ビッグマネー! 〜浮世の沙汰は株しだい〜

ビッグマネー~浮世の沙汰は株しだい~ DVD-BOX
そして、見終わりました。1日で1クールのドラマをすべて見るというのは脳に負担ががありすぎです。でも、内容がよくわかるので物語を理解するのであれば、非常によい方法。死にそうになるけど。いや、ホント。
このドラマはリアルタイムでちょくちょく見ていたのですが、途中で見るのを辞めてしまったのです。それは、物語の要である相続保険の被害者であるお婆ちゃんが主人公に騙されたと思われて焼身自殺を図ってしまうという、あまりにも救いようのないシーンにどうしても納得がいかなかったからです。「ちきしょー」とか思いながら、速効で原作を買いに行って少し落ち着きました。主人公に騙されたと思って自殺をしてしまったら、たとえ事実ではないとしてもそのお婆ちゃんの中では事実であって、主人公を恨みながら死んで行った事には変わりないのです。しくしく。
いやぁ、それにしても最終話のカタルシスはすごい。こんなにまで視聴者をムカつかせるなんて、よくまぁ、やったものです。6話からなんて、殆どイジメに等しいような内容なのですが、貯めに貯めたそのフラストレーションを爆発させることのみに力を注いだ最終話のすばらしさは筆舌に尽くしがたいものがあります。原田泰造演じる山崎の見事なまでの悪役っぷりというか、ドライっぷり、常識人っぽさを醸し出した異常者、嘘をついたり騙すことを歯牙にもかけないその役は、下手に強面がやるよりも恐ろしいです。うーん、スバラシイ。
原作は2度3度読み直していたので、ドラマとの違いはよく見てとることができました。序盤で速攻で消えた充ちるが最後の最後まで、白戸と煮え切らない関係だったというのは、元々女っ気が殆どなくて男と男と金くらいしかない小説だったのでまぁしょうがないと言えますが、他のドラマと違ってダラダラと腹の探り合いと勘違いの連続みたいな三角関係を永遠やられるよりは、マッキーと白戸と充ちるの全員が全員空振りしているような三角関係はオモシロイ。1〜5話は殆どドラマオリジナル、6話〜12話は小説での秋のディールが基本となっているのですが、夏のディールの背骨は殆どが秋のディールそのままだったのが意外でした。まさか、極東代表のケント・フクハラまで登場するとは思わなかった。ただ、まつば銀行のやられっぷりは小説よりもコテンパンでしたので、逆に可哀想になってしまいました。「まつば銀行を安く買いませんか?」というはずが「まつば銀行をつぶしませんか?」という風になっているのだから。まさか、株価が1円にまで下がるとは思いませんでした。ただ、小説よりもわかりやすくなっていて、何度か読まないと理解できなかった自分としてはうれしいところです。総額保険被害者の救済をケント・フクハラにお願いするシーンなんかも、「総額保険(変額保険)の被害者たちはどうなったんだ?」と思うような小説に比べて納得することができました。ラストの白戸と小塚老人の別れ方は全く持って違うのですが、そのどちらも納得できる終わり方です。小説版のラストは小塚老人の過去があってこそなので、その説明がされてないドラマではこの終わり方の方が納得しやすいのかもしれません。一歩間違うと、小塚老人が悪になってしまう。
こうなると、もう一度小説を読み直してしまいたくなるなぁ。小説は2度3度読むと内容がわかってくるタイプです。正直、最初に読んだときは「こんなもんかー」という気持ちだったので。あと、ドラマにあったようなカタルシスを期待すると拍子抜けます。そして、ドラマのような笑い。それらは、石田衣良さんの小説には期待してはいけないところです。ビッグマネーは宮藤官九郎が作り出した素晴らしいエンターテイメントドラマ…そう、ドラマなのです。
あー!おもしろかった!*1

*1:にしても、こういう長文を書くと自分の文章能力のなさというか、組み立て能力のなさというかその辺を呪いたくなりますな

波のうえの魔術師

波のうえの魔術師 (文春文庫)
オススメです。株なんてしらなくても、経済なんてしらなくても楽しめる作品だと思います。でも、しっているほうがもっと楽しめる作品です。最近すこし株をかじってみた自分は、その中にかかれていることへの理解がちょっと高まりました。

id:fujikoさんの「波のうえの魔術師」の感想。*1小塚老人と白戸の関係…そうかあれは萌えどころだったのか!ちきしょう、楽しむべきところを一つ失っていたのかワタシは!もう一度読もう。うん。
この小説の中で、白戸は小塚老人に「まだ金を得てない金持ち」という素晴らしい表現をされるわけですが、こう考えるとワタシは「まだ金を失ってない貧乏人」とか「まだ職を失ってないホームレス」とかそういう言葉が浮かんできてシクシクシク…。

*1:「の」ばかりになってしまう