ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん このページをアンテナに追加 RSSフィード


AMAZON『英国メイドの世界』へ  ■講談社より刊行しました! 屋敷の暮らしと使用人の仕事が分かる『英国メイドの世界』
 -屋敷で働くメイド・執事の仕事が分かる資料本『英国メイドの世界』:第一章の試し読み開始
 -出版化時にこだわった「読みやすさ」と「分かりやすさ」

 ■英国ヴィクトリア朝・屋敷や貴族関連の資料/映像をお探しの方にオススメ
 『ダウントン・アビー』を見る前に読んでおきたいカントリーハウスと職場の解説

 -SPQR[英国メイドとヴィクトリア朝研究]更新中




2005-04-30 ペーパー作りました

[]委託開始

とらのあな』にて委託が始まりました。今のところ、秋葉原店だけみたいです。出庫情報なので、店頭に在庫が今あるかはわかりません。通販が出来るようになったら、また書きます。


委託は手数料分を頒価に上乗せしていますので、イベントに来られる方にはイベントで実際に手に取り、内容を確認した上での判断をされることをオススメしています。


[]ペーパー暫定版完成

ひとまず、ペーパーを作り終えました。英書の翻訳は短くて面白そうな箇所を捜して、2冊から翻訳しました。全4ページです。


1:面接のときの質問項目(侍女、のですが)

2:『Avoid being〜』の序文


後者の方は、「メイドの勤務時間と仕事内容」+「していいこと・してはならないこと」など、短い文章で情報が詰め込まれているので、今までの読者では無い人でも読める内容です。


翻訳部分の長さが中途半端なので、冒頭部分に、一般的なメイドさん認識についてのFAQみたいなものを書きました。これはおまけみたいなものですが、初めて手に取る人には同じく、珍しいものだと思います。


あとは、たまにはペーパーらしく、近況報告や夏の新刊予定について書きました。ほとんど日記を見ている人には無縁かもしれませんが。


[]男性使用人編の制作本格始動

ということで、新刊(夏コミ向けです)の制作を本格的に開始しました。今現在は一番情報が多く、難しい、そして面白いFootmanの整理をしています。最初に買った英書『THE COUNTRY HOUSE SERVANT』、その6割はランドリーメイドという極めて異常な(タイトルに偽りあり)本でしたが、実はこの本、残りの3割がフットマンという、バランスの悪い本なのです。バランスは悪くてもその情報が欲しい人には大変貴重な情報ばかりなので利用していますが、三年以上かけて、また同じ一冊の本に戻ってきたかと思うと、感慨深いです。


もしもこの本を買わなかったら、今の同人活動はありませんでした。多分。


また、新刊は「メイドさんの結婚」と題して、物語や事実の中から、メイドさんの結婚事情を紹介します。他にも「主人との絆」や、今までに書ききれなかった情報を追加していきます。使用人という世界の衰退については、その次でフォローします。あと2冊で使用人についての本が終わると思うと、長いようで短かったような気もします。


前回の目玉は『MANOR HOUSE』でしたが、今回はフットマンの手記、メイドの手記など、研究書で紹介されていた原資料に基づく内容が増えていきます。その分だけ生き生きとした描写が多く、読んでいて楽しいです。


物語部分は一切進んでいませんが、夏に向けて頑張ります。


関連するコラム

・英書:『THE COUNTRY HOUSE SERVANT』

・募集中:イラストレーター

2005-04-29 ペーパー作ります

[]帝國メイド倶楽部向けに何か

毎回毎回、何かしら「これだ!」という英書を見つけ、その翻訳の抜粋を本巻の合間に出していましたが、今回は哀しいぐらいにネタがありません。制服系の資料(制服学部メイドさん学科で紹介されていた絶版本・英書)はあるのですが、整理するのが大変で、諦めました。


珍しいところでは去年の没ネタ「使用人による玄関での応接方法」なるマニュアルもあります。これは、「家にいても不在という権利がある」とか「この人だったら通していいよ」など、社交ルールにうるさかった当時を反映して、玄関で来客の応対に当たる使用人へのマニュアル本です。ただ、19世紀の文章なので正直なところ冗長で読みにくく、翻訳に苦闘して途中で匙を投げました。


「役立つもの」でかつ、「高いレベル」でなければならないと思いつつ、短編小説ならばコピーするよりオフセットのほうが安い、しかし印刷所は間に合わない、イラストのお願いもしていない……という状況下、「『エマ』ユーザ向けに何か紹介本……」と考えたのですが、このところ、『エマ』が盛り上がる以前から興味を持っていた「リピーター」の人向けに、あまり尖ったものを出せないでいます。


そこで、『AVOID BEING A VICTORIAN SERVANTS!』の冒頭にある、メイドについての解説を簡単に翻訳しようかと思いました。分量的にペーパー1枚で済ませます。ある種、『MANOR HOUSE』のRuleの焼き直しに近いかもしれませんが、メイドの仕事と価値観が端的に示されている文章ですので、コアな人でも初めての人でも読める内容かと思います。


「作れるもの=読み手が喜ぶもの」とは必ずしもいえませんが、一冊によくわかりやすくまとめられている同書への関心が高まるのを期待して、明日に翻訳を済ませます。なんとなくの勢いで作ります。50枚ぐらい配布する予定です。

2005-04-28 チャーチル

今日も午前様でした。


GW中はほぼ出社することになりそうなので、6月まで暇になれそうもないです。休日出社の分はコミケの当落通知が来るという05/28以降に消化しようと計画中です。


[]映画『戦争と冒険』

この前の04/26、テレビ東京にて『戦争と冒険』というチャーチルを主人公にした映画をやっていました。新聞で知ってビデオに撮っただけなのでまだ見ていませんが、ボーア戦争に従軍した頃だそうです。


なぜヴィクトリア朝と関係するかといえば、チャーチルはヴィクトリア朝の生まれなのです。そして二十代の頃にエドワード朝も経験しているので、「ヴィクトリア人」と考えていいのかなと。ボーア戦争についてはほとんど何も知りませんのでこれを機会に、少し目を向けようかと思います。確か、アガサ・クリスティーのお兄さんもこの戦争に従軍していたかと記憶していますが、定かではないです。


貴族の息子なので使用人とも縁のある人です。ナニーとのかかわりについては、『英国カントリーハウス物語』にエピソードが出ています。彼は情愛深い使用人に育てられていました。


英国カントリー・ハウス物語―華麗なイギリス貴族の館

2005-04-24 『英國戀物語エマ』第四話感想

[]『英國戀物語エマ』第四話

果たして毎週続けられるのか疑問ではありますし、詳しくないネタも増えてきました(車やテニス)ので、やや疲れ気味でもありますが、作品の中に織り込まれたヴィクトリア朝的な描写や要素についての解説などを行います。



