読書記録

謹賀新年。久々の更新でございます。

いきなり去年のハナシ?って言われそうですが、2011年はほんとうにいろんなひとが亡くなりました。ぼくがピンときたひとだけでも、金正日、工業デザイナーの柳宗理、ミュージシャンのレイハラカミ、スティーブ・ジョブス上原美優伊良部秀輝坂上次郎など(とくに上原美優や伊良部みたいな比較的若いひとが、自殺という方法で自らの命を絶つことには、ほんとうに心が痛みますね)。

10月24日には作家の北杜夫が亡くなっています。彼の作品は恥ずかしながらしっかり読んだことがなく、『どくとるマンボウ』シリーズの『昆虫記』をかなりむかし(中坊のとき?)に読んだ記憶があるのみです。伊坂幸太郎なんかもそうですが、ぼくはどうしても出身校が同じだとひいきしてしまうミーハー気質です(東北関係者はそもそも少ないし)。そんなこともあって、亡くなったきっかけでまとめて読んでみようということになりました。昨年末から読んでいたのですが、筆無精病が発症し、ためてしまっていました。

夜と霧の隅で (新潮文庫)

夜と霧の隅で (新潮文庫)

芥川賞受賞の表題作をはじめとする5編。『夜と霧の隅で』はナチス政権下の精神科病院が舞台。そんな極限状態における人間の描写は、精神科医としての作者の得意とするところでしょう。ただなんとなく読了すると、舞台がいまのぼくらの生活からはぶっとんだ非日常すぎてコトバを失う、あるいは、ただ「ふーん」っていう感想で終わってしまいそうです。ただ、激動の2011年を経験し、非日常と日常との違いなど無い、ということをぼくらは事実として体感しました。いつ日常が非日常化し、非日常が日常となるか。あるいは人間の認識を遥かに越えたレベルまで一気にもって行かれるか。それを考えると、なんだか半世紀以上も前に起きた出来事が、気持ち悪いほどのリアリティで迫ってくるような気がします。


さびしい王様 (新潮文庫)

さびしい王様 (新潮文庫)

さびしい乞食 (新潮文庫)

さびしい乞食 (新潮文庫)

さびしい姫君 (新潮文庫)

さびしい姫君 (新潮文庫)

北杜夫による子どもからおとなのための童話シリーズ。ストン王国の王、ストンコロリーン28世のビルドゥングスロマン(成長物語)です、たぶん。読後感としては、サン=テグジュペリの『星の王子様』をユーモアを交えてやたら長くした感じでしょうか。全体的にやはり「ちょっと寂しい感じ」が漂い、確かにおとなっぽい童話ではあります。先にビルドゥングスロマンと書きましたが、王様は最後まで頼りなげで、ちっとも成長しているようには感じられません。ただ、この書き方は人間が多くの個性的な人間のなかで揉まれながら単純に生きていくことを肯定しているように感じました。

ちなみに『乞食』と『姫君』は、もう本屋で新品は買えないようです。アマゾンで古本を入手しました。