酔狂人の異説 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-12-05

[][]貯蓄は投資の結果

先日より、amebaブログの「いわゆる日本の借金問題」というエントリのコメント欄でマクロ経済学の「貯蓄=投資」について、議論してきました。

私の主張について整理して、ここで述べたいと思います。

私の主張は、以下の二点です。

  • マクロ経済学の「貯蓄=投資」は妥当である。
  • ただし、因果関係は、マクロ経済学で一般に信じられている「貯蓄→投資」ではなく、「投資→貯蓄」である。

そして、その根拠は、以下の二点です。

  • 消費と投資は、行為として区別する必要がある。
  • ミクロ的には、「貯蓄は所得から消費を差し引いた残り」と定義できる。

消費と投資は違う

投資は貯蓄を減らさない

投資という行為と消費という行為の決定的な違いは、「貯蓄は所得から消費を差し引いた残り」ということにあります。ミクロ的には、消費がその分貯蓄を減らすのに対して、投資は貯蓄を減らしません。

投資と消費を区別しないと会計上、矛盾が生じる

投資と消費の分りやすい例を挙げて、違いを説明します。

  • コンビニが売るために買う、仕入れるのが投資。
  • コンビニから普通に商品を買うのが消費。

コンビニが買うのも消費とすると、買われた商品の価値は一旦、ゼロとなってしまい、コンビニが商品を売ると、価値ゼロだったものを売ったことになり、売り上げが所得になってしまいます。売り上げが全体が所得として課税されるということになります。マクロ的にも、付加価値の計上ではなく、売り上げを多重計算することになってしまいます。

また、価値ゼロとすると、横領等が起きても証拠が残らないということになります。

三者が関わる、ミクロの貯蓄の定義

定義上、ミクロの貯蓄を全て合計することにより、マクロの貯蓄が求まります。しかしながら、もれや多重計算が無いとは言えません。他のマクロの投資や消費の値との関係を確認する必要があります。

ミクロの貯蓄の定義には、下記の三者が関わっています。この三者の合計により、マクロの貯蓄が現れます。

  • 所得を得て、消費し、残りを貯蓄とする者
  • 上記の所得の基となる支出をする者
  • 上記で消費する商品やサービスを提供する者

三者を各々、α、β、γとし、所得をdI、消費をdCとします。

すると、αの所得が消費に対するものであった場合、貯蓄等は各々、以下のようになります。

所得消費投資貯蓄
αdIdC0dI-dC
β0dI0-dI
γdC00dC
合計dI+dCdI+dC00

αの所得が投資に対するものであった場合、貯蓄等は各々、以下のようになります。

所得消費投資貯蓄
αdIdC0dI-dC
β00dI0
γdC00dC
合計dI+dCdCdIdI

投資のみがマクロの貯蓄を増やす

ここまでで、以下のようなことがわかります。

  • 消費は、マクロの貯蓄に無関係。
  • マクロの貯蓄は投資により生じる。

上側の表から、消費のみであれば、マクロの貯蓄は、常にゼロであることがわかります。消費した側の貯蓄がその分減りますが、相手側がその分増えるため、合計はゼロです。ゼロを何万回、何億回足し合わせてもゼロですから、消費は、マクロの貯蓄に直接的には無関係です*1

マクロの貯蓄が投資により生じていることは、下側の表から明らかでしょう。生じる仕組みは、βの行を比較することによりわかります。すなわち、相手側に貯蓄が生じるのは、消費と同じです。しかしながら、投資の場合、消費と異なり、自身の貯蓄は減らず、ゼロのままです。このため、マクロの貯蓄が増えます。