描写の解説面で説明の都合上、描き方に踏み込んでおります。まだ見ていない方はネタばれになるかもしれませんので、ここから先は読まないようにお願いいたします。


ハイドパークスクリーン



と正式には言うんですね。知りませんでした。近くにあるアプスリーハウス(ウェリントン公爵のロンドンの邸宅/ロバート・アダムが設計)に気を取られ、正面からの写真は忘れていました。


元々、写真に写っているハイドパークスクリーンは王族専用の門だったそうです。そして手前の土の道が、ロットン・ロウ(route du roi:王の道)です。


この門は、エマさんとウィリアムが散歩をした時に通過しています。他に目立つものといえば『ネバーランド』にも出てきた(はずの)アルバート公の像ですが、時間が無かったので見れませんでした。


ミューディーズ

なぜかタイトルに。


そこが大事なのでしょう。


ミューディーズとは貸本屋です。詳しい資料は、『図説ヴィクトリア朝百科事典』P.133〜135に掲載されています。「1821年にはイギリスに1500の貸本屋があった」り、年会費が他の貸本屋より安かった(年1ギニー:1ポンド1シリング)、とのことです。


年会費1ギニーですと本を一度に一冊までしか借りられないですが、年2ギニー支払うと三冊まで借りられたことから、ケリーは読書に熱心な人だったようです。ここで驚くべきは、エマさんは原作と異なり、本を借りる時に「私のカードで」と言っています。ミューディーズの会員になっていたのです。ケリーが会員にしてくれたのでしょう。


使用人は運さえよければ、様々な機会に恵まれました。ある男性使用人は、フランス語の家庭教師に教えを受ける機会を自ら設け、スキルの幅を広げました。以前書いた『Below Stairs』(ASIN:0745102964)のMargaret Powellも、主人の「厚意」で劇を見に行くことが出来ました。但し、彼女の場合、「いい席過ぎても、使用人の格好だから目立っていい迷惑」ぐらいの勢いでしたが、「洗練された暮らしをしたい」上流階級の人々にとって、接する使用人にも「洗練されていて」欲しかったのでしょう。


さて、今回出てきたのは、ニュー・オックスフォード・ストリートにあったミューディーズ本店です。蔵書百万冊を超えた当時の様子を、同書に掲載された写真で知ることは出来ますが、『エマ』の世界も忠実にその当時の様子を再現していました。


『エマ』の時代、1890年代には貸本業界の勢いは衰え始めていたそうです。今日描かれていたのは、最後の華やかな風景なのかもしれません。


ウィリアムたちが読んでいた本に近い内容の本(フランスの高級娼婦の写真集)は、多分、『100年前のパリの夜 100年前シリーズ』(ASIN:483730723X)で雰囲気を感じ取れるのではないかと。紹介されている女性たちが「踊り子、歌手、女優」なので違うところも多いですが、百年前の女性が写っています。


ついでに、同じシリーズで『百年前のロンドン』(ASIN:4837307205)の写真もあります。興味のある人にはオススメの一冊です。


詳しくは『図説ヴィクトリア朝百科事典』の参考文献にあげられた、『イギリスの貸本文化』を読むのがいいのかと思いましたが、絶版でした。


掃除するメイドさん

ハウスメイドが掃除する風景を描く、そうした『エマ』の風景をきちんと扱っています。エマさんはケリーの家で絵画にもはたきをかけていましたが、屋敷によってはそうした行いを禁止しました。メイドの中には、絵画の価値をわからず、強いブラシでこするような者もいたのです。


シナリオ

ミューディーズへの導入が原作と違っていましたし、テニスの話もオリジナルで、2巻と混ざっている感じですね。オリジナルの雰囲気を大事にしながら、いろいろとアレンジしています。まだケリーが怪我をするエピソードが無いのですね。


上流階級の過ごし方

実はこれを知りたくて同人誌を作り始めたようなものなのですが、使用人の世界の面白さに魅せられて、集めている資料を全然読んでいません。あの三人娘の二番目の娘は、人が言ったことを繰り返すところが、いかにもお嬢様っぽくて不思議な感じですね。音になると特に。


テニスは一応、中流階級にも普及していたそうです。


キャラクター

コリンの描写はさすがにやり過ぎです。ずっとこの展開なのでしょうか? あと、エレノアは顔が平面的に描かれているというか、バランスが安定していないようです。髪の編みこみの描写は最高ですが。全体にキャラクターのアップが弱いような感じがします。原作よりもやや強く出している感情表現に、絵の表情がついていっていないような……


ウィリアムとエマさんの距離感も、原作よりぎこちない感じがします。


さりげない描写

夜、眠る前に髪をほどくエマさん。その音まで再現していて、効果音へのこだわりはかなりのものです。そしてベッドに腰掛けるという、ほんの短いシーンでも、きちんとスカートを持ち上げる、エマさんの性格を示すような描写、こだわっています。


関連するコラムなど

・細かい道具の解説はこの本で:『図説 ヴィクトリア朝百貨事典』

・眼鏡をかけたメイドが屋敷掃除をする映像も:『MANOR HOUSE』

・第一回目の感想はこちら

・第二回目の感想はこちら

・第三回目の感想はこちら

2005-04-23 委託決まりました

[]委託をお願いすることになりました

送付した同人誌が無事に審査を通過しました。発行が比較的新しい=初期に比べて完成度が高く、納得して送り出せる3巻と4巻を委託することで決まりました。委託先は『とらのあな』になります。


3巻:メイドさん前編(家政編)750円:A5:108P

4巻:メイドさん後編(料理編)500円:A5:100P


値段設定はいろいろ考えましたが、同人誌即売会と同じ値段にはしたくなかったので、即売会価格の1.25倍にしました。委託する場所が増えた、というのはありがたいことで、今まで個人的事情で通販をしておらず、「わざわざ東京の同人イベントに行けない(交通費+ホテル代)」と考えていた人に向けての効果は大きいと思います。


どれだけ数が出るのかさっぱりわかりませんが、正式に頒布が始まりましたら、再度、ここに記します。『とらのあな』の対応はとても丁寧で迅速で、驚きました。


内容については、過去にも書きましたが、『エマ ヴィクトリアンガイド』と戦える(KO負けでも1回はダウンを取れる、もしくは一緒に戦える)レベルだと思っています。


自分の思い描くヴィクトリア朝は、「ゴシック」でも「スチームパンク」でもないです。過ごしやすい風景、田園の世界、宮崎駿的(十分スチームですが)な風景を理想としています。あぁいう世界の道具立て、背景描写、資料収集の仕事とかをしてみたいですね……


関連する情報など

『ヴィクトリア朝の暮らし』シリーズ紹介文

(4巻の紹介文は明日にでも作ります。)

とらのあな


2005-04-22 予想外にいい本でした

[][]『Avoid Being a Victorian Servant! 』



キワモノっぽい絵ですが、最近発売されたばかりのヴィクトリア朝使用人に関する資料本です。予約段階で購入しましたが、届いた本は……


主人公は『シャーリー』よりも年下の12歳の少女、イギリスの労働者の娘です。その娘である「あなた」が、使用人として働くことになる、という子供向けのイラスト満載の生活誌本です。


子供向けと侮ってはいけません。厳しい現実も容赦なく伝えています。可哀想で健気で、なんだか物語を書きたくなりました。


ほろっとして、子供も大人も楽しめます。


メイド以外にも同様のシリーズがあり、他の本も面白そうです。


詳細な解説はこちらに記しました。

Avoid Being a Victorian Servant!


