脇見運転 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2008-08-17

非合理と不条理の狭間で

いつ頃か覚えていないのですが、メールでやり取りするときに文書をExcelで送ってくる人が居ることに気づきました。アクションアイテムの表をExcelでやり取りすることは昔からやっていましたが、単なる文書、それもいくつもの節に分かれるような文書をExcelで送ってくるのです。

はじめは変な人だなと思っていましたが、どうやら組織文化だと気づくまでそれほど時間はかかりませんでした。変な会社があるものです。しかし、よもやそれが多くの会社で行われているとは思っても見ませんでした。

この本の著者の思いというか怒りは前書きのこの一言に凝縮されているといってかまいません

「これがコンピュータプロであることを自認する人間が作ったドキュメントか?」と思えるほど、レベルが低いドキュメントが氾濫しています

「いやぁ、俺はWordプロじゃないから」といっても、それは恥ずかしい文書を作る免罪符にはなりません。工業にとって意思の疎通が不可欠であるなら、その土台である文書作りも不可欠であるはずです。意思の疎通ができない技術者など、技術者ではありません。毎日通勤している引きこもりと同じです。

この本は、きちんとした文書を作るためには最低抑えておこうぜ、というWordのテクニックを集めたものです。やや厚めなので腰が引ける人もいるかもしれませんが、そこはそれ、GUIアプリケーションの解説ですし、かなり本格的な文書を書くための技法も説明してあるので、厚くなるのは仕方がありません。

とはいえ、凡百のWord入門書と違うのは、この本が目指すのは構造的な文書の書き方だということです。レストランのチラシを作るのではありません。技術者が、理路整然としていて手のかからない綺麗な文書を作る系統だった解説が本書です。

著者は、非合理な文書と言うものに対して常に怒りをあらわにすることをためらいません

15年前のワープロならいざ知らず、現代では「選択した領域のフォントを手で変更する」「ルーラーで個別にインデント付けを行う」といった方法でドキュメントを製作するというのは、職務怠慢に等しい行為だといえます(55p)

私見ですが、10ページを超えるドキュメント目次が用意されていないのは、ドキュメント作成者の怠慢です(141p)

このほかにも、12pに掲載されているコラムは、稚拙ドキュメントの作成者に対する罵詈雑言に溢れています。これらは、すべて作者の「道具を正しく使わないからこんなことになるのだ」という、非合理に対する怒りからきています。そして、合理的な文書を作るためにこの本が書かれています。

私も常々同様なことを考えていましたので、この本に書かれている内容には「そうそう」とうなずくことが多くあります。が、一方で、著者の苦しみのようなものも透けて見えます。

一つ挙げるなら、それは「インライン以外の図の埋め込みは、使い物にならない」というWord欠点にあります。実は、図の埋め込み機能は単体ではそれほど深刻に見えません。が、図表番号の自動割り当てと組み合わせると、MS Wordの挙動はきわめて痴的になってしまいます。著者としてはそんなことは百も承知だと思いますが、「Excelで文書を作る奴はクソだ!Wordを使え!」とぶち上げている手前、Wordの悪口は言いにくいのでしょう。当該部分の解説はとても歯切れが悪くなっています。

ともあれ、この本はすべての技術者お勧めします。私は「技術者の多くは非合理を嫌っているはずだ」と信じていますが、もし非合理が嫌いないらば、自分の創るものが非合理であってはいけません。例え文書でも。

ところで、あとがきもなかなかふるっています

著者が社会人となってこの業界に入ったとき、驚かされたことが2つあります。1つは「C言語関数型言語だ」と大まじめに言われたことですが、

あはは。私の古い記憶によれば、そのたわごとを広めたのはIさんではないかと思われます。Unixの紹介があちこちでなされていましたが、「C言語では手続きではなく関数プログラムを組み立てる。関数型言語といえる」といったことが書いてあって、唖然としたのを覚えています。ちょっとおぼろげな記憶なので、確認しないとだめかな。

ところで、Iさんの名前と、C言語でぐぐっていたら、偶然、萩谷昌巳さんが書いた古いテキストがヒットしました。京大サイトでしたが、長く更新されておらず、再度検索して、東大にいらっしゃるとわかりました。萩谷さんのページには、講義で使う資料も非公式ながら公開されています。面白そうなものもあるし、あとで読んでみよ。

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