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2007-11-10 マリー・アントワネットとメイドの話

[][][]ヴェルサイユ宮殿と縁がある「デイリーメイド」

はじめに

今年の夏に友人とフランスに行っていました。目的としてはパリを歩くこと、美術館巡りだったのですが、ちょうどフランスに行くと決まったとき、何か「今までの自分と縁があるものが無いか」と考えました。


イギリスに行ったときも『エマ』アニメ版・ウィリアムの屋敷のモデルとなったカントリーハウス『Upstairs Downstairs』の撮影地『THE 1900 HOUSE』で使った家など、縁のある場所を訪問したり、イギリスの超人を宮殿に持ち込んで軽く荷物検査されたり、いろいろと思い出が残りました。


で、フランスです。(とりあえずそれっぽい写真を)





『三銃士』も『レ・ミゼラブル』もいまひとつぴんと来ません。時代的には好きな『失われたときを求めて』はまさしくフランスですが、「ゲルマントの方へ」と言われても、どこでしょうか、という感じなのです。あんまりパリに思い入れが無かったのも事実、美術館ぐらいしか知りません。


頼みの綱である超人も思い浮かばず、そうなると『のだめカンタービレ』、『不思議の海のナディア』ぐらいしか思いつきませんでした。(『ベルサイユの薔薇』は除く)



マングース in France




エッフェル塔の少女』(マイナス少女)


そんなときに思い出したのが、昔、同人誌で使ったエピソードです。


マリー・アントワネットにはメイドの経験がある?

実はヴェルサイユ宮殿はメイドとも縁が深い、かもしれないのです。久我の同人誌をお買い求めの方には繰り返しとなりますが(4巻です)、実はこの宮殿に居を構えていたマリー・アントワネットが「デイリーメイド」っぽいことをやっていた(誇張)、というエピソードがあるのです。


 一八世紀は、デイリーが上流階級に最も受け入れられた時期です。この時代、華やかな事例が幾つもあります。


『もしもお前の妻がいつも領地にいて、デイリーにいるのを好むならば、彼女の為に最大限の便宜を図ってあげなさい』(『カントリーハウスのキッチン』)という父から息子への言い伝えだけではなく、イギリスに広がったロマンティックな風潮によって、詩的で美的な要素を数多く備えた「デイリーメイド」とその仕事は、ついには王女の好むところとまでなりました。


 イギリスのシャーロット女王はデイリーにいることに最大限の関心と喜びを持ち、そのスキルを磨きました。そして、イギリスからフランスに渡ったデイリーは、かの地で最大限の賞賛を浴びました。


 一七八三〜八六年、革命で命を落とすことになるフランス女王マリー・アントワネットは、ヴェルサイユに小さな理想的な村を建築しました。そこで女王は侍女と共に、デイリーメイドの役割を演じ、清潔なデイリールームで、イギリスの流儀に従って、乳製品を作っていたのです。


同人誌『ヴィクトリア朝の暮らし4巻 貴族と使用人(三)P.89「デイリーメイド解説」より引用


参考文献『カントリーハウスのキッチン』=『THE COUNTRY HOUSE KITCHEN』(Pamela Sambrook著)です。邦訳と言うわけではなく、便宜上、和名をつけています。


観光ガイドには、マリー・アントワネットがメイドの真似事をした場所が残っていると記されています。ということで、これは行って来るしかないだろう、ということになりました。


ヴェルサイユ宮殿

ヴェルサイユ宮殿はパリから鉄道で30分ぐらいの距離にあって、電車一本で行けます。ただ、あまり遅い時間帯に乗るにはちょっと危険そうな雰囲気な鉄道ではありました。


久我が行った頃はちょうど観光客が多いシーズンだったので、そこそこ安心していろいろな場所にいけました。人が多いのは、たまにはいいものだと思いました。


駅名は『ヴェルサイユ・リブ・ゴーシュ』。いちいち、フランスの駅名は長いです。




駅を降りてから目の前の緩やかな坂道を登り、左に曲がるともう正面に普通にあります。残念ながら宮殿正面が工事中で眺めそのものはあまりよくなかったのですが、噂に名高い宮殿を散策しました。



宮殿入り口では荷物チェックがあります。オルセー美術館ルーブル美術館でも同様に荷物検査がありましたが、中での撮影はいずれの場所でも自由、ということで、スイッチが壊れそうなぐらい、弾けました。


残念ながら、興奮しすぎて手ぶればかりでしたが。


壮麗さで言えば現役のバッキンガム宮殿に軍配が上がりますが、歴史の重み、部屋の数や見学できる場所、それに内部にある礼拝堂、吹き抜け、そして玉座や寝室などはまさしく圧巻です。





興味深いのが1階の長い部屋です。昔の建物は「廊下」が無かったと言いますが、部屋がひたすらまっすぐ続いています。何が興味深いかと言えば、部屋ごとの色彩です。


壁紙とカーテンの色調が、きちんと各部屋で揃っていますし、家具(ベッドやソファや椅子)も、なるべくその部屋の色彩と調和するようにデザインされていました。






これは玉座?



