読書記録『帰れぬ人びと』(鷺沢萠)02-2018

帰れぬ人びと (文春文庫)

帰れぬ人びと (文春文庫)

先に書いた本の著者、小関智弘の作品がきっかけで小説を書き始めたという、鷺沢萠(すでに故人)。これまで読んだこともないし、恥ずかしながら知りませんでした。

この本は短編集ですが(鷺沢萠の作品は短編かエッセイがほとんどのようだ)、表題作の「帰れぬ人びと」は当時、最年少で芥川賞候補にノミネートされたということ。小関氏が評価しているように、羽田とか、いまの大田区界隈の世界が舞台で、具体的なその風景と、若い(幼い)登場人物の心象風景が、個別具体的に描写される。個人的にもこの辺の地域は馴染み深い(上京してきて住んでいる期間が長い)ので、愛着が持てるし、各小編の空気が感覚で理解できる(時代は違うので錯覚もあるかもしれない)。

久しぶりにシンプルで力強く、「子どもの宝物」のような小説に出会うことができたような気がする。他にもいろいろ読んでみたいと思う。