今日も生きてる

下丸子らくご倶楽部

平成18年6月23日 於:太田区民プラザ小ホール

18:30〜「堂々若手バトル!」
立川こらく 『欠伸指南』
立川らくB 『近日息子』
立川志ら乃 『反対俥』

勝者:立川志ら乃

19:05〜本編
志らく花緑 トーク
柳家花緑 『壺算』
<お仲入り>
林家きくお 『大師の杵』
立川志らく 『庖丁』

先月の感想さえ間に合ってないのだが、もう下丸子がやってきてしまった。あっという間。
今回、いつもと違って、開演前からプログラムに志らく花緑師匠のネタ出しがあり、真っ先に飛び込んできた『庖丁』の二文字に心からガッツポーズ!やったっ!


・若手バトル二ツ目枠は鬼〆か、志ら乃か?!と思っていたら、電車で下丸子に向かう途中、志ら乃さんのブログを携帯から読んで「下丸子に出ます」情報を確認。興奮して(←アホ)数人の仲間にメールを送ったら、うち一人が同じ電車の同じ車両に乗っていて、「数メートルの距離でメール送っちゃったね」と苦笑。


開場してからプログラムで若手メンバー全てが明らかになると、「おお、らくBどう出る?」「志ら乃さんのオッズは倍率低すぎでしょ、志ら乃さんに敵うのは無理でしょ」などなど、他にも「書けない」レベルで好き放題なことをみんな言い合っていた。賭けはしてないですよ・・。


ちなみにこの『若手バトル』、お客のアンケートで順位を決めるのですが、それぞれの演者に一言感想を書く欄があって、コメントの幾つかは各人の順位とともに次回のプログラムで掲載されます。前々回、前回ともになんだか私のコメントが掲載率とっても高いんですけど、そんなにあそこの部分皆書かないのかな?


書く時間が少ないのであんまり考えずに勢いで書いてるんだけど、今回掲載された一文を後から読み返すと、「らく次大好き!」が前面に出てる気がしてちょっと恥ずかしかったよ。「一番手は不利かも、前座で勝つのはらく次さんと思っていたので残念」て、コレどーですか。票を投じたのは素直に一番面白かった志ららさんなんだけどね。


あと前回緑太さんが持ち時間が足りなかったせいか、最初っからまったくやる気ない様子でむちゃくちゃな高座をつとめ、お客をひき逃げして去っていったので、それに対しての掲載された感想もおかしかったです。
「やさぐれた感じがよかった」「話はうまくないが、妙なフラを感じる」「花緑一門はアイディア勝負に挑んでいるのですか」とくに最後の、前々回初花さんがやった『落語予告編』についての言及でもあるので笑ったよ。


・こらくさんはとりあえず何を押しても声が頂けなさすぎる。逆に言えば、もしかしたら物理的に発声方法を直せばちゃんと聞ける様になるんではなかろうか。今の声は明らかにどこかにぶつかってから出て来ている気がする。この声が普通だったら・・と想像しながら聞くと、口調自体はそこまで悪くないんじゃないかしら。モー娘。のボイトレで有名な菅井先生も「『やってもできない子』はいないんです」って言ってたし。


・今までこんな「勝ちに行く」気迫を出してるらくBさん見たこと無い!というくらい攻めの気迫がビシビシ伝わって来て驚いた。わーーーらくBファンのRさんに見せたかったよー。珍しく現代的なくすぐり大量投入でかなりのウケをかっさらい、大健闘*1でしたが、やはり「あの男」には勝てなんだ!


