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2013-11-25

新刊「Ms cried」のご案内

f:id:suiyouu-bunko:20131125013450j:image:w360:left 北アイルランド、デリー州の農家に生まれた詩人シェイマス・ヒーニーはその足の下、乾かして冬の燃料にする沼地(ボグ)の湿った泥炭を切り出したり、ジャガイモを掘ったり、水脈を探したり、地面を掘り返すようにしてたくさんの詩を書いた。シャベルのようにペンを使って古層からの言葉を掘り出してきて現在と対峙させた。
 「Ms cried ミズクライド」という本が出来上がりましたと、著者の鈴木博美さん、山本一語さんが持ってきてくださり、そのきれいな装丁の本の頁をめくっていると「ミズクライド」というのは「水食らい土」の意であると書いてある。『武蔵野台地には、厚い火山灰の関東ローム層の下に礫層があり、雨水が全てそこに吸い込まれてしまうという伝承の土地がある』と説明されていて、それで上記のヒーニーの詩を思い出した。

「道路清掃車は午前四時。アスピリンを溶かした枕元に静かに洗剤入りの水を撒いていくのだ。さっぱりとしたアスファルトはミズクライドをしらない。丘陵に城をかまえる眠りの女王。かすかな黎明のアルペジオごときに心をうたれることはない。道路清掃車よ、ミズクライドに伝えておくれ。・・・・・」

 もちろん武蔵野台地は現在アスファルトで覆われていてシャベルなんかでは簡単に掘り返すことができない都会が地面の上に建っているので、ヒーニーとはまた違うやり方で詩を作られてきたのだと思う。お二人とも詩誌「gui」の同人であり、「gui」を主宰されている奥成達さんは、ぼくにとってはあの「冷やし中華同盟」のフィクサーとして強く心に残っているけれど、彼は北園克衛を継ぐ詩人でもあるのだそうだ(ちなみに「gui」は次号でなんと通巻100号!)。構成主義的なデザインと都会詩を融合させた「VOU」の系譜を継ぐ「gui」で長く表現をされてきているお二人のシャベルにはエンジンくらいはもうとっくについているのだ、と思いました。

 ぼくは古本屋ですから、そのほんの一面ですが、お二人がどのように本を選ばれるのかを知っています。こんなことは決してお二人は口にしないこと、言えばぼくが勝手に本にかこつけていることですが、「詩」を、「写真」を、「デザイン」をなめるんじゃないという意思を強く思いました。
詩と写真、そのどちらかが添え物でいるのではなく、せめぎ合っているし、またお互いに溶け出していく感覚を思いました。いまどきの「コラボ」なんという言葉では言い表せない表現です。またこれまでお二人は詩作とは別に本の装丁、デザインのお仕事をされてきているので、こと「造本」については、造詣のないぼくには「きれい」という感想しか出てきませんが、しかしこれまで曲がりなりにも幾多の本を見てきたんだからぼくだって少しは自信を持って言えるというものです。ほんとです。
 詩集を出すという困難を想像しながら本屋に出かけて探してみてほしいと思います。ヒントを言えばもちろんここ水曜文庫、戸田書店城北店、駅前の戸田書店静岡本店には置いてあります。

Ms cried(ミズクライド)」
鈴木博美(詩)山本一語(写真)
如月出版 ISBN9784901850421 2000円+税

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