ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『英国メイドの世界』来年3〜4月目処で進行中になりました

近況報告です。



先日、編集部に打ち合わせにいきました。



年内出版の予定で昨年から編集の方と話を進めていましたが、自分の方で追加修正した原稿の量が想定より膨らみ過ぎ、校正が追いついていない状況となりました。原因は幾つかありますが、「原稿が当初より増加している/依拠の明記追加」(仕事量が増加)ことと、「学芸書レベルでの校閲を行っていただいている」(処理に丁寧さ・質的な高さ・確認による再調査が必要)、その2点が大きいです。



出版決定からずっと、書き足しや、同人誌としての刊行当時調べ切れなかったことの補足、出版するに際して解消するべき曖昧さの補強(「かもしれない」を潰す)、そして追加資料による拡張をしています。商業レベルで見ると粗もあったりしますし、出版社の看板で出す以上、責任を持たなければならないところが増えるので、昨年の刊行時点よりも大幅に作業量が膨らんでいます。



同人版にあった小説部分や他の方の原稿を除いたとしても、想定では600ページぐらいになりそうです。



発売予定時期の遅れは不本意ですが、それを補って余りあるほどに、校正の方のレベルが高く、驚いています。朱入れされた原稿を受け取ると、いつも緊張します。単なる誤字脱字ではなく、内容に踏み込み、共同作業をしているように思えるほど、クオリティの高い「駄目だし&確認&示唆」をしてくれて発見があります。



資料本で自分が最も大切にしているひとつは、読者サイドに立った「疑問」の解消です。自分がわからないことを調べ、分かりやすく伝える。疑問が解消する、そこには一種のカタルシスがあります。知識を羅列した体温のない資料本ではなく、久我は「何で?」に答えるレベルを目指しています。今回出会えた校正の方々は、「レベルが高い質問」を出してきつつ、「こうじゃないの?」との提案もしてくれますので、自分以外の視点が増えて、心強いです。



初めてプロの校閲の方と仕事をしますが、このレベルは素晴らしく、出会えたこと自体が幸運です。出版業界の素人ですが、普通に他の仕事に置き換えても、一緒に仕事ができて、嬉しいと思える成果を出していただき、多分、客観的に見て業界レベルでも少ないであろうと思います。



そんなこともあって時間がかかっていますが、同人誌として個人の限界もあった「言いっ放し」「曖昧さ」が解消され、出版社の力を借りることで「質」「わかりやすさ」が飛躍的に向上できそうです。版権的に個人では処理できなかったので避けていた写真や図表の引用も、これから要望を出していきます。



最近ではランドリーメイドの最初の校正を受け取り、確認・補強して反映するのに、20時間を費やしました。こちらも真剣に向き合い、掘り下げ、原稿を手直ししています。過去に曖昧だったことも、分かりやすく伝えられる確信もあります。



焦って早く出すことよりも、少し遅れてでも、10〜20年と残る資料を目指す方向で再確認して作業を続けています。



とはいえ、あとはこれ以上遅れないように自分の作業精度を上げていく所存です。何度も校閲を繰り返すことで、自分のミスやどこが指摘されるかも分かってきつつあるので、そこを先に潰すことで、作業を減らす方向で動いています。



最初の「原稿」の質が高ければ、後工程の作業は減ります。なんとか、想定よりも早く出せるように、効率化と見直しを並行して進めているところです。編集部に時々お邪魔して、資料作りも手伝うことにしました。



というところで、出版準備で今年の冬コミ新刊は難しいと思いましたが、出版が(久我以外の作業で)遅れるならば、時間を確保できるので何か作れそうです。出版の予告編&同人版との変更点といったフォロー特集ですかね? ネット公開のコラムに加えて、『英国メイドの世界の作り方』などと題した宣伝本でも作ってみたいのですが、そこはリソース次第です。



出版決定は結局のところ、冬コミでの予告でよかったかもしれませんが、言った以上は過去最高のクオリティを目指して、出版したいと思います。本当大変ですが、個人で作るその先に踏み込んでいくので、日々、落ちたり上がったりと刺激的ではありますし、何よりも学ぶことが多いです。



出版社名は年内に出せるよう交渉しますので、ご期待下さい。「あ、確かにそこしかない」「何たる偶然!」と思っていただける出版社です。ここの話も予想外なことが多く、面白いので、時期が来たら書きます。