・あまりのらくB大盛況に対して、志ら乃さんが明らかに「軽くヤバイ・・」という顔をして出て来たのがおかしかった。しかしそこは芸人根性の固まりのようなこの人のこと、2月のネタ下ろしから早くも十八番化しつつある『反対俥』の力技でねじ伏せる。「一刀両断にふさなければ・・こちらがやられていた」とヴァガボンドか何かの引用っぽいナレーションが私の頭の中に流れたくらいの猛攻。志ら乃さんのスピードが下がる度にここで喜ぶのもなんだけど、やっぱりこれも面白さを損なわずにスピードダウンに成功していた。たぶん5/7志らく百席の志ら乃『反対俥』が私が聞いた最速の落語かしら。


・結論。今は二ツ目が最後の出番にして、持ち時間も長いというアドバンテージがあるのだが、若手バトルはやっぱり今日みたいに切迫した方が盛り上がるので、むしろ前座にアドバンテージをつければいいのに。

・「しらかろ」トークは今日も今日とて面白すぎる。この二人は本当にいいコンビだよ。前回の下丸子、そして今月の『志らくのピン』に引き続き、志らく師匠がまたまた実演つき嫌・サッカー論で大暴れ。「広いフィールドで全員があわてていて粋じゃない。落ち着け!」と「あわてる選手」の動きをするんだけど、ヘンだよ・・!サッカーに見えない。むしろ芝居『はなび』の辰吉役後遺症。激しい動きな上にご開脚はなはだしく、最前列ではだける着物に「ちょっと、師匠、下!下!見えてるから!」とハラハラさせられた。


しかもその流れで「あわてる芸なんて昇太兄さんくらいだよ!」と二人でジタバタ真似をしたのにはもう、もう、だめ・・しらかろサイコー!笑い死ぬ。今日は花緑さんも『壺算』だったし、これで志らくさんも『愛宕山』だったりしたら十分アナタ方も『あわてる芸』だと思います・・というのも含めておかしかった。この前久しぶりに市馬さんを見たら「う、動かない!上下もほとんど切らない!」と新鮮だったもん。確かに白鳥・彦いち・昇太さん等を見た後に志らくさんや花緑さんを見たら大人しく見えるだろうけどね。


志らくさんが最近某インターネット回線の会社と一悶着あった話。光回線に変わるので申し込みし直さないといけなかったのだが、向こうの連絡不手際でそれが伝わっておらず、予告無しで回線を切られたらしい。志らくさんが怒るのも無理はない。啖呵を切ってオペレータの女の子が泣いてしまい、「男はァ女の涙に弱いもんですから上の人に変わってもらって」でも結局どうにもならないの一点張りで未解決のまま。


そこで、志らくさんが怒りを覚えるとその相手や団体には本当に不幸なことが起こる、という話に。「だから○○○○(その会社)も危ないですよ!」、たしかにそこは問題を起こした某有名IT企業を買収したばかりで、これから波乱のありそうな会社です・・!弟子入りを認める前の家元の夢枕に毎晩立ったという話も、志らくさんにスピリチュアルな才能があっての事かしら?!


・あと面白かったのは「志らく流落語の覚え方」と「一流の条件」。落語を紙に書き出して憶える人もいるけど、音楽のように節で憶えた方がいいとのこと。以前、ある人に「落語ファンってなんで同じ噺を何度聞いても面白いわけ?」と聞かれ、「石川さゆりが『津軽海峡冬景色』をコンサ−トで何度やってもファンが怒らないのと同じ。名曲は何度聞いてもいいという理屈が当てはまるのも、落語が音楽と似ている所。あんまり代表曲が少ないと飽きられるので、幾つかはバリエーションを持ってなきゃやっていけないというのも一緒」なるほど!膝打ちの理屈でとても興味深かった。


「落語家の一流の条件」とは。「自分の落語を普通に聞いて笑えるようになったら一流」との事。

志らく「近ごろは『オレもうまい事言うね!』なんて自分でうけちゃったりして」花緑「僕も自分のCDで普通に笑っちゃうから一流ですか」志らく花緑は血が一流だもんな。私は駄馬の駄馬、地方競馬出身者が中央でがんばってるんですよ」二人揃って「どうも、一流の落語家でございます」と、キザったらしく挨拶してみたりする。花緑「今日のゲストのきくおくんなんかも自分の落語で笑ってそうですね」志らく「おう、あいつも一流だよ!勘違いの。志らく師匠、座布団一枚!