『エマ』でヴィクトリア朝メイドに興味を持った人には、向いているかもしれません。デフォルメされた絵に反して、リアル路線です。

2005-04-19 情報サイトらしきことをしてみます

と昔書いておきながら何も変わらず。というのもなんなので、たまには書いていきます。


[]英国式幸福論

元々、visitbritainという英国公式サイトがあり、その中でさらに特化されたものとして、英国政府観光庁による『英国式幸福論』というサイトが立ち上がっています。ブログも始まっているみたいです。以前は赤坂に観光庁の出張所があり、発行物を貰いに行きました。


スポンサーが笑ってしまうほどすごいですね〜。それにサイトオープンのプレゼントも。こんなスポンサーが欲しいです。


ついでに、

[]イギリス

以前、メイド喫茶を訪問するというコラムを掲載したAll About。今回はそのまま「イギリス」というテーマがスタートしていました。


[]電脳メイドしづ子20GB

メイド系ニュースサイトとして不可欠な存在ではありますが、『英國戀物語エマ』の解説をご紹介いただいています。ありがとうございます。今回は『帝國メイド倶楽部』に直接参加されるとのことで、新刊を楽しみにしています。




[]Luv-Parade

『M.O.E』でお世話になったきっしーさんのサークルも『帝國メイド倶楽部』(&コミティア)に参加されるとのこと。『M.O.E』の増刷も決まり、久我の所でも置かせていただきます。最新のコラムで、「メイド服と主人の考える格式について」を記されております。興味のある方はどうぞ。


そして悪の鎧を装備したホビットへのコメントを広げていただけてことがただ嬉しいです。


[]メイドのヘッドドレスはいつ登場したか?

きっしーさんのコラムで思い出したのですが、コミケットスペシャル4で、話をした方から「メイドの頭にある装飾的なヘッドドレスはイギリスではいつぐらいに広まったのですか?」「あれは日本的なアレンジですか?」と質問され、明確な回答が出来ませんでした。確かに多くのメイドは「キャップ」着用でした。時間を見て調べてみるつもりです(といっても当時の写真や絵を見るだけですが……)


今のところ、自分の知る限りでは、『制服学部メイドさん学科』の阿羅本さんの「メイド服飾史学解説」の4.0「最後に:ヘッドドレス」についてに詳しく説明がなされています。同人誌という性質上、また確かまだ入手できたはずなので引用は行いませんが、そちらに「キャップ→カチューシャ的なヘッドドレス」移行のプロセスが記されています。


可能であれば、そちらで使われた参考文献も入手しようかと思います。この点、『エマ』におけるキャップの描写を見ると、すんなりと納得できます。


結局、いつものような終わり方に……

2005-04-18 帝國メイド倶楽部参加サークルリスト公開

[]『名探偵ポワロとマープル

今日は『ダベンハイム失踪事件』でした。先週からずっとひたすらにDVD『名探偵ポワロ』を見続けていましたが、第一期にはこの事件も入っています。アニメの30分番組では構成が難しいですね。駆け足過ぎて。


イギリスのドラマ版を過去に見ていた頃は日本語(熊倉一雄さん/富山敬さん)でしか聞いていませんでしたが、今回は字幕つき英語で見ています。そこで気づいたのは、ジャップ警部が「Chief inspector」と呼ばれていたことです。ジャップ主任警部、だったんですね。それに、ポワロの存在感は最高です。


「クリスティ紀行」はイギリス・ダートムア・プリンスタウンにある刑務所でした。元々は捕虜収容所で、1850年代に刑務所になったと。イギリスで有名なのは「ミルバンク刑務所」でしょうか。当時のロンドン地図を見ると、五稜郭のような不思議な形の建物があります。それがミルバンクです。ここを舞台にした小説を読みたいならば、サラ・ウォーターズの『半身』がオススメです。


半身 (創元推理文庫)


また、当時の風景を描いたドレの絵には、ニューゲイト監獄のイラストも出ています。こちらは、『ドレ画ヴィクトリア時代のロンドン』(ASIN:4390603809)に詳しく出ています。


[]帝國メイド倶楽部・六参加サークルリスト公開

詳しくはこちらで。

http://www.costumecafe.com/maid/index.html


どういうジャンルわけなのかわかりませんが……


見たところ、150サークルぐらいです。


持ち込み部数は絞って……と思ったものの、前回のコミケットスペシャル4、コミケ67と部数を読み違え(読み違えるのはいつもですが)、完売が続いたので、なるべく多く持って行きます。去年は1種類辺り35冊前後で出ていました。ただ、委託をしたコミティアの直後だった効果も大きかったので、どう読みましょうか?


(追い風要因)

1:『エマ』アニメ化(ジャンル人口の拡大/知識への欲求/認知)

2:『M.O.E』への参加(当サークルの認知)

3:コミケ67とコミケットスペシャル4での完売(一定数の読者層)

4:参加サークルが多い……と思います。(弱気)


(不安定要因)

1:大型連休であり、同人イベントに来ない。

2:コスプレへの関心が他イベントより高く、普通の同人誌では難しい。

3:去年と同じ課題だが、そろそろ新規開拓は無理では?

 『ここ最近の読み違えによる、大量お持ち帰りイベント』

 ・コミティア67/コミケ66/コミティア71委託

4:新刊が無い。(=新規・完売への対応が今回の目的)


(読み)

・去年よりも売れるかもしれない。冬コミ新刊はやや多く?