*1:細かいことを言うと、消費が増えると、それに対応して、企業は設備投資等の投資を増やそうとするため、マクロの貯蓄は増える傾向があります。

2017-11-23

[][]財政赤字は大きいほど良い

先日、「超低金利を支える財政赤字」というエントリを書きましたが、あれで挙げた式からは、他にも、以下のような意外な結論が導き出されます。

  • 財政赤字は大きいほど良い。
  • 政府債務は返済の必要が無い。少なくとも、通常の債務と同様に扱うことはできない。

財政赤字は大きいほど良い

                  Y = 消費(C)+税(T)+貯蓄(S)
                  Y = 消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+(輸出(EX)-輸入(IM))

先日挙げた式は、上記のGDI(国内総所得)、GDE(国内総支出)の式から以下のSに関する式を導き出したものです。

              貯蓄(S) = 投資(I)+(政府支出(G)-税(T)) + (輸出(EX)-輸入(IM))

大まかには、G-Tは財政赤字、EX-IMは経常黒字ですから、上記の式は以下のようになります。

              貯蓄(S) = 投資(I)+財政赤字+経常黒字

この式からは、財政赤字が増えるとSが、GDP(国内総生産)が、増えることになります。厳密に言うなら、Tを減らして財政赤字が増えるとSが、Gを増やして財政赤字が増えるとGDPが、増えることになります。

GDPだけがマクロ経済の指標ではありませんが、GDPの点からは、財政赤字が大きいほど、マクロ経済に良いということになります。

また、財政赤字が大きいほど、少ない税金で効率的に行政サービスを提供している。行政サービスの生産性が高いということになります。

このように考えていくと、財政黒字など論外と言っていいでしょう。「財政黒字は危機の予兆?」というエントリがありましたが、財政黒字になると経済がおかしくなるのは、当然という気がしてきます。

政府債務は返済の必要が無い

政府債務は、借り換えを繰り返すことにより、実質的に返済の必要がありません。

上記の式の右辺に、財政赤字が、政府債務の増加が出てくるのは、政府債務が実質的に返済の必要が無いことを暗示していると言っていいでしょう。投資(I)は、設備等の購入であり、返済の必要はありません。経常黒字は、対外債権の増加であり、貸している側なので返済の必要はありません。このように、右辺の残りの二つは、文句無く返済不要です。

上記の式の右辺には、貯蓄という言葉からすぐイメージする、預貯金があらわれません。これは、通常の預貯金の増減が、マクロ的には貯蓄の増減とならないためです。預貯金は、それの返済義務を負う銀行にとっては、債務です。負の貯蓄であり、マクロ的には、預貯金と相殺し合うため、上記の式にはあらわれません。上記の式に財政赤字があらわれる以上、政府債務を通常の債務と同様に扱えません。

2017-11-19

[][]低所得者には給付金を

低所得者に減税した方が経済効果は高い」というエントリがありましたが、税に限らずに経済全体を見るならば、給付金等の方がさらに経済効果は高いでしょう。

低所得者は税金も少なかったり、払っていなかったりするため、減税の恩恵をわずかしか受けられません。低所得者に対する減税の経済効果は小さいです。

2017-10-31

[][]超低金利を支える財政赤字

予想に反して続く財政赤字と超低金利

財政赤字と低金利の両立は続けられないと言われ続けて相当経ちます。しかしながら、むしろ、金利は低下する一方です。

そこでタダだったので読んでみたのが、竹中平蔵氏、池田信夫氏、鈴木亘氏、土居丈朗氏による「日本経済「余命3年」」という書籍だ。この余命3年というのは『あと三年で日本経済が絶命するという意味ではなく、いまのように奇妙に安定した状態はあと三年くらいしか続か』ないということだそうだ。財政問題について書かれた書籍ということで、書かれたのは7年前民主党政権時代である。言うまでもなく、完全に狼少年だ。

「タダだったので | 秋山のブログ」より

超低金利の一因は財政赤字

このように超低金利が続く一因は、財政赤字にあります。財政赤字なのに超低金利なのではなく、財政赤字だから超低金利なのです。

財政赤字が金融資産を増やす」と看破されています。

財政赤字の増加は国内総所得(GDI)の増加
                  Y = 消費(C)+税(T)+貯蓄(S)
                  Y = 消費(C)+投資(I)+政府支出(G)+(輸出(EX)-輸入(IM))

