生者の想いが屍を動かす

徳永進の名を知ったのは、NHKの、たぶん銀河テレビ小説で、彼のエッセイがドラマ化されたことからでした。普段NHKの現代ものドラマを見ない私が知っているのは、鳥取ロケがあり、その模様が地方ニュースで取り上げられたからでしょう。
そのドラマで印象深いのは次のシーン。
受け持ち患者が亡くなり死亡診断書を書いたあと、主人公の医師が家族で市内のデパート*1で買い物をしていると、ポケットベルで呼び出される。買い物を中断してこの前亡くなったはずの患者の自宅に行くと、つれあいのおばあさんが「おじいさんの脈がふれる。まだ生きてるんじゃないか」と主張する、という話。
患者とその家族にとっては、たった一人の患者・たった一人の主治医なんだけど、医師にとっては大勢いる受け持ち患者の一人で、医師の家族にとっては医師がたった一人の家族なのだ、ということがよくわかるエピソードでした。
残念ながら、徳永進のどの本に書いてあるエピソードかわかりません。オリジナルエピソードという可能性もあります。どの本を元にドラマ化したのかすらわからないのだからわかるはずもありません。検索しても、よくわかりませんでした。
クリエーターズネットワークお題物書き企画「死者の帰還」参加作品)

*1:鳥取大丸でロケ