ふたりの距離の概算/米澤穂信

ふたりの距離の概算」著米澤穂信、読みました。

古典部シリーズ第4作目。
新年度を迎え二年生になった古典部メンバー。そこに新入生の大日向友子が仮入部してきた。
本入部を迎える前日、大日向は突然入部を辞めると言ってきた。しかもその原因はどうやら千反田にあるらしい。
奉太郎は、思い出す。大日向が仮入部してきた日から今日までのことを。


なかなか面白かったです。
日常ミステリーはいいですね。
ラソンで走りつつ、何気ない日常の出来事を思い出しつつ、大日向との距離を縮めていく感じが面白いですね。
あと、古典部メンバーが2年生になって少し成長してたり、関係が変わっていたりしていて、ニヤニヤできていいです。


友達って難しいですよね。とくに中学くらいの思春期の時期の友達関係。
自分と相手の距離感。
依存とか束縛とか嫌ですしね。あんまり遠慮とかするのも変ですし。
とくに友達同士でのお金の貸し借りとかは難しい問題ですね。慎重に扱わないと友達関係にヒビが入りますからね。
ジュース代とかご飯代とかをたまに貸すくらいならいいんですけどね。
大きいお金は貸すのも借りるのもなんだか怖いです。
その段階で、友達から債権者、債務者になってしまいそうで。

 ……俺は思い出す。昨日千反田が去った後、地学講義室に残った俺に伊原が訊いてきた。
『で、何があったの』
 何も答えられなかった俺に、伊原は加えて言ったのだ。
『わかんないか。そうよね。あんた、人を見ないもんね』
 何気ない一言だ。
 だが、胸を突かれた気がした。

さすが伊原さん。一言でぐっさとくる台詞を吐きますね。
人を見るってどういうことでしょう。果たして自分は人を見ているだろうか。
きっと、あんまり見ていないと思います。
たとえば、大日向のように部活だけ同じで、プライベートでは特別会わないような人のことをどこまで知っているだろうか。
きっと全然知らない。

僕らは自分の見れる範囲でしか見れない。手を伸ばせない。
しかし、本当にそうだろうか。もっと見ようと思えば見れるし、もっと外にも手が伸ばせるのかもしれない。


日常ミステリー的には、今回は新勧祭のかぼちゃからどんどん推理を進めていく話と、喫茶店の名前を推理する話が面白かった。
茶店の名前がなかなか赤面するようなロマンティックさでした。


あと、今回も千反田さんはかわいかったです。
新勧祭での一コマ。

「折木さん、いまわたしのこと馬鹿だと思ったでしょう」
「そんなことは」
「じゃあ阿呆だと思ったんですか」

あらあらうふふ。かわいいです。


二年生になった古典部がこれからどう成長していくのか楽しみです。

ふたりの距離の概算

ふたりの距離の概算