上記のGDI、GDE(国内総支出)の式から以下のような手順で、Sに関する式が導き出せます。

  1. GDIの右辺(C+T+S)をGDEの左辺に代入。
  2. 両辺のCを相殺。
  3. 左辺のTを右辺に移項。
              貯蓄(S) = 投資(I)+(政府支出(G)-税(T)) + (輸出(EX)-輸入(IM))

上記の式から、Iを左辺に移項すると、「サルでもわかるISバランス論のおかしさ」でも取り上げたISバランス式になります。

ここのG-Tは、財政赤字です。「サルでもわかるISバランス論のおかしさ」で述べたように、S-IはEX-IMにより決まる、Sは式の中で最後に決まる、とすると、財政赤字の増加は、Sの増加を、GDIの増加をもたらします。

これが、民間金融資産の増加を支え、超低金利を支えています。

もちろん、GDEが大きく増加するほどにGが増加し、財政赤字が増加すれば、インフレとなり、金利は上昇するでしょう。しかしながら、現状の財政赤字は、CやIの減少を埋め合わせているにすぎません。GDEが現状レベルで続く限り、財政赤字と超低金利は続くでしょう。

2017-10-24

[][]サルでもわかるISバランス論のおかしさ

因果関係が逆立ちしているISバランス論

経済学の学説には、あべこべと思えるものが少なくありませんが、いわゆるISバランス論(貯蓄投資バランス論)もその一つです。

GDP三面等価から、以下のISバランス式が導き出されます。

              貯蓄(S)-投資(I) = (政府支出(G)-税(T)) + (輸出(EX)-輸入(IM))

この式自体は、問題ありません。問題は、多くの経済学者が左辺のS-Iが原因で右辺の EX-IMが結果であると主張していることです。どう考えても逆です。 右辺のEX-IMが原因で左辺のS-Iが結果です。

なぜならば、 S-IによりEX-IMが決まるというのは、矛盾しているからです。

相手側のISバランス式を無視するISバランス論

相手側にもISバランス式はある

輸出や輸入には相手があります。相手側から見ると輸出が輸入で輸入が輸出です。ISバランス論は、相手側にもISバランス式があるということに気付かず、都合のいい時だけISバランス式を取り上げて、都合の悪い時はISバランス式を無視するものです。

わかりやすいように、A国とB国の二国だけからなるモデルで考えてみましょう。A国とB国の間のEX-IMは、A国のS-Iにより決まるのでしょうか?B国のS-Iにより決まるのでしょうか?A国のS-Iにより決まるとすると、B国のEX-IMはB国のS-Iによっては決まらないことになり、B国のS-Iにより決まるとすると、A国のEX-IMはA国のS-Iによっては決まらないことになります。

ある国のEX-IMはその国のS-Iにより決まる。相手側の経済条件等は関係無い。という主張は、相手側から見ると、その国のEX-IMはその国以外の国々のS-Iの合計により決まる。その国のS-Iを含め、その国の経済条件等は関係無い。という主張と同じ論理です。

つまり、日本のEX-IMが日本のS-Iにより決まる、というのは、日本のEX-IMが日本以外の国のS-Iの合計により決まる、というのと同じです。

他にもいろいろあるISバランス論のおかしさ

ISバランス論がおかしいことは、他の観点からも指摘できます。

Iは政府支出や輸出、輸入の影響を受ける

Iは、政府支出や輸出、輸入に影響を受けます。Iには、意図せざる在庫投資も含むため、政府支出や輸出、輸入によって在庫が変動すると、値が変わります。

Sは最後に値が決まる

また、Sを直接的に増減させることはできません。Sは、ISバランス式の他の変数の値に依存しています。はっきり言って、ISバランス式において論理的に最後に値が決まるのがSです。