欧州で入植地ビジネス規制に向けた動きが急進展

6月24日、フランス外務省は、イスラエル入植地とのビジネスに伴うリスクについて同国市民に警告する次のような声明をウェブ上で公表しました。
France warns citizens: Don't invest in Israeli settlements, Golan Heights (Haaretz, Jun 25, 2014)

入植地が国際法上違法であるという事実により、入植地内において行われる、あるいは入植地に利益を与えるようなかたちで行われる、送金・購入・販売その他の経済活動はリスクを伴います。・・・私達は、入植地における経済活動に関わることを検討している市民および企業関係者に対し、事前に適切な法的アドバイスを受けることを呼びかけます。

26日には、スペイン外務省がやはりウェブ上で、入植地ビジネスに関わろうとしている市民に対し、和平合意がなされた場合、入植地における財産・権益が大きな影響を受けるであろうこと、その結果として裁判に巻き込まれた場合、擁護することは難しいであろうということについて警告を発しました。また、入植地における金融活動は、国際法違反と人権侵害に関与することになる可能性を伴うことを考慮しなければならないと勧告しました。27日には、イタリア外務省も、西岸地区の入植地において、金融活動および投資を行わないよう市民に呼びかけました。
EU ambassador: Europe 'losing patience' with Israeli settlement construction (Ynetnews, Jun 28, 2014)

すでに同様の声明がイギリスおよびドイツも発表しており、EUの主要五か国が入植地ビジネスを規制するガイドラインを発表したことになります。これらの声明は、昨年7月にEUが策定した入植地にかかわる団体および活動を援助対象から除外するガイドラインと同様、強制力を持つものではありませんが、入植地ビジネスに対するEUの姿勢は過去1年間で大幅に明確化されたと言えます。

なおEUは、入植地ビジネスに関する強制力を伴う措置も限定的に開始しています。この5月、EUは、イスラエル入植地産の家禽類と鶏卵に対するイスラエル農業省による家畜衛生検査の実効性を承認しないというかたちで、実質的な輸入禁止に踏み切りました。
Report: EU won't import poultry from settlements (Haaretz, May 22, 2014)

イスラエル最大の貿易パートナーであるEUにおける入植地ビジネス規制の動きは確実に入植地経済に影響を与えています。イスラエル中央統計局によれば、2014年1月〜4月における入植地製品の輸出額は前年度に比べ35%も落ち込みました。これは、ヤイル・ラピド財相によれば、200億ドルの損失に相当し、1万人の雇用が失われたことになるとのことです。ボイコット運動がイスラエルの入植政策・占領政策に対する具体的圧力となっていることが実証されたことになります。
Israeli settlement economy hit by international boycott (Middle East Monitor, Jun 29, 2014)

こうした動向は、ソーダストリーム社の業績にも大きな影響を与えていると考えて間違いないでしょう。同社の株価は、7月1日現在約33ドルで、1年前(70ドル)と比べて半値以下、過去2年間における最安値となっています。イスラエル占領政策に直結しているという点において、ソーダストリームが大きなリスクを抱える商品であることは、欧州であろうと日本であろうと変わりません。ソーダストリームを販売する小売企業は、違法入植地製品の販売という行為と企業コンプライアンスとが整合するものなのかどうか、グローバルな観点から真剣に検討すべき時期にきているのではないでしょうか。


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