ワンボタンマウスの誕生日は 1980 年 8 月 13 日

ついに Apple から純正の(基本はワンボタンながらも、実質は)多ボタンマウスである Mighty Mouse(マイティ・マウス)が登場し、その25年にちょっと足りないチュウ生(?)の幕を閉じたワンボタンマウスを悼んで…。というのは大ウソで、前のエントリーにからめて、Apple Smalltalk には XEROXSmalltalk-80 にはなかったキーショートカットがどの程度の実装されていたのかを調べていたら、偶然こんなページに行き着くことができましたのでご紹介します。


ウインドウのサイズボックス、タイトルバー、スクロールバーができあがってゆく過程。クリップボード誕生の経緯、ワンボタンマウス誕生などについて書かれています。以前ふれた、ビル・アトキンソンの日本での講演の資料などと併せて読むと具体的なイメージが掴みやすいでしょう。


欲を言えば、実際に Smalltalk-76/-80 スタイルのルック&フィールに接したしたことがあるとなお理解が早く、かつミスリードされにくいかな…とも。 タイトルバーが Mac っぽいのを無視すれば、Squeak の open... → mvc project から起動できるレガシーな MVC 環境で、ほぼ当時の状況を再現し体験できますので、興味のあるかたはぜひお試しあれ、かし。


こうした Smalltalk-76/-80 スタイルの GUI が形作られた経緯については、有名な '81 年の BYTE 誌、俗に言う Smalltalk 特集号にラリー・テスラーが寄稿した文章が比較的くわしいです。冒頭部分に目を通せばすぐ分かると思いますが、Mac にも受け継がれたモードレスの精神は、ここから始まっているのですね。(じつは Mac のオリジナルだとの誤解も多い)コピー/カット&ペースト操作が Smalltalk システム上で試行錯誤された過程にも触れられています。


コピー/カット&ペースト操作といえば、「Origins of the Apple Human Interface」では、Lisa(や、その後継者である Mac )が Smalltalk システムに倣った方式に落ち着くまでのやりとりが、生々しく語られていて面白いです。じつは信じられないことに、別の選択肢もあったのですね。 結局さいごは、彼ら Lisa 開発チームが重視していた(そして Smalltalk システムではあまり行なわれなかった/行なうことが許されなかった)テストユーザーによる評価が決め手になったというくだりは、個人的にはとても興味深いです(反語的に)。まあ、とにかく Mac の Edit メニューが Move、Copy and Delete、Transpose とかにならずにすんだのは幸いでした(^_^;)。


そうそう、この資料で謎もひとつ解けました。 満を持して(?)公開されたごく初期の Lisa のプロトタイプが Smalltalk システムそっくりだったのに(ビル・アトキンソンには大変申し訳ないとは思いつつ…)つい笑みがこぼれてしまったことは前にも書きましたが、まだプルダウンメニューが発明されていないこのとき、ポップアップメニューは(ワンボタンのマウスで)どのように出していたのだろう…という点について新たな疑問が生じたわけです。これは、初期の Lisa プロトタイプは2ボタンマウスだった…ということで決着がつきました。つまるところ、ウインドウシェード(ウインドウタイトルのみ表示)同様、コンテキストメニュー(右クリックメニュー)も、いったん廃止の憂き目にあってからの復活だったことになるわけですね。