だからです。タイトルのコンセプトとしてあったのは、『私たちが見たメイドブーム』です。見る人によって違う、でも、本書を通じてその時を思い出すような機会となること。そこに正解はなく、ただ、私が見つけたメイドを読者の皆さんにシェアする、というような設計思想です。


日本で生じたメイドブームという20年以上の期間に及んだムーブメントを、私が「ツアーガイド」として案内するようなものです。もちろん、他の方がツアーガイドを務めれば、別のルートも見えることでしょう。私の役目は、「ここに山がある」、あるいは、「ここに宝がある海図がある」と、示すことにあります。あとは、そこを目指す人たちが増えることを願うのみです。そこをかつて旅した人が多いエリアでもあるのですから。


アマゾンのレビューをお書きくださった方の言葉が、響きます。


"記憶を呼び起こす楽しい作業に満ちている。"


https://www.amazon.co.jp/dp/4065103991


そのために作りましたし、その楽しさに突き動かされて研究が続きました。


帯に記された「愛と狂気」をシンプルに言えば初期原稿は約51万字(400字詰め原稿用紙1275枚)、メイドについてそれだけ書くことがあるのかと言われれば、まだ書き足りません。費やした時間は6年。新聞記事と雑誌記事がそれぞれ約1000記事(使えなかったものも含む)の閲覧・コピー、収集した資料も大変なもので、資料を自由に集めるために会社で働いているのかと錯覚するような状態でした。


この狂気に付き合ってくださったのが、講談社BOX時代に『英国メイドの世界』出版を決めてくださった、星海社太田克史様です。


以下の写真と、太田様のつぶやきが、初期状態です。


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気がつけば、商業デビュー作?『英国メイドの世界』出版から7年が経過しました。2作目も、気がつけば「上下巻」となっていました。「冊目」という言い方をすれば、「2冊目の本と一緒に、上下巻なので3冊目もある」という、いわば「双子」が生まれた状況と同じです。


という思いつきを書いていて、ふと。この「双子」は、武内崇様に描いていただいた琥珀と翡翠という双子のメイドにも繋がっていきますね。




出版を見届けたのと、伝えたいことはすべて本に書いたので、通常営業に戻ります。あとは、読者の方たちに委ねます。読み終わるのに数日かかるはずで、なかなか一つの本にそこまで時間を使えないと思います。みまさまが読書を楽しみ、自分たちが見てきたメイドブームを思い出し、あるいは今の中に見出し、楽しまれることを願っています。