史上最悪の思考法

 いきなりムジュンする事を言ってしまうが、この世で最も愚かな思考法は「なんで?」である。

 知人がこの言葉をよく使うのでいつもイライラさせられるが、例えば起こったミスに対して「なんでこれは起こったの?ねぇなんで?」とお前は教育ママか!という感じで言ってくるのだが、別に誰かが起こしたくて起こったミスではなく、いくつもの偶々が重なってミスが起きただけである。

 おバカな人はまだ私が何を言いたいのか分からないだろうから、例をいくつか挙げよう。

A「なんで今日は赤い服なの?
B「いや、イメチェンで
A[黄色い服でもいいじゃん、なんで赤だったの?
B「いや、家に赤しかなかったから
A「いつもは黒系じゃん。なんで数多くある色の中で黒と赤の組み合わせなの?
B「この服この前ユ○クロで安売りだったから
A「他にも安売りしている色あるじゃん。なんで赤なの?
B「いや、カッコイイかなって
A[赤以外にもカッコイイ色あるじゃん。なんで?
B「いや、分からないよ。なんとなく。燃え上がれー!って
A「なんで燃えあがりたいの?

 ただいまのお受験ブームではこっちの方が分かってくれるだろうか?

A「なんで他の子はできるのに、あなたはできないの?
B「いや、ボクとその子は違う人だし
A「その子だけじゃなくてみんなできてるの!あなただけできないのはなんで?
B「わからないよ。ボクちゃんと塾行ってるし!頑張ってるよ!
A「頑張っているのになんで出来ないの?
B「塾の勉強が難しいからかな?
A「なんで塾の勉強が難しいの?
B「まだ習っていないところを習うんだ
A「勉強はそういうものでしょ。なんでそんなに勉強がいやなの?
B「え、えーとぼくがやるきがないからです。スミマセン
A「なんでやる気がないの?

 キリがないのでこのへんでやめにするが、「なんで思考法」は上記のように「なんで」をつなげる事で無限に言葉を続けられるのだ。しかも重要な事は上記のやりとりの中ですでに「答え」が出ているにもかかわらず、この「なんで?」のせいで無限ループに陥っているという事だ。

 一見すると多くの情報を引き出しているので知的な会話に見えるが、実際はただ単に相手が出した結論を否定して、自分が納得がいく答えが出るまで繰り返しているだけである。私も嫌いな相手に対しては「何で○○なんですかねぇ」と皮肉めいて使う事があるし、カルトのマインドコントロールに対しては有効ではあるので、一概に否定もできないわけだが。

 「なんで人は生きているの?」
 「なんでこの世に時間があるの?」
 「なんで男と女に分かれるの?」

 ここであなたがこれらの質問に対して「返答」をしたとしよう。それに対して「なんでそう思ったの?こっちの理由だってありえるじゃない」と返されたらお終いである。明確な理由があろうとなかろうと「なんで?」によってぶち壊されるのだ。疑問を消すために「なんで?」を使ったのに、そこで得られた答えがさらなる疑問を生んでいるわけである。

 世の中には学者がこの「なんで?」を好むからいい思考だと思っている輩も多いだろうが、偏屈な学者になって不幸になるよりも建設的な思考で幸せになってもらいたいものだ。ちなみに私が薦めるのは「なぜならば〜」とか「どのようにして〜」といった思考なのだが、それを説明するのはメンドいので今日はここまで。