人間型ロボット



「よう。たまには日本酒もいいだろ」
「いいけど銘柄はよく分からんぞ」



  ドンと酒を置かれる。高い酒なんだろうか?



「黙って飲みゃいいんだよ。勝手にぐから」
「じゃあグラスはアレだな」
「置けないやつな」
「下の『輪っか』無しだろ」
「当然」





「ところでさ、お前 機械科だっけ?」
「そうだけど、何で?」
「最近、ロボットの開発がすごいんだろ」
「特に日本はな」
「何でだ?」
「欧米はロボットが人間に危害を加える的な考え方があるらしい」
「で、ロボット工学三原則とかあるのか…」
アイザックアシモフだな」



  グラスになみなみと注がれた酒を少し飲む



「日本人はあんまりそんなこと考えないな」
「『アトム』や『ドラえもん』が人間に危害加えたら困るよ」
「だから人間型ロボットの開発に抵抗無いんだな」
「たぶん…。ドラえもんはネコ型ロボットだけどね」



  テーブルにグラスを置きたくても置けない
  注がれるままに飲まなければならない



「『楠田枝里子』もロボットだよな?」
「Kusuda-E型な。当時の技術力じゃあの大きさはしょうがない」
「2m超えてるだろ」
「軽くな。キンキンがかわいそうだった」
「あれは?Totto-KY型」
「ありゃ部屋に来る人の情報収集の為のロボットだからな」
「メモリの小型化に失敗してあの頭の大きさか…」
「問題はあれだよ」



  グラスを持ちながら相手の酒も注ぐ



悪攻akko-W型か」
「戦闘型ロボットだからパワー重視で作っちゃったみたいだな」
「で、3mを超える大型ロボットか…」
「強度を計算するとしょうがないけど それから反省した訳だ」
「どういうふうに?」
「デカすぎた。攻撃力は武器を持って補うと…」



  日本酒が強く感じるのは飲みやすいからだろうか



「『技術の進歩は戦争から』。お前の持論だな」
「違うか?」
「その通りだと思うけどこの場合当てはまらないんじゃないか?」
「ここままロボットが人間に近づいたらどうなるか分かるか?」
「危険な仕事とかをロボットがやる」



  グラスを置くために『輪っか』を取りに行きたいけど
  そうはさせじとまた注がれる



「危険な仕事の一番は戦場だろうよ」
「そうか?」
「特に市街地戦なんかは特に有効だよ」
「どうして」
「人間の作った街は人間サイズのロボットにも活動しやすいだろ」
「そういや そうだな」



  息付く暇もなく注がれた酒はみるみる減っていく



「そこで使う武器は人間の使う武器をそのまま流用できる
 ロボット用の武器を開発する必要はない」

「確かにそうだ。敵の武器を奪ってもいいしな」
「ロボットが壊れても…」
「また作る」
「そーゆーこと」



  一升を空けるのもあまり時間は必要としないようだ



「そうすれば日本も大手を振って武器輸出が出来るな」
「名目は『介護ロボット』でもいい訳だからな」
「使い方はアチラさん次第ってことだな」
「変な使い方しても『遺憾の意』でも表明すりゃいい」



  置けないグラスを持つのも怪しくなってきた



「でも あんまり血なまぐさいことに使って欲しくないな」
「出来ればデザインだけでも愛らしいのがいいよな」
「となるとやっぱり」
Gakkyガッキー-UEユーイー型でしょ」



  酔っぱらいの夜は更ける