みる わかる 伝える
- 作者: 畑村洋太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/03/14
- メディア: 単行本
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新しい職場で教育に関わるにあたって、会社でオススメされた一冊です。失敗学で有名な畑村先生の著書。
「わかる」とはどういうことか?
- 世の中は「要素」と「構造」でできている
- 「わかる」かどうかは、自分の頭の中に持っている要素や構造(テンプレート)と一致するかどうかで瞬時に判断している
- 「新たなテンプレートの構築」という作業こそが、「学習」するということである
- 「知っている」のと「わかった」というのはまったくちがう
- 行動と結果、そしてそれを結ぶ理論の三つを理解して、はじめてその人は「わかった」ということができる
- 新しい事象や現象を理解するのが上手な人は、よくアナロジー(似ているものから類推する)を使う
最近教室でパソコンを教えていて、もらって一番嬉しいなぁと思うのが、『なるほど』という言葉です。誤解を恐れず言えば、『ありがとう』よりも嬉しいかもしれない。自分が何かを教えたことで、脳の中に新しいつながりができた瞬間に立ち会えるのは、とてもやりがいを感じます。
また、「知っている」と「わかる」の違いは興味深かったです。知識を持っているだけでもダメだし、逆に経験だけして理論を知らないのもダメだと。その両方を組み合わせるために、アクティブ学習(講義などの受動的な学習ではなく、能動的に創造しながら行う学習)が必要だという内容には納得しました。これはぜひカリキュラムなどを作るときの参考にしたいです。
教育は「状況作り」と「フィードバック」
- ちゃんと伝わったかどうかは、伝達手段の良し悪しではなく、結果として伝える側と伝えられる側とがほぼ同じ状態になっているかどうかで決まる
- まず大切なのは、伝える工夫よりも、受け手が欲しくなる状況をつくること、そして伝わったかどうかを見守ること
- 人は本当に「この知識が欲しい」と思うようにならなければ、頭が能動的に働かないようにできている
- フィードバックこそが教育の本質である
プロセスではなく結果重視。伝えたことによって本当に相手がわかっているかをフォローするところまでが「伝える」だという部分はグサッときました。家での日常生活家で家電の操作方法について質問されたとき、つい「それ前回も教えたでしょ」と言ってしまうことが自分にもよくあったので…。全然「伝えられて」なかったんですね。もしくはまだ「伝えている最中」なのかもしれません。
また「知識が欲しい状態」を上手に作れるかどうかも教育の重要なスキルなのだと改めて認識しました。前職でも社内講義などを担当したことがありましたが、そのときは知識をただ一方的に教えれば興味を持つだろうというスタンスでやってきてしまったので、反省とともに現職でインストラクタ―のプロがどう工夫しているか、注意深く見ていきたいと思います。