あと、ついでというのか、イベントにお越し下さって希望される方1名に、重複して買った『THE VICTORIAN HOUSE』(8.99ポンド)を差し上げます。ハードカバーとペーパーバックでタイトルが違うので買ってしまいました。二冊あってもしょうがないので、興味のある方は声をおかけ下さい。

2005-04-17 『英國戀物語エマ』第三話を見る

[]『英國戀物語エマ』第三話

作品の中に織り込まれたヴィクトリア朝的な描写や要素についての解説などを行います。


今回も原作を大事に、少しコリンや家族の比重を高めつつ、丁寧にロンドンの街並み(タワー・ブリッジ、エロスの像、リージェンシー・ストリート?)を描いていました。原作のテンポを保ち、本当にいい仕事をしています。


描写の解説面で説明の都合上、描き方に踏み込んでおります。まだ見ていない方はネタばれになるかもしれませんので、ここから先は読まないようにお願いいたします。


アイロン

有名な話ですが、当時、インクを乾かす為に、執事やメイドは届いたばかりの新聞にアイロンを掛けていました。主人の手にインクがつかないようにする、というのですが、実際のところ、インクがアイロンでにじんだりしなかったのか、興味深いところです。


今回、『エマ』の中で描かれていたのは、朝の光景です。この部屋でメイドがアイロンを掛けていたり、リネンを運んでいたので、いわゆるリネン室かアイロン室、だったのでしょう。


当時のアイロンには種類が幾つもありますが、例えば「中に石炭を入れる」ものや、「鉄製のストーブに載せておき、分厚い鉄や中の金属を暖め、その熱を利用する」など、いろいろなアイロンがあります。以前、『なんでも鑑定団』にこのイギリスの古いアイロンを持ち込んだ人がいましたが、残念ながら、数が多すぎ、骨董的な価値は無いそうです。


また、1970年代の使用人ドラマ『Upstairs Downstairs』や、19世紀の暮らしを再現した『THE 1900 HOUSE』のいずれの映像でも、メイドさんは「唾」を飛ばして、アイロンの温度を確かめていました。そのまま服にアイロンを掛けていましたが……


二種類の階段:表階段と裏階段

屋敷には二種類の階段が存在しています。ひとつは主人たちが使用する階段。こちらは豪奢で絨毯が敷かれ、主人たちは自由に往来します。その一方、使用人が使用することは原則的に許されませんでした。


使用人たちがどこを使っていたか、それが裏階段です。裏階段は表の階段とは幾つも異なっています。非常に急であり、狭く、床も絨毯で覆われてはいません。


ここでは、第一に主人たちが使う水、お湯や石炭を運ぶのに使ったり、洗面した水やチェインバーポット(おまる)などを持ち出すのに使用しました。そうしたモノを運んでいる姿を主人たちに見せるわけにはいかなかったのですし、汚す可能性の高いものは、こちら経由でした。


第二に使用人自身がほとんどの場合、こちらの階段で移動しました。ヴィクトリア朝において、使用人(特にハウスメイド)は「Unseen」「Unherad」、つまりその姿を主人たちに見られてはならない、声も聞かれてはならない存在でした。彼らが表階段を利用するのは掃除をする時や、主人たちの用事を果たすとき、或いは手紙や食事や紅茶を持っていくときなど(今回は新聞)、制限されています。


極端な例ですが、エドワード朝の屋敷での暮らしを再現した『MANOR HOUSE』では、メイドと女主人がすれ違うとき、メイドは女主人の顔を見ず、壁の方を向いて、道を譲りました。ルールとしてそのように定められていたのです。


このように、階級差は屋敷の中に厳然と存在しました。ただ、これは使用人の目からプライバシーを守る手段の一つだったとも考えられます。使用人に自由に歩き回られては、窮屈に思えたかもしれないのですから。


フットマン

ハキムというと、ある特定の世代の人々にとっては「筋肉質なホビット」という、トールキンに怒られそうなキャラクターが思い浮かびますが(ゴグレグは最高です)、『エマ』においてはインドの王子様です。今日が初登場、最初こそ古川登志男さんの声に聞こえましたが、違いました。


ここまで書いておいてハキムとほとんど関係ない話題ですが、ハキムの来訪をウィリアムに告げた人が、変わっていました。1巻ではスーツ・ネクタイの秘書のような人でしたが、アニメ版では使用人・お仕着せ着用のフットマンになっていました。こうして1巻を振り返ってみると、初期、ウィリアムの家には、フットマンらしき制服を着た人は描かれていなかったようです。


フットマンには様々なエピソードがありますが、彼らは複数名が手記を残しており、その生活はいずれも華やかです。それだけ、彼らを雇えるような人々は裕福だった、という裏づけになるかもしれません。(手記を残したのは全体のほんのごくわずかに過ぎませんが)


以前にこの日記内で取り上げたFrederic Gorstの文章の中には、あるメイドに思いを寄せていたものの、裏切られたなどというエピソードも記されています。こちらの資料とフットマンは、次回、5巻で扱います。


馬車

ウィリアムの屋敷には「厩舎」があり、複数台の馬車を所有しているようです。馬車を所有できる人は限られますし、その維持費は大きなものでした。所有しているだけで、ステータス・シンボルになりました。


小説版や『エマ』1巻では、この辺りは微妙な感じで、貸し馬車を雇っている描写もあり、屋敷の馬車が出払っていたり、目的地や用途で使い分けていたのでしょうか。


馬車を雇うので有名なところでは、ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』でしょう。ハンサム・キャブを雇い、出かけていくホームズのシーンはとても印象的です。『名探偵ポワロ』の時代には、「タクシー」に変わりました。


さて、自身の馬車をロンドン市内で使えた人々は、社交のシーズンにはその姿を顕示する為、ハイドパークのロットン・ロウ(王の道)などに馬車で出かけました。そうした姿は『エマ』4巻第24話「雨のロットン・ロウ」にて描かれています。


主役はエレノアと、彼女の姉モニカ。エレノアは友人と馬車に乗り、モニカも自身の馬に乗り、艶やかなその姿を披露しています。他に、映像では、後のエドワード七世、時のプリンス・オブ・ウェールズの愛人だったリリー・ラングトリーを主役にした『Lillie』では、この馬車道の描写が繰り返されました。王子と共に颯爽と走るLillieは正に、社交界の勝者でした。


馬車には刻まれた紋章によって社交上の優劣が存在し、成り上がりの人々は貴族などに道を譲らなければならなかったことでしょう。当時の馬車や、そうしたルールについては『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたか』が詳しいです。


余談

細かいところは色々とあるかもしれませんが、歴史ではない、というところさえ忘れずに、楽しめればいいかと思います。当時の価値観は多種多様、資料に残っていないからといって、間違っていたとも限りません。


自分自身、上のように解説文を書いていますが、過去に作った同人誌の内容では、訂正や書き足ししたいところもとても多いです。知らなかったことや当時はわからなかったことなど、本当にたくさんあります。今でも学べば学ぶほどに、自分が知らないことが多いと、知らされることばかりです……


関連するコラムなど

・書籍:『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたか』

・映像:『MANOR HOUSE』

・第一回目の感想はこちら

・第二回目の感想はこちら

2005-04-16 初めて

[]メイド喫茶に

午前中の用事を終えてから、今日は友人がPCを買うというので秋葉原に行きました。中学ぐらいの頃は自転車で行ける距離にいましたし、初めて秋葉原で買ったソフトは『ファンタシースター』。その後は出来立てのソフマップでPC98を買い、楽しんだ高校時代へと続きますが、よく言われるように、いろいろと変わりました。