ふと、窓から外を見ると、すごい光景が広がっていました。




「あぁ、これが本物か」


驚くぐらい、何も無いです。まっすぐ、人間によって調えられた生垣が伸びていて、先が見えません。いったいどれぐらいの人手がメンテナンスにかかるのか、想像できません。


広すぎる庭園




空が広いです、本当に。


そして緑が美しいです。




で、目的地はこの先にあるのです。


デイリーメイドの部屋は遥か遠く

ヴェルサイユ宮殿から庭園に出て、ひたすらに歩いて、ようやく離れの大トリアノンにつきます。バスもあるようですが、歩きで行く方は覚悟が必要です。20〜30分ぐらい歩きます。


観光ガイドには書いてませんが、ここまで来ようと思う女性は、ハイヒールでは絶対行かない方がいいです。鉄道で簡単に来れますが、街ではなく、「野」なのです。見かけた日本人女性は、ハイヒール脱いで、素足で歩いていましたから……




この先にあるのが、まずは「大トリアノン」です。ヴェルサイユ宮殿ほど大きくありませんが、内部はしっかり宮殿でした。ただ午前中には見学できません。(久我は小トリアノンとマリー・アントワネットの離宮を見てから、ここに戻りました)




一階建てに見えながら、さすがに宮殿、中は広いですです。


さらにこの先に、「小トリアノン」があります。太陽王ルイ14世が愛人ポンパドゥール夫人と過ごした場所、というので、ここも小さいながら立派な屋敷です。





この「小トリアノン」の見学を終えてから、マリー・アントワネットが宮殿暮らしよりも好んだ、「王妃の村里」(ガイドブックの言葉)に入れます。


ここは庭園、というのでしょうか、平原が広がっていて、道もなかなかわかりにくくなっています。しばらく迷っているのか、正しいのかわからない道筋を進んでいくと、視界が広がります。





辿り着いたのが、これまでの宮殿からするとみすぼらしいぐらい地味な、農村の風景です。この簡素な建物で時間を過ごすことを、マリー・アントワネットは愛したと言うのです。


意外と言えば意外に感じますが、プライベートな時間を確保したかったのかなぁと、ちょっと王女を身近に感じたりするような(「愛の寝室」っぽい建物もあったり)建物がいろいろあるわけです。




そしてその中に、王女が楽しんだ「デイリーメイド」としての作業場もありました。自分が同人誌を書いた2004年当時、まさかあのエピソードの場所に行くとは想像もしていなかったでしょう。


デイリーメイドの職場


乳製品を扱うこともあって、気温が低かったり、作業する場所自体が熱を持たないように、机は大理石?製ですね。



床もきちんと石で舗装しており、水はけがいいように設計されています。残念ながら道具類を見ることは出来ませんでしたが、池のすぐ傍、という立地も気温を考慮してかと思います。正面(縦長の写真の奥の壁)には、ちゃんと水が出る噴水?のような仕掛けも用意されていますね。


ここでフランス王女がデイリーメイドと同じ仕事をしていたのかと思うと、感慨深いものがあります。


それにしても、牛はどこに放牧していたのか?


と言う感じで、今回の旅行記は終わります。中途半端な感じもしますし、他にもいろいろと書きたいことはありますが、同人活動のリハビリがてら、メイド繋がりということで長々しく書きました。


最後になりますが、「王女の里村」は「生半可な気持ちで行く場所ではない」ですし、「秋〜冬は相当寒いらしい(別の時期に行った友人談)ので注意が必要」です。乗り物がよいかと。




本当は宮殿入り口付近にある「大厩舎」「小厩舎」「馬車美術館」(上の写真)に行きたかったのですが、そんな元気が残らないぐらい、歩き疲れました……


最後にヴェルサイユ宮殿の広さが伝わるような写真を大きめのサイズでリンクしておきます。


あわせて読むならば

『シャーリー』フランス語版

イギリス旅行記