人間中心設計フォーラム2009

組み込み総合技術展2009(@パシフィコ横浜)で行われたセミナーについて、簡単にまとめておく。

人間中心設計フォーラム2009
〜 組込み型ソフトウエアのためのユーザビリティと事例 〜
http://www.jasa.or.jp/et/conference/info_c.html?id=C-1

全体への所感

年に数回こういったセミナーを聞くことがあり、その半分以上は「損したな」と思うものだが、今回は「アタリ」の講演だったと思う。日本のメーカーも危機感を持ってHCDに取り組んでいるのがよくわかった。特にハードも作れる総合電器メーカーは、Web会社と比べると理想のシナリオを描くときの自由度が高くなるので、その点は非常に羨ましく思った。


そしてどこのメーカーも、HCDプロセスの策定や文化の定着に非常に力を入れている印象を受けた。CMと間違えるほどのカシオの啓蒙用ムービー、日立のアクティングアウトでのプレゼンなど、HCD手法の浸透は各社オフィス内の空気を変える力を持っているようだった。


また、各メーカーとも事後の評価手法が確立しているのが素晴らしいと思った。キチンとした評価をするためには、その施策は明確なコンセプトや仮説に基づいて行われる必要がある。HCDやアジャイルプロセスは手戻りありきのような手法に見られるが、やっぱりそこに仮説は存在するのだ。フィードバックによってそれを壊す分には構わないが、最初から存在しないのとは違う。その辺りの手堅さというか、ウォーターフォール型との上手い具合の融合ぶりを確認できたのが今回の一つの収穫と言える。


カシオ計算機株式会社における人間中心設計プロセス実践事例

コンビニで使用されるハンディターミナル「DT-X7」の事例紹介
[rakuten:pasodentsushin:10050700:detail]

調査手法

 利用者へのインタビュー
 コンビニへのフィールドワーク
 社内に擬似環境を用意してのウォークスルー
 定量アンケート

評価手法

 アンケート(使いやすさの主観調査)
 ユーザーテスト(持ち替え回数観察)
 アイトラッキング(端末と目標の注視時間比較)
 EEG(腕、肩の筋電位測定)

その他

・カシオデザインセンター内で基準となる「5つの指針」がある
・HCDを取り込んで、社内が非常に盛り上がり、広報部がDVDまで作ってしまった


富士通における人間中心設計プロセスの実践事例

銀行で用いられるATMの事例
スローガンは「UDからUXへ。全ての人におもてなしを。」

おもてなしとは何なのか?日本的要素を抽出

 よそおい(店舗に溶け込むデザイン)
 ふるまい(イルミネーションで客を呼び込む)
 うつろい
 しつらい
⇒理想のATMをMovieにして開発部隊と共有

評価

 人間工学専門家による定性評価
 WUS(Web Usability Scale)の利用

その他

・UI設計の8つのポイント
 ⇒過去事例とともにまとめ、社内共有している
・策定したものはガイドライン化、ソフトウェア化、書籍化


日立におけるエクスペリエンスデザインへのアプローチと事例

UXリサーチセンターという組織が存在する
以前に比べ、上流調査工程の業務が多くなってきている

優秀なマネージャーとは?

 できるマネージャーと普通のマネージャーは何が違うのか?
 社内のマネージャー17名×2に架空のケースを与えて対応を分析

 できる人⇒まず落としどころをイメージする/サポート部署まで会議に召集する
 普通の人⇒まず現状調査から入る/うちわメンバーだけで会議する

できる人になるためのポイント

・やりたいことに向けた体制が早くから作れる
・多くの違った視点の人からアドバイスがもらえる


⇒デザイン部署でも応用し、創造性を高める対話を促進
・対話スペースを広くとるオフィスに変更する
・丸一日かけて対話ワークショップを行う

病院のカルテ管理システムのケース

調査結果をアクティングアウト(寸劇)でプレゼンした
⇒開発者が乗り出して質問してきて、効果が高かった
⇒すぐにその場で新しいアイデアを試すことができた

嬉しさの二十一章

デザイン部署の社員が、それぞれ「嬉しかったこと」をブログに投稿
⇒「よいUser Experience」とは何か?21項目を抽出した