いろいろな店でPCを見て、さらに本やDVDソフトを捜しながら歩き回り、やがて「どこかで休もう」という話になりました。友人のひとりがそこでおもむろに取り出したのは、メイド喫茶の地図でした。


しかも、3店分。


今まで一度も行っていなかったのですが、唐突に行くことになりました。混雑していたので少し待ちましたが、普通の喫茶店です。夜は感じのいいBARみたいな雰囲気になるのでしょう。メイドさんはいますが、「いるんだなぁ」と、あっさりした感想を抱いた、初めての訪問でした。これぐらいの雰囲気がちょうどいいのかもしれません。


それともイベント会場でメイドコスプレをあまりにも見慣れているせいでしょうか? さすがに様々に同人イベントに参加して、お客さんとして来て下さった方ともお話したりしているので、多分、初めて行く人よりも「驚き」は無かったかと。とはいえ紅茶を注いでもらう時は、「なんかいいなぁ」と思いましたが。


値段は良心的、混雑時の対応もてきぱきしていて、一般的な喫茶店と同じかそれ以上に、寛げるお店でした。


[]帝國メイド倶楽部六向け新刊は放棄

忙しくて時間を確保できず、イベント向けの新刊は無理でした。印刷所に間に合わせられそうも無いですし、コピー本を製本する根性も無いです。元々コミケがメインなので、毎回の新刊を期待されていないと思います、ということで粛々と同人作業の整理をします。


一応、コミケから受付通知のハガキが来ましたので、受かっていれば夏コミには参加します。基本的には男性使用人+今までに書けなかったメイドさんの話(主人との関係、結婚、個人生活など)を主軸に構成します。今は地道に資料を読み直しており、どこに何があったかを思い出す日々が続いています。


多分、今回の夏コミ『エマ』のアニメ化で、ジャンルそのものが過去最高の盛り上がりになるのではと予想しています。『エマ ヴィクトリアンガイド』の発売で資料本への関心も高まった2003年年末以来の、大きな動きがあったら……いいなぁと思っています。『M.O.E.』への参加で、今までと違った読者層にもアプローチできていれば、理想ですね。


あと、同人ショップの営業の方からお声がかかり、検討していた委託については申し込むことにします。但し、店側が水準に満たないと判断すれば断られる可能性もあるので、絶対ではありません。この辺り、事務手続きが完了次第、結果について報告します。


2005-04-11 63歳と65歳のメイドさんの話(イギリス)

[]『名探偵ポワロとマープル

一昨日ぐらいからイギリスドラマ版『名探偵ポワロ』を見ていますが、今日のアニメはドラマ版の第四話に該当する、『24羽の黒つぐみ』でした。アニメ版のシナリオ展開はどうでもいいのですが、もうすぐアニメが終わるからか、メイドさんがふたりも出てきました。これはスタッフからのサービスでしょうか?


追記:そういえばレストランの店員もメイドさんの格好をしていましたね。


[]『Below Stairs』(ASIN:0745102964)

『24羽の黒つぐみ』の話には、ある老人に長い間仕えていて、死後に何も貰えなかった使用人が出てきます。そんな使用人は意外と多かったと思いますが、かなり悲しい話もあります。


メイドとして働いていた女性Margaret Powellの本『Below Stairs』を読んでいますが、彼女が働いた職場の一つで、もっと悲惨な話があったのです。ヴィクトリア駅の近くのある家庭に短期間の就職をしたMargaret Powellは、そこで先輩のハウスメイドとパーラーメイドに出会いますが、彼女たちの年齢は……63歳と65歳だったのです!


転職するにも受け入れ先が無いこと、そしてそんな年齢になるまでなぜ働いているのか。人生の分岐点を逃した彼女たちに、今回の遺産の話が関係します。


彼女たちふたりのメイドはいつからかはわかりませんが、25年間、子供のいない女主人の元で働きました。女主人から、「私が死んだら、使用人を辞めるのに必要なお金や家を残してあげる」と言われ、その言葉を信じて……


しかし遺言は存在せず、女主人の血縁が家を相続し、売り払ってしまいました。ふたりのメイドは三か月分の給与を、その後継者の温情で貰えましたが、それだけでした。


「こんな辛い環境で働くのは、遺産を貰えるから……」と、転職をせずにひとつの現場に留まり続け、結局、人生の可能性を失ったメイドの話は、あまり他人事で無いかもしれません。現代人も終身雇用制が壊れつつある世の中、必ずしも一つの会社で働き続けることが将来の安定を意味しない、のですから。


尚、この参考文献は『エマ ヴィクトリアンガイド』の村上リコさんが自身のサイト内でふれていた本です。Margaret Powellという女性はいわゆる下町的な育ち方で気が強く、使用人としての運命を甘受せず、常にそこからの脱却を考え、主人たちを軽蔑していた、と思えるようなガッツあふれる人です。


今まで同人誌では「就職」「転職」の観点で物を見ていましたが、「離職」について、彼女の自伝は面白い内容が多く、夏の新刊で使おうかなと思っています。また、彼女は比較的新しい世代であり、第二次大戦前、大戦後も、テンポラリの使用人の仕事をしており、その意味でも資料としての価値は高そうです。


侍女―エリザベス・B・ブラウニングに仕えた女性

過去に読んだ『侍女』の中に、当時のメイドの妊娠後の対策が出ていましたが、多分、その創作の元ネタはこの本では無いのかという描写も出ていました。ひとまず、「有名人の資料」として押さえておくべき本の一つですね。


関係ないですが、去年の今頃、『MANOR HOUSE』に出会っていました。


http://d.hatena.ne.jp/spqr/20040415

時間が経つのは早いですね。


村上リコさんのサイト

・テキスト:最大多数派?の女の子たち

2005-04-10 『英國戀物語エマ』第二話解説のようなもの

[]『英國戀物語エマ』第二話

先週に引き続き、細かい背景描写の解説などを行います。


描写の解説面で説明の都合上、描き方に踏み込んでおります。まだ見ていない方はネタばれになるかもしれませんので、ここから先は読まないようにお願いいたします。


正面玄関の使用

コミックビームのCMはひどい出来です。


というのはさておき、一般的に使用人は正面玄関を使えません。19世紀末期にフットマンとして働いたFrederic Gorstは初めて勤めに出たとき、正面玄関から入ろうとして、出迎えに出た執事から、「裏口」を使うようにと、先導されていきます。


同様に、20世紀初頭エドワード朝のカントリーハウスでの生活ドキュメンタリー『MANOR HOUSE』でも、同じような描写をしました。玄関はあくまでも「主人たちの世界に通じる」扉であり、屋敷で「過ごす」(暮らすではありません)使用人は使えなかったのです。


