不機嫌なメアリー・ポピンズ―イギリス小説と映画から読む「階級」 (平凡社新書)
- 作者: 新井潤美
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2005/05/01
- メディア: 新書
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前回『階級にとりつかれた人びと―英国ミドル・クラスの生活と意見』を読んだ時に紹介した関連本を今更読みました。同じ作者(今は『げんしけん』キャンパスの舞台として知られる大学:久我の母校の先生)なので、『階級にとりつかれた人びと』と視点はほぼ同じです。
前回との相違では、「よりわかりやすい」ことを目的にし、容易に見られる・入手できる「映画」「小説」のひとつひとつをタイトルに、階級差を意識させる部分の解説を深めています。
前回はある事象について関連するものとして参考文献や事例の紹介がありましたが、今回は作品軸なので、その作品を見ることによって、そこに表れる階級意識がわかりやすくなります。本当、あちこちに当たり前のようにちりばめられています。
特に面白かったのは、「使用人も役割を演じる」という箇所です。今回の本はイギリス的階級の象徴としての「使用人」を中心にしており、タイトルの『メアリー・ポピンズ』にも、それが出ています。
また、言葉・発音にどれだけ階級を示す要素があり、それが映画化や翻訳や翻案でどれだけ原作の要素を損なうのか、という部分についても、面白いですね。『英国カントリーハウス物語』には、20世紀のあるイギリス貴族が財産を失い、使用人として働くことになるものの、発音が立派過ぎて「解雇される」などというエピソードもあるぐらいです。
文中に出てきたミットフォードの話は、後日書きます。