ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

入稿終了

今回は印刷所が東京にあるところなので、今日行ってきました。正確には「東京に支店があり、印刷は大阪」でしたが。WORDでのデータ入稿が出来るところは多くないので、助かりました。多分何かしらあるとは思いますが、一区切りがつきました。



WORDレベルでの校正の後、自分でも読んで見ましたが、見つけられなかった幾つかを今回も友人の助けを得て、潰しました。今回は何回かお願いしている河原さんの原稿が郵便局の都合なのか、一日でつくはずなのに間に合わず、次回に使うことになりました。



友人の感想はなかなか好評だったと思います。テーマが「カントリーハウスで働く」、そこに繰り広げられる人間模様、上司との関係、部下をマネジメントする、といった事柄はそのまま現代にも通じるものです。



自分の社会人としての経験や友人から聞く話、新聞やニュースで見る世界を織り交ぜつつ、わかりやすいように解説できたかなと思います。もちろん今回の文章量ですべての解説や、多様な視点を担保できるはずでもないですし、そこに書いてあるものがすべて久我の想いでもありません。



ただ、今回の本は、「働く」という体験をしている人に、百年前の先輩である「メイド」という存在を感じて欲しい、そして自分自身が働くことをメイドさんに重ね合わせて考えてみる機会になれば、そういう意味では今までの同人誌の中で、最も普遍性が高い内容となりました。



結果としてですが。


コミックマーケット69・布陣

前回に引き続き、純メイドジャンルがますます減っています。配置の話ですが、前回の夏はメイドジャンルから離れ、サークルとしては「成長」といえる場所に抜擢してもらいましたが、ジャンル効果が無いと個人的に寂しく、「元のジャンルに戻して欲しい」とアンケートに書いたところ、戻してくれた?みたいです。



隣は『震空館』さん、後ろは『英国メイドさん協会』さん、『MaIDERiA』さんと、ある意味「英国・ヴィクトリア朝リスペクト」メイドサークルが、ここまで揃いました。メイドジャンルの中の、さらに「ひとつのジャンル」として成立するぐらいですね。



メイドジャンルも数こそ少ないものの、夏コミよりもきちんと分類されているようで、他のジャンルにひどく分断されている感じはしませんでした。今回は表紙が強く、ゲストも強い、メイドに関心が薄い友人に読んでもらっての感想でも、ある程度興味を持ってもらえるような「働く」という普遍性のあるテーマ、十分に戦える力はあるでしょう。


使用人と階級的な資料

今回の同人誌では、意図的に労働者階級的な感覚・視点を取り入れていません。自分が詳しくないことを解説するのは難しいからです。学問の領域として広すぎ、またきちんと理解するのは同人誌として進みたい方向ではないからです。



使用人と階級という両ジャンルに興味のある人には以下の本が参考になるでしょう。



『階級にとりつかれた人びと―英国ミドル・クラスの生活と意見』

『不機嫌なメアリー・ポピンズ』



そして、「労働者階級」そのものに関心のある人には、『ハマータウンの野郎ども』(ASIN:4480082964)が興味深いと思います。労働者階級に生まれた人たちが、なぜ社会的上昇の機会を逃すかのように学習機会を放棄し、自らの階級に帰属していくのか。



新潮社の雑誌『FORESIGHT』で書評を読んで買いましたが、「学校教育」についての生徒の価値観、いわゆる問題児の行動、彼らとのインタビューなどは非常に興味深く、面白いものでした。



実際の使用人にもこういう価値観の人は多かったことでしょうが、書くのが難しいんですよね。次回以降に書くつもりではいますが。