使用人として働く人にとって、階級の壁を感じるのは、この辺りの出来事です。


とはいえ、すべてにおいてそうではない、というのが現実の姿です。『エマ』のように使用人がひとりしかいないところでは利便性が重視されたり、それを気にしない主人もいたかもしれないからです。


ケリーの住む屋敷のキッチンは「地下」ではなく、「1階」にあるようです。(第一話で『エマ』が手紙を書いている描写から判断)なので、地下を使用人用のスペースとして使っているのではなく、倉庫として使っているだけかもしれません。だとすると、地下へ通じる使用人用の階段は無い、とも判断できます。


ヴィクトリア朝中流家庭を再現した『THE 1900 HOUSE』も、地下は使っていませんでした。メイドさんのエリザベスも、普通に毎日、正面玄関から通っていました。


世間体を気にする、ということが重要だったヴィクトリア朝において、使用人が正面玄関から出入りするところを他人に見られるのは、望ましくなかったかも知れません。そもそも、使用人と混同される可能性がある、という意識が、制服の着用、地味な外出服を押し付けた事情もありますから。


舞踏会

盛大な舞踏会はBall、と言います。バッキンガム宮殿にもこの専門の部屋Ball Roomがあり、見学したときには、ヴィクトリア女王の着用したドレスが飾られていました。身長は140cmぐらいだったのではないでしょうか? かなり小さなものでした。


今回は、舞踏会はそれほど細かく描かれていませんでした。


自分自身はあまり詳しくないですが、エドワード七世の愛人だった女性を主人公にした『Lillie』や、政治家の妻であり舞踏会を主催した『ダロウェイ夫人』、それに出征前の陸軍軍人のパーティがあった『サハラに舞う羽根』、映画ではその辺りに描写があったかと。


ダンスで言うと、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』が目立ちますが、こちらはヴィクトリア朝よりも前、雰囲気は違っています。ダンスの時に着用していたドレスは、やや新しい様式なのではないでしょうか?


実際はどうなのかわかりませんが、うつむいていたエレノアが顔を上げた拍子に、イアリングの澄んだ音が静かに鳴った、そんな描写は好きですね。


傘屋さん

映画『ハリー・ポッター』の魔法の杖の店や本屋の描写が好きな久我としては、この傘屋の描写はたまりませんでした。確か、NHKで『ハリー・ポッター』の特番を組んだとき、荒俣宏さんが、傘屋さんに入っていましたが、それを思い出しました。


撮影には失敗しましたが、ヴィクトリア&アルバート博物館の近くに暖炉やキッチン周りで使う道具屋さんがありました。あれなどもそのまま残っているお店なのでしょう、多分、英国取材の成果なのではないかと思います。


ヴィヴィアンとその服装が可愛いですね、というのはさておき、店を訪問したエレノアの傍に、彼女の侍女も一緒に描かれているのはなかなかいい雰囲気です。当時の「リスペクタブル」な若い女性は一人で外出せず、お目付け役というか、使用人を同行して、外出していました。


侍女なので、それなりにいい服装をしていました。


使用人との距離が近ければ一緒に、今回のケースでは入り口(内部)で控えて待っていたのでしょう。過去に見たイラストでは、フットマンが店舗の入り口に集っているものがありました。


そういえば、過去に古本で『傘の文化史』を買っていました。まだほとんど読んでいませんが。

アンブレラ―傘の文化史


キッチン

キッチンを掃除するエマさんの描写も、キッチンが大好きな自分としては、嬉しいです。石炭レンジに石炭を投じるところ、炉の格子に鉄棒を入れて、灰を除いて空気を循環させる調節方法も、『THE 1900 HOUSE』を参考にしたのかと思いますが、普通のアニメでは絶対に描写されないでしょう。


シナリオ

今回は原作に無いシナリオ構成をしていましたが、「原作にあってもおかしくない」、「森薫先生が見たかったのでは?」と思える描写があったように思えます。ただ、ウィリアムの価値観(日傘を使用人に与える、という感覚。想像力に欠ける残酷さ)が、強すぎたのかなとも思いました。


日傘だけ立派、服装は使用人らしく簡素なもの、というのでは、全体のバランスが著しく悪くなってしまうような。詳しく無いのですが、階級的な指標としての役割もあったと、読んだことがあります。


あまりにも、「使用人」という立場を、ウィリアムが理解していない、というふうに感じます。原作では荷物を持つような真似もしませんでした。やや、ウィリアムを現代的に描きすぎている感じもします。


「エマさんの為になんでもしたい」


そんなウィリアムの盲目な恋を描くためというのはわかりますが、だとするとふたりの距離感が、今のアニメ版の描き方では「生活レベル」の差でしかなく、「階級」という部分には至っていません。


ちょっと難しいところですが、パラソルは使用人が持つような「道具」ではありません。それこそ、無蓋の馬車に乗っていたエレノア向けの道具です。そこに気づかず、「エレノアが喜ぶと言っている、つまり『同じ女性である』エマさんも喜んでくれる」という発想そのものには違和感はありませんし、ウィリアムのあげた日傘を使用人が差している光景をエレノアが見て、ウィリアムにますます興味を持った、というのは流れとして面白いです。


全体には原作の雰囲気を大切にして、きちんと作っているところに好感を持てます。何よりも、あの街並みを歩いてみたい、通り過ぎてみたい、お店に入ってみたい、と言う気持ちにさせてくれるので、いいアニメです。



関連するコラムなど

・ケリーの家の暮らしに興味があれば……

『THE 1900 HOUSE』

・第一回目の感想はこちら

・第三回目の感想はこちら

2005-04-09 久しぶりに

自分の限界まで集中して仕事をしているので、今週は余裕がありませんでした。新刊も怪しいです、というか多分無理です。今の会社に入ってから「自分の限界はどこだろう?」と、真剣に全力で働いていましたが、今時点では、まだまだ行けそうなものの体がやばい、というところにある気がします。健康第一路線に戻そうと、いうところです。


物を書けないので、ストレスがたまります。


[]ドラマ『名探偵ポワロ』

名探偵ポワロ DVD-BOX1

ストレス発散と言うわけでは無いのですが、ようやくDVD第一期を買いました。中学〜高校時代に撮り貯めたビデオテープが死に絶えたので買い直しをずっと検討していましたが、そろそろ頃合かなと、決意しました。


久々に見直していると、全然物の見方が変わっています。


あまりにも、使用人の描写が多いのです。


第一話『コックを捜せ』では、捜されるコックその人がまず使用人です。そして彼女の同僚であったメイドにインタビューする為に、一階から屋敷に入ったポワロは、「階段を下りて」彼女の働く屋敷の「地下」にあるキッチンへ足を運びます。


