本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

第九軍団のワシ/ローズマリ・サトクリフ

ローマ帝国時代のブリテンを舞台にしたローマン・ブリテン四部作の第一巻。この作家は児童文学という括りらしいが、なかなかどうして本格的なローマ史時代冒険小説である。

時代は2000年ほど前のことであろうか。新任の百人隊長としてブリテンに赴任したマーカス・アクイラは、氏族と呼ばれる現地人の反乱で砦を攻められ、死にものぐるいの戦いで負傷、戦役を離れ、ブリテンに永住する叔父のもとに転がり込む。マーカスの父親はかつてはその名を知られた第九軍団の一員だったが、第九軍団は丸ごと消息不明になっており、さまざまな噂が立つ中、マーカスはその秘密を解き明かしに非占領地帯に潜入するのだった。

ブリテン人は半未開人種として描かれており、今のイギリスからは考えられないが、ローマ時代にはそういうことだったんだろう。緻密な設定と波瀾万丈の物語で、十分に大人の読み物である。剣闘士奴隷であったエスカとの友情、隣人の令嬢コティアとのツンデレなど、マーカスの冒険の他にも読みどころがあり、何とも楽しみなシリーズである。