「姉」が弟を育てるー日本的物語ー トトメス三世とハトシェプスト Tweetより

【本日の考え事 その1】漫画をかきたくて、伊東聰といえば〜で古代エジプトに手を出した。しかし古代エジプトの世界にどっぷりつかるヒマがなくて、さすがにその世界観を 書き出す自信がなかったりする。古代エジプトとひとことでいってもトトメス三世時代のファッションとラムセス三世のそれは違う。

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【本日の考え事 その2】ベルバラのオスカルの衣装、あれはナポレオン時代のファッションで時代考証的には違う。でも華やかだからそれにしたらしい。ラムセス三世の衣装も 顔に似合わず(^_^;)ゴージャスなプリーツつきのドレスが多い。トトメス三世に着せてみたかったが、時代があわない。

<参考>
http://www.nilestory.co.jp/sslxrderermedina.html
ゴージャスなプリーツつきのドレス=
ラムセス三世時代の貴族、インヘルカウの壁画。彼の衣装に注目。


【本日の考え事 その3】一応、例のタイトスカート→名前忘れた、には細かいプリーツはあるが、基本的にシンプルかつ機能的な格好が多い。時代というよりは彼にファラオら しくない動的な活動が多かったせいもあるんじゃないかと。耳にピアスのあとあるっけ?そんなところも大事なポイントだ。

ロインクロス(腰布)の一種、シェンティというそうです。ファラオのはパーニュ。
シェンティ - Wikipedia

あとあらためてミイラの写真見たらピアスの穴、ありました。

【本日の考え事 その4】古代エジプトものの最たる作品といえばミカ・ワルタリの古代エジプト人〜ではなくて、クリスチャン?ジャックだろう。ラムセス二世をはじめ、イア ホテプ女王の話も書いている。小物や社会システムの使い方がうまい。イアホテプ女王の母が王家の赤字経営で悩んでいたりとか。

エジプト人 (上巻) (角川文庫)

エジプト人 (上巻) (角川文庫)


エジプト人 (下巻) (角川文庫)

エジプト人 (下巻) (角川文庫)

【本日の考え事 その5】一方でクリスチャン・ジャックの作品全般で「気に入らないな」というのはインセスト?タブー、近親婚、そしてハレム、一夫多妻を極端な嫌悪感で避 けているのではと感じるほどの忌避感である。例えはラムセス二世の子供達は養子が多い。まさに核家族礼賛のような書き方である。

太陽の王ラムセス〈1〉 (角川文庫)

太陽の王ラムセス〈1〉 (角川文庫)

ブラック・ファラオ

ブラック・ファラオ

闇の帝国―自由の王妃アアヘテプ物語〈1〉 (角川文庫)

闇の帝国―自由の王妃アアヘテプ物語〈1〉 (角川文庫)

光の王妃 アンケセナーメン

光の王妃 アンケセナーメン


【本日の考え事 その6】なんか兄弟婚とか従姉妹婚など血縁関係をフランスではタブーにしているのでは?と思う。例えはモーゼはラムセス二世の異母弟というモチーフは有名だが、彼の小説では採用していない。一方で自由のための戦いやファンタスティックな展開はオケ。


【本日の考え事 その7】また欧米の物語でラムセスは多いが、意外にハトシェプスト&トトメス三世は少ない。日本ではむしろ逆である。と、いうところではっとしたのだが、 メンタリティ的にハトシェプスト&トトメスの物語はかきにくいのでは?西洋的な性的倫理では彼らを理解できないだろう。


【本日の考え事 その8】まず性別越境者であるハトシェプスト。王権というのは双性である。男であるファラオが成り立つには王妃の存在がかかせない。欧州王室の王権も王と 女王がかかせず、かならず一対一のペアでないといけなかった。そのペアの子でないと王権は継承されなかった。

王権

王権


【本日の考え事 その9】ハトシェプストはその常識をくつがえし、自らが王となった。しかし常識は守った。ハトシェプストの王妃役は最初は母アハメス、そして娘ネフェル ラーだ。いずれの王妃役も亡くなったあとはトトメスとの共同統治。それは例外的だがよくある話。男やもめはラムセス二世もそう。


【本日の考え事 その10】トトメス三世とてジェンダー学的になかなか難しい。美少年がいろいろな人に育てられて強い男になる、これは非常に日本的男性の成長物語だ。義経 記なんか典型だ。西洋のマッチョな男性には理解しにくい。日本の物語は大半がそうではないか。マッチョだと嫌われる。


【本日の考え事 その11】また姫の国日本の場合、妻が「財務相」といわれるように財力をもつ女性が多い。そんな財力のある女性が男を育てる。それが日本の隠れたメンタリ ティだ。はるか古代から養われた感覚。ハトシェプストが男になって男=トトメス三世を育てても我々は違和感ないが西洋は違う。


【本日の考え事 その12】日本人男性が年上の女性に育てられる物語は想像以上に多い。聖闘士星矢の作者、車田正美の物語はほとんどが「姉」が弟を育てる物語だ。巨人の星 にも明日のジョーにも年上の女性はかかせない。その伝統は「源氏物語」の藤壺光源氏の関係にもみられる。


【本日の考え事 その13】トトメス三世の重大なネタバレひとつ。彼の人生を漫画にしたら、本宮ひろしの「俺の空」や宮下あきらの「天よりたかく」的な物語になることだ。 最高の伴侶をさがして旅をするとはきこえはいいが…あれのこと。しかし大河ドラマ清盛の源為義&義朝親子のようなもの。


【本日の考え事 その14】西洋にも「嫁さんさがす王子様」の話はあるにはあるが、日本ほど多くはないだろう。旅する宿のあちこちに我が子が、というのは西洋ではタブーの 気がする。だから「私生児」なんて言葉ができる。源義朝に私生児はいない。身分権力の格差はあれど頼朝も義経も義朝の子だ。


【本日の考え事 その15】貴種という言葉が「旅人の父」の日本的価値観を思う。トトメスもハトシェプストにファラオの仕事させてもらえず遠ざけられた、とはいうが実は ファラオであることを忘れて男をみがく貴重な時間だと思う。ハトシェプストにそれだけの力量があったことの証明だが。続きは明日。

2012年09月06日のTweet