十年以上前に初めて見た時は何も思わずに流していましたが、「なぜ地下にキッチンが?」という疑問への回答は、使用人の世界を知らなければ出せません。


さらに、再度、屋敷を訪問したポワロが屋敷の表付近の階段を下りて地下でアイロンを掛けているメイドのところを訪ねる場面も、制作者が意図的に使用人世界を描こうとしなければ、描かれないような世界です。


意識しなければ気づかない、けれど、意識しても自然に風景に溶け込んでいる。『名探偵ポワロ』の時代は使用人人口も減少している時代ですが、そうしたイギリスの生活風景を制作者が意識して描こうとしていると言う雰囲気を、感じました。


第二話『ミューズ街の殺人』でも、メイドやハウスキーパーが風景に溶け込んで出演していましたし、第三話『ジョニー・ウェイバリー誘拐事件』ではカントリーハウスが登場します。そこでナースメイドや執事、メイド、運転手などなど、いろいろな使用人たちが、役割を与えられています。


年代を反映して、屋敷での生活が必ずしも贅沢ではなく、ポワロが落胆したように「英国式朝食」も無く、倹約されているという描写もイギリスのカントリーハウスファンには、たまらないです。


あとは、第四話『24羽の黒つぐみ』でも、逝去した老人に仕えていたものの、遺産を何も受け取れず、甥がすべてを持っていってしまったナース(使用人?ハウスキーパー?)の姿がありました。この辺りでも一度ぐらい、物語を書いてみたいですね。



『名探偵ポワロ』データベース


[]使用人の世界

ヴィクトリア朝や文学について自分より詳しい人は大勢いるかと思いますが、メイドや使用人というジャンルは、日本の学者か研究者にとってほとんど未踏の領域です。和書の少なさがそれを物語っています。


日本においてこうした研究のほとんどは文学や女性史、社会史との関わりでしか語られませんが、そうした「別の分野」のテキストで読むのではなく、「使用人という文化/生活風景」として読むことが大切だと思います。


なぜなら、それ専門で書かれていない本は情報を読み取る際に、「こちらから、使用人のテキストを読み取ろうとしなければならない」ことがあったり、「迂遠」だからです。さらに、その筆者に使用人についての適切な理解が無ければ、あまり面白い本にはなりません。


「餅は餅屋」

「使用人の知識は、専門の研究家に」


和書への依存を捨てただけで、世界は限りなく広がりました。イギリスでは、本当に驚くほどの「使用人だけで成立する」研究書が発行されています。


どんな生き方があったのか、どんな言葉が残っているのか、生きていた人間、残っている生活の道具から描き出される、世界が素直に存在していることは、誰か他の研究者の言葉の引用で成り立つ研究書と、一線を画しています。


そこにあるのは、「意見/思想/観念」ではなく、生活の姿です。


人間への興味が、まずあるのです。


誰かの言葉で語るのではなく、そうした世界に関心を持った自分の姿を作品に反映しようとしている森薫先生や『エマ ヴィクトリアンガイド』の村上リコさんを、自分は尊敬していますし、自分自身もそうありたいとは思っています。


2005-04-03 『英國戀物語エマ』放送開始

[]『英國戀物語エマ』第一話

ついに放送開始しました。ストーリーや展開は時間差があることを考慮して、細かい背景描写の解説などを。ヴィクトリア朝を丁寧に、原作の雰囲気を大事にしている、原作『エマ』への深い敬意を感じた作品に仕上がっています。道具類や描写については小説と比較しつつ読むのがいいのかもしれません。


原作ファンには、十分、楽しめるクオリティに仕上げっているかと思います。


描写の解説面で説明の都合上、描き方に踏み込んでおります。まだ見ていない方はネタばれになるかもしれませんので、ここから先は読まないようにお願いいたします。



声優

冬馬由美さんの落ち着いて、しっとりした声がとてもマッチしています。ケリーの中西妙子さんも落ち着いて声に綺麗な響きがあり、いずれも上品な雰囲気を出しています。


外出は外出用の服で

1巻で原作と違うところは手袋のエピソードの扱いでした。1年前にコラムで書いた、『メイドはメイド服で外出したか?』に関わりますが、その辺り、時代考証というか、社会的価値観の面から、「メイド服を着た女性と肩を並べて表を歩く」描写を、避けたのだと思います。


オープニング/白い階段

いつか描こうと思っていた光景です。『M.O.E.』に寄稿した短編小説では、朝の光景を描きましたが、ここを含めるかどうか悩みました。結局書けなかったのですが……


都市の邸宅には、玄関に通じるまでの短い「白い階段」があります。メイドは毎朝、玄関前の鉄柵、ドアノブ、この白い階段を綺麗に掃除しなければなりません。ヴィクトリア朝より後ですが、メイド経験者のMargaret Powellによる『Below Stairs』(ASIN:0745102964)では、彼女がきちんとここの掃除をしているか、女主人は厳しくチェックしていたと記しています。


この描写は、他に『Tipping The Velvet』でも使われました。



なぜこの描写が重要なのかと言うと、あまり外出する機会を持たないメイドにとって、空を、外の空気を感じられる数少ない機会だったからです。そして、自分と同様に、同じ時間、外で階段を掃除するメイドと顔をあわせられた時間でもあります。


メイドを描写する人ならば、憧れる光景です。小説版に覚えた違和感のひとつは、仕事について精密な描写をしながら、この光景を描かなかったことです。


イギリスに行った時、まずこの写真を撮りました。詳しくは『階段の下』:イギリス旅行記1をご覧下さい。


もうひとつ、メイドさんの描写として使ってみたいのは『ダロウェイ夫人』に出てきた、この光景です。

ダロウェイ夫人 (角川文庫)

ともかくも美だ。肉眼に映る露骨な美ではない。純粋で単純な美ではない――ラッセル広場に通じるベッドフォード街。これはもちろん一直線と空虚さだ。一つの廊下の均斉だ。だがまた、明かりのともった窓々でもあり、ひびいてくるピアノ。蓄音機でもある。遊楽の感じがかくれているが、時折それがあらわれるのは、窓が開いたままで、カーテンも閉めていないその窓から、テーブルを囲んでいる一座の人々が、静かに踊っている若い連中が、男女の語らっている様が、ぼんやりと表を見ているメイドが(これは仕事を完成したあとで、メイドさんがかならず付加する奇妙な注釈なのだ)、いちばん上の張り出し棚に乾かしてある長靴下、鸚鵡、いく本かの植木が、見える時なのだ。

『ダロウェイ夫人』ヴァージニア・ウルフ:著/富田彬:訳/角川文庫よりP.260〜261より引用

19〜20世紀初頭のロンドン、街を歩いていてふと顔を上げて、家々の明かりのついた窓を見上げると、街を見下ろすメイドさんの姿があったかもしれないのです。


オープニング/馬車に乗った人々

現在のコヴェント・ガーデンは劇場があったり、市場があったりする観光地として知られていますが、昔は野菜や花を売る市場として賑わっていました。『ヴィクトリア朝万華鏡』第十一章に当時の絵画による情景と、解説が出ています。

