本当の女王


例えば、宮里藍が日本ツアーに専念したら宮里藍ではなくなるし、不動裕理が日本ツアーから離れたら不動裕理ではなくなる。
「人それぞれ」というのとは少しニュアンスが違うが、仏法で言う「桜梅桃李」で、人には役割とか「らしさ」というのがある。
私は、不動さんが好きだ。「なんで?」と言われてもうまく説明できない。人の好悪のしくみというのは、理屈ではないのだ。
ゴルフにおいて、将来を嘱望される大器は「65」を出した次の日に「81」を叩くとも聞く(岡本綾子さんがそうだったとか)。
今年の不動さんは、スコアの波が激しい。永久シード選手で、「完成している」はずの不動さんが、まとまりがつかない。私は個人的に、これを非常に面白く楽しみであると思っている。「永久シード選手として恥ずかしくないプレーを」というのが妥当なスタンスだろうが、誤解を恐れずに言えば、人間はどう生きてもいいのである。日本でやりつくした感があるのにアメリカに行かなかった不動さん。永久シードを取って若手のようなまとまりのないゴルフをする不動さん。何の問題もないのである。人間くさくていいではないか!もしかして、この「不安定さ」を乗り越えたとき、不動さんは、樋口久子岡本綾子でさえ開拓しなかった、想像を絶する「なにか」を女子ゴルフ史に刻むような気もする。ファンとして、是非期待したい。