28年度税制改正

 28年度税制改正について説明いたします。今年はだいぶ遅くなってしまいましたが、6月に入って消費税の税率引上げ時期が延期されることになったので、それを踏まえて説明したいと思います。中小企業に関連する事項を中心にピックアップしていきます。

○法人実効税率が20%台へ
 安倍政権なってから法人時刻税率は数年内に20%台へということをずっと言ってきましたが、この28年度からいよいよ実現します。20%台といっても29.97%なので約30%ということです。数何前まで40%程度だったことを考えると、10%程度引き下げられたことになります。
 ただ、この29.97%というのは外形標準課税の対象法人の数値で、多くの中小企業の場合は年800万円超の部分については33.8%です。
                改正前   28年度   29年度   30年度
 中小法人:400万円以下     21.42%  21.42%  25.99%  25.99%
      400万円〜800万円   23.20%  23.20% 27.57%  27.57%
      800万円超      34.33%  33.80%  33.80%  33.59%
 中小法人以外          32.11%  29.97%  29.97%  29.74%
(外形標準課税の対象法人)

○建物附属設備・構築物の減価償却方法の定額法への一本化
 法人の実効税率を引き下げるだけだと、税収が減ってしまう一方なので、課税ベースを引き上げるための改正です。建物附属設備と構築物について、取得当初の償却を多くできる定率法を選択できなくなり、定額法が強制されることになりました。
 建物附属設備の例としては、冷暖房設備、照明設備、通風設備、昇降機など。
 構築物の例としては、舗装道路、岸壁、桟橋、配電用鉄塔、緑化設備などです。

○企業版ふるさと納税
 ふるさと納税といっても、個人のふるさと納税とは全く違います。個人の場合のように特産物などの返礼品はありません。また寄付先は、どこの地方自治体でもよいわけではなく、地域再生法の認定地方公共団体に対する寄付についてです。現在北海道など105件の申請があり、8月中に事業の認定が行われる予定です。
 従来との違いは、節税効果が約2倍(約3割から6割へ)になったというところです。ただ、個人版のふるさと納税のように一定額までなら個人の負担はほぼゼロなのと異なり、企業版ふるさと納税では、約6割の節税にはなるのですが、逆に言うと4割は法人の負担になるということです。

○生産性向上設備を取得した場合の固定資産税の軽減措置の導入
 中小企業が、事業所所轄大臣の認定を受けた「経営力向上計画」に記載された一定の機械を取得した場合には、その機械に対する固定資産税が3年間1/2に軽減されます。
 「経営力向上計画」の策定、認定というハードルがありますが、購入予定の機械が高額の場合その節税効果も大きいので検討してみる必要があります。
 例)1億の機械の場合の初年度の節税額概算
  1億×1.4%×1/2=約70万円

○消費税の軽減制度の導入
 消費税の税率が平成29年4月1日からの予定でしたので、これに合わせて軽減税率が導入されることになっていました。具体的には食料品等の税率については8%のまま据え置くというものです。
 ところが、参議院選挙を前にその税率引き上げ日の2年半の延期が決まり、平成31年10月1日からということになりました。したがって、軽減税率の導入もそれに合わせて、2年半延期なります。
 その他、消費税の税率引き上げ関連の改正としては、平成29年4月1日〜33年3月31日までの請求書等の記載方法及び税額の計算方法の特例、平成33年4月1日以降のインボイス制度の導入及び税額の計算方法についてなどがありますが、税率引き上げの延期による影響があり流動的な部分があります。

所得税関連の改正としては
・住宅の多世帯同居改修工事等に係る特例(ローン控除又は税額控除)
・医療費控除の特例としてスイッチOTC薬の所得控除(88,000円が限度)
・空家に係る譲渡所得の特別控除(空家を更地にするなどして譲渡した場合の3000万特別控除)
などがあげられます。