市場の活動はちょうどオペラが終って最後の観客も帰路についた頃に始まり、早朝六時〜七時にピークを迎える。周囲の道路は狭く込み入っているので、明け方には野菜を満載した馬車や手押し車が長い列をなしてひしめき合い、その交通渋滞は人々の頭痛の種だった。しかしタキシードやイブニング・ドレスに身を固めた紳士淑女の方が馬車で悠然と到着する頃には、市場はひとけもなく静まり返っているという次第で、実に見事な「棲み分け」と言わなければならない。

『ヴィクトリア朝万華鏡』高橋裕子・高橋達史:著/新潮社P.125より引用

何気なく『シャーロック・ホームズの冒険』で主演を務めたジェレミー・ブレッドが出演していた、映画『マイフェアレディ』(原作はバーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』)の主役イライザ(オードリー・ヘップバーン)が声を荒げていたのも、この場所でした、と上記の本に出ています。


風景の中に織り交ぜられ、生活の中ですべてが繋がりあっている。こういう描写は大好きです。


オープニング映像

花売りの少女と、一転した社交界の映像。見事です。


ネコ

Inside the Victorian Home: A Portrait of Domestic Life in Victorian England

ネコはネズミ対策で必須でした。殺鼠剤もあるにはあったようなのですが、読みにくい本『VICTORIAN HOME』(別名でペーパーバックも出ています。ASIN:0007131895、間違って買ってしまいました……差は巻頭部分の辞書)によると、「毒で殺す→ネズミの遺骸が残る→見えないところなので取れない→そこで腐敗」という流れがあり、結局、衛生的にはよろしくなかったので、ネコを飼って退治させていたとのことです。


手紙

基本的に主人に渡す手紙は銀のトレイに載せなければなりませんでした。知識として知っていたものの、それがどのように思われていたかを示したのは、上記のMargaret Powellです。彼女はある日、玄関から手紙か何かを手で持って運んでいた途中に女主人に出会い、それを手渡しますが、女主人は非常に不愉快そうにしました。


この事件が、Margaret Powellに大きな心の傷を残しました。銀のトレイで渡すのは、「直接使用人と、手で物をやり取りしない」ことを意味したのです。何人も使用人がいる裕福な家庭でのことなので、エマのいるところでは無かったかと思いますが。


三編みエマさん

眼鏡のエピソードで出てくる、若い頃のエマさんは三つ編みです。眼鏡ばかりが注目されますが、こちらのエマさんいいですね。


あと、エマさんが帽子を拾いに行くときの画面移動(ウィリアムの視点)はこだわりを感じました。ひとまずこんな感じで。

関連するコラムなど

・映像:『Tipping The Velvet』

・コラム:『階段の下』:イギリス旅行記1

・映像:『MANOR HOUSE』

・第二回目の感想はこちら

・第三回目の感想はこちら

2005-04-01 もう明日、アニメ『エマ』の放送開始です。

エイプリールフールと言うと、 『電脳メイドしづ子20GB』さんがすごいことに……


[]メイドさんはサラリーマン

『M.O.E』に寄稿したコラムの補筆のようなものです。


メイドさんはよく「神に仕える巫女」的な「奉仕・献身」のニュアンスで強く語られますが、それだけではない、というのが自分のメイド観にありますし、同人誌制作にもそれが反映されています。


責任感を持って仲間と共に働くサラリーマンには、仕事が大変でも楽しいことがあります。残業をしていても、「早く帰りたい」と意識しながらやらされている残業と、「仲間と一緒に残りながら最善を尽くす」残業とでは、まったく違いますが、それと同様のことが、100年前にもあったのではないかと。


サラリーマンには、メイドの心がわかります。

なぜならば、働くという意味では、まったく違いが無いからです。


『M.O.E』に寄稿したメイド小説はどちらかというと、「仕事をやらされていた」「時計ばかりを見ていた」アルバイトの頃を思い起こして書いています。これが一般的なイメージ、そして実情に近いものであるかもしれません。


それとは対照的に、働くと言うこと、周囲から必要とされることを通じて、仕事で満たされた人たちもいたのではないか、やらされる仕事だけではなかったのではないか、個性を発揮できる場もあったのでは、という問いかけが久我の視点です。


何度も引用しすぎていますが、アガサ・クリスティーの言葉に代表される、使用人描写です。

『よくいわれているように、彼らは"自分の立場を心得ている"が、立場を心得ているということはけっして卑屈ということではなくて、専門家としての誇りを持っているということなのだ』
(『アガサ・クリスティー自伝』(上)P.58〜59より引用)


職場に尊敬できる上司もいれば、意地悪な先輩もいるかもしれない。仕事は出来ても人間として尊敬できない、或いは仕事はそんなに出来ないけれども人間としてはその真面目さに敬意を抱ける、職場には色々な人がいて、その人間関係の中で働くことを余儀なくされる。


それはメイドもサラリーマンも同じです。


同人誌の中身も当初は「主人公の貴族とそれに関わる人々の交流=奉仕と献身」を軸にしていましたが、今は「働くメイドさんの姿」「どんな仕事をしていたのか」という彼女たちの姿を描くだけで足りてしまっています。働く自分にとって、先輩なんですね、100年前にいたメイドさんたちは。


……一応、真面目に書いているコラムで、エイプリールフールネタじゃありません。


メイドさんを描くことによって、自分自身を含めて仕事のあり方を考える、硬く言うとそんな感じでしょうか。


いわゆる、ライトスタッフのような世界を描くこと。今書いている短編は、そんなことを意識しながら、作っています。完成すれば、『帝國メイド倶楽部』の新刊にする予定です。


[]近況と今後

この頃は年度末で通常の1.25倍ほど仕事が忙しく、その上、査定審査を受ける準備をしたり、今年度の目標を立てたり、英会話教室に通い始めたりと、大変な日々が続きます……DVD視聴もしばらく止まってしまいました。馬車馬のように働いた使用人の気持ちが少なからず理解できます。


忙しい日々に流されないよう、課題を設定していきます。


4月の課題

1:資料集の拡充(出来れば2日に1コンテンツ)

2:旅行記を週1で更新する。(まだイギリスについていない……)

3:そろそろ新刊に向けて、整理を始める。(アウトライン作成)

4:1日30分以上、ドラマDVDを見る。

5:『帝國メイド倶楽部』に向けて、短編を作る。

6:小説を1本書く。


新年度もよろしくお願いします。


最近の当日記内のオススメ

『エマ』アニメ化記念/英国メイドさんガイドブック・ガイド