塩の街―wish on my precious
リアリティのあるSF。著者の文章力が成す業であると思う。
非現実な世界観の中で、現実味のある人間関係や、それによる感動を生む著者の力量は脱帽もの。
中盤からの展開は、ライトノベルらしいと思った。個人差があるだろうが、その展開自体がなくとも、良作として完結を迎えられたと思う。
時をかける少女 〈新装版〉
当時としては斬新な話だっただろうが、今となっては新鮮さに欠けてみえる。短編が二作収録されているが、以下にも同じことがいえる。収録作【悪夢の真相】に至っては、魅力すら感じられない。主観の思考が現代人からみれば純粋すぎ単純にみえ、軽薄に思われる。そのため、表題作は含まれる恋愛要素に対しても共感出来ず、売りとしている切なさが感じられなかった。
博士の愛した数式
80分間の記憶しか保てない博士と、家政婦の母子の接しを描く。母子が博士と築く、一瞬一瞬の絆といえるべきものは、博士にとっては80分あまりで消えてなくなる。切なさの中に存在する、確かな暖かさ、幸福。
天国の本屋
文章量も少ないので絵本感覚に手に取れる。その大まかなストーリーには、確かに面白味といえるものがある。息抜き感覚で読めるほどの短さにしては、得るものが大きな作品と思う。