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2011-12-10 働く立場の変化とメイドの描き方に相関関係

[]『ヴィクトリア朝の暮らし短編集・総集編』入稿完了・あとはデータチェックと決済待ち

今年の冬コミの新刊の入稿が完了しました。残業も増えていますし、風邪が悪化しないものの長期化しているにもかかわらず、意外と時間を確保して作業を進められました。その分、いつもより圧倒的にインプットが足りていませんので、この反動が来ないように入稿が完全終了したら、計画的にやりたいことを行っていきます。


今回は「短編集・総集編」というところで、2001年の短編から2011年の描き下ろしまで、実に11年分の集大成的なものとなります。さすがに11年も書いていると著者の社会的立場や労働環境も変わるので、「働く」ことへの意識が作品の中でも違っています。これはちょっと意外な発見でした。


当初は「公爵家の後継者となった少年が主人階級の視点」で周囲で働く執事やメイドを照らす一方、公爵家のメイドになりたての少女が「公爵家の職場・上司や同僚を見る視点」を備えて、両面から「屋敷」を描き出すつもりでした。


ところが、実際の家事使用人を研究していき、彼らの生の声に触れる機会が増えていく時期に、視点が別のものとなりました。それは、「同じように、職場や人間関係の中で働き、転職や失業に悩みつつも、より良い労働条件で働きたい」と思う彼らの姿に、自分との重なりを感じたことでした。


これが2004年にベンチャー企業に転職した頃で、その点で、この時期にスティルルームメイドとして登場し、ハウスキーパーになるために転職を決意したメイド、セシリーが主軸になっていくのは必然と言えました。


さらに、会社で働く中で、「マネジメント」(計画性でも管理でも何でもいいですが)のない現場が大変なことになるのも垣間見ました。また、自分が管理職の立場で人の仕事を管理・評価・査定するようになる経験を通じて、人事権を持った執事やハウスキーパーの立場や仕事ぶりに意識が向かいました。


その頃に出会ったのが、Astor子爵家の侍女Rosina Harrisonと、執事Edwin Leeでした。彼らは同僚として互いを認め合っていますし、彼らの自伝で描かれる同僚たちは個性的でありながらも、「一緒に働いてみたい」と思わせる魅力を持ちました。一方、そのころ読んだメイドJean Rennieは自分勝手で同じミスを人生レベルで何度も繰り返し、「絶対に一緒に働きたくない」と思う存在でした。


そういう、「一緒に働きたい」「一緒に働きたくない」と思うような存在に、家事使用人がなっていったのは、研究する私の立場が特殊だからかもしれません。


『英国メイドの世界』でも資料としてその辺りは盛り込んだつもりでしたが、創作レベルでもそうした視点が反映されていて、いつのまにか「公爵」の話を書かなくなっていったのは、面白いと思います。


という時期に出てきたのが前述のセシリーであり、今回、メインに据えている、ボーイ→フットマン→執事へと昇進を果たした青年サイラスです。


来年は貴族研究や領地経営の話に踏み込むつもりなので、主人階級の視点での創作もやっていくつもりですが、創作を書くために調べる・仮説を作る、と言うところが自分の研究活動を進める原動力にもなっていたことや、創作と資料が両輪となって『ヴィクトリア朝の暮らし』と言う同人誌を11年間続けさせたのだと思うと、感慨深いものがあります。