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2012-01-10

シュンペーター「資本主義・社会主義・民主主義」

資本主義はクソだから別の経済システムに移行しよう」という考えは古くからあった。
社会主義共産主義がその代表格だろう。*1

資本主義共産主義か」という経済システム上の問題の核心は、次のようにすっきり書ける。

「生産」→富→「分配」

富は生産活動の結果生まれ、それが所得として分配されることになる。
悩ましいのは、「生産」を考えれば明らかに資本主義が優位だが「分配」に問題があり、
「分配」を考えれば共産主義が優位だが「生産」に問題があるということだ。
社会主義はこの中間)

私有財産を否定し、分配機能で理想的な平等を実現したはずのソ連中国は、
結果として経済活動が停滞し、アメリカや日本に大きく水を開けられてしまった。
自由市場制度に移行した後の経済成長を見ると、やはり共産主義の非効率性は尋常でない。

共産主義が上手く機能しない原因は大体次の4つに集約できる。

1.情報
2.共産党という新エリート
  A.政治腐敗
  B.平等という理念に反する存在
3.労働意欲停滞
4.生産量(富)の不足

キューバは数少ない成功している共産主義国家だけれども、
恐らくは中国ソ連と比べると人口・面積が小規模な小国なので、
情報の問題がクリアできて、カストロ議長以来政治は(ソ連中国と比べれば)健全に運営されている。
そのため労働意欲停滞はさほどでもなく、生産量の不足が起こっていない、と考えられる。
けれど長期的には必ず腐敗した政治家が登場し、キューバ経済も遠からず行き詰まるだろう。
民主主義国家も政治腐敗はあるけれど、共産主義一党独裁システムほど、甚大な影響にはならない。
民主主義国家というのは一面では権力者に首輪をつけておく制度でもあるからだ。

そもそも共産主義国家の実態を見る限り、共産主義が所得分配機能で資本主義よりも優位かどうかもあやしい。
中国共産党員は、賄賂や何やらで相当の殖財をしていて、「プロレタリアート」よりも余程金を持っている。
そういうものを見ると、共産主義は権力と富が直接結びついていた時代に逆行しただけのようにも思われる。

前置きが長くなったが、シュンペーター教授の本では
資本主義民主主義というのは、社会主義へ移行してゆく」という予言がされている。
大体第二次世界大戦の頃に書かれた著書で、
その後アメリカソ連冷戦に突入する前だったという時代背景も踏まえないといけないだろうが、僕の考えとは真逆の結論だった。

簡単に要約すれば、

資本主義体制では企業では満たせない、政府でなければ満たせないような欲求がいずれ噴出してきて、
必然的に政府の存在は肥大化していく。
更に政治的決定プロセスとして、民主主義は「弱い」部分がある。
この政治経済的要請から、文明はいずれ社会主義を求める。

というふうな主張だった。

結論には大いに疑問があるが、結論に至るまでの理屈自体は、我々が現代直面している問題だ。
それなのになぜシュンペーターの言うように、先進国社会主義を導入しないのか?
日本でもその「気運」は高まっていると思う。
ベーシックインカムだの、格差社会是正だの、
日本人の心理的にはかなり社会主義を受け入れる土壌が育っているのではないか。

今まで「成熟した資本主義」の国家が共産主義を導入した例はない。
ロシア中国も、発展途上国がいきなり共産革命を起こしてしまった国だった。
だからもしかすると先進国共産主義を導入すると、ソ連中国とはまた違う帰結になる可能性はある。
しかし恐らくは長期的視点で見ると、それでも富の生産に失敗することになると思う。

中国ソ連がよく示しているように、社会主義共産主義を導入しても、結局我々は資本主義に戻っていくのだ。
それは恐らく「生産に成功して分配に失敗する」制度の方が、
「生産に失敗して分配に成功する」制度の方がマシだからだ。
茶碗10杯のご飯があって10人の人間が存在するのに、一人が10杯食ってるのであれば、
その一人から8杯とりあげて、残りの9人に分配するという手もある。
しかし10人の人間が、1杯のご飯を平等にわけるとしても、それは1/10杯にしかならない。
そもそも生産物がなければ分配の問題も生じないのだ。
資本主義の優位性の根源が、生産の分配に対する優位性であろう。

シュンペーターの唱えた問題は実際に起こってるけれど、その結論だった社会主義への移行は起こらない。
僕は2050年くらいまでは、日本において資本主義体制が続くと思ってる。
もしかしたら先進国共産主義を導入する国も出てくるかもしれない。
アメリカはまず絶対やらないと思う。
比較的左派の強いヨーロッパのどっかの国か、中国ロシアがある程度経済成長した後再び「原点回帰」的に共産主義を採用するか。
前述のとおり、恐らくは失敗に終わる。

結局我々は資本主義を改良しながら使っていくしかない。

具体的にどうなるかというと、税金はもっと高くなる。
所得税の累進性は強化されるだろう。
今の日本で生活保護受給者が増加して、法人税下げて所得税上げて、消費税増税もする。
資本主義が伴う格差を政治的に是正してこうという流れは、とどまるどころか強まる。
それを資本主義と言っていいのかどうか。
資本主義というネームラベルは貼られたままだけど、実質的にはシュンペーターの想定していた社会主義に近い。

*1社会主義共産主義の違いは、どちらも全体主義には変わりないが私有財産を認めるか否かが違う

大絶画大絶画 2013/10/04 15:04 st43様

はじめまして大絶画と申します。
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