花緑さんの『壺算』!昇太版『壺算』と違って店主の首も舐めないし、取っ組み合いもしないけど、じゅうーーーーぶん、ドタバタでうるせえ、うるせえ(笑)花緑版『壺算』の場合は頭の足りない店主のボケ加減を笑いの焦点に仕立てた演出構成。くすぐりの買い物ジョーズが、ツボ。ハッスルした店主の声が怪鳥の雄叫びのようで、お声の調子大丈夫かしら、と心配になるほど。


・きくお先生は今日もきくお先生でした。愛されてるって素敵だね・・。


志らく師匠、いよ、待ってました!『庖丁』!!「ほかの流派ではそんな事ないのですが、この『庖丁』というネタ、最近はうちの師匠や談春、私もよくかけますが、立川流では神格化されていまして・・」という説明から。知ってます、知ってます。だから期待してるよー!といよいよ高まる気持ち。家元の『庖丁』を最前列で聞いたのもまだ記憶に古くないしね!


「元は円生師匠しか出来なかったネタを、若き日の家元・談志が独演会でかける事を予告、落語ファンを騒然とさせたが、結局当日になって『ンーー、庖丁、出来ねェ。難しい。』と言って高座をおり、本物の円生が出て来てやらせた、という話。

『家元が出来ないと言ったネタ』、そして『弟子の談春がその厳しい家元に絶賛されたネタ』として、我々の間では神格化されています。何度か聞いてらっしゃる方はご存知でしょうが、まァ私のはバカバカしい奴ですから。ただこれはいわゆる音曲噺という物で、唄が入ります。家元は円生流にうまく唄えないからと違う唄を唄っていますが・・・私は円生の通りに唄います!」フフフ、この最後の一言、志らくさん嬉しそ!しかも最後に「えーこんなに長々とマクラを振っているのは、やっぱり緊張するからです・・」し、ししょうー!


談春さんとの二人会で、「唄なんて俺の方がうまいよ」とマクラで宣言してから『棒鱈』をやった談春さんの方がやっぱり上手かったけど、上手い下手じゃないさ、志らくさんの唄が好きだ。


そして噺が始まると、うっわああーーーー楽しい楽しい楽しい!志らくさんの登場人物が生き生きと鮮やかな事ったら、とにかく他と比べ物にならない映像喚起性。「其処」に部屋があって、確かに久治兄さんと、寅ん兵衛とお上さんがドヤドヤやっている。広小路亭の一門会で聞いた仲間が、「ちょうど広小路の舞台の大きさが部屋に見えた」と言っていたのも納得。


家元も良かったけど、家元の持ち味とはまた違う。言っていた通り本当にバッカバカしい。でもそんな志らく落語が愛おしくてたまらないのよ。それぞれの人物が浮き彫りになって、叫び、怒り、あわてたり、驚いたり、しなを作ったり・・


「恥ずかしいのを唄なんて唄いながら誤摩化して頑張ったのに」というのが可愛らしい寅ん兵衛、絶妙な情けなさ演出がサゲを光らせる久治さん、女の剛毅さと弱さを併せ持ったお上さん。この溢れたつ人間くささ、愛さずにはいられない。また、お上さんの「お酒は頂きませんの!!!」、の「の!」がたまらん言い方だったなあ。


「こんなことしちゃっても、お焼香じゃないよ」「想定外!」「アタマ、アゴ、目、顔中が痛い!」ナーーイスくすぐり連打、そして志らくさんの得意技、「目つぶし」と「ヘビが舌出すように怒っている人の描写」も出ましたよ。そう言うアナタがいっつも想定外の場外ホームランだ!もう、大好き!


余談:終演後恒例、なかまとの食事会で、「市馬師匠のいわと寄席予約しちゃったよ。『市馬の好きな昭和のうた』聞きたくて!」と言ったら、「昭和歌謡好きの市馬さんと志らくさんで、市馬さんの歌謡ショーと二人の思い入れトークつき二人会やればいいのに」という話に。絶対その会イイ!

*1:はい、今「また」、アンケートに書いた漢字間違えたことに気付きました!大検討って書いた!帰国子女の漢字力をなめるな!前にも「斬新」を「漸新」って書いた。